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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第4章 "炎"との邂逅

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第38話 帰郷



「ルインっ!」


 母さんが涙を浮かべながら、俺を抱きしめる。


 まるで長い長い旅を終えて帰ってきた、魔王討伐後の勇者みたいな雰囲気を醸し出しているが、まだこの村を出ていってから大した時間は経過していない。

 ほら、後ろで父さんと兄さんが呆れている。


「とにかくただいま」


 この一幕からも分かるように、現在地はすでにシーズ村である。到着早々に温かい歓迎を受けてしまって、なんだかこそばゆい。


 というか、都会デビューに失敗して即出戻りする10代の若者みたいで、とても恥ずかしい。……10代ではあるけれども。



 さて、ここに至るまでの過程はダイジェストでお送りしよう。


 ──以下、回想。


 領主館で依頼を受けた翌日、俺たちは必要物資などの買い出しを行った。


 さらにその翌日にはヴォルクスを出発。今回は冒険者ダッシュを使用せずに徒歩で来たよ。個人的にはガルフのダッシュが見たかったんだけど……。荷物が多かったからね、仕方ないね。


 およそ2日ほどかけて俺たちはシーズ村に到着した。道中は何も起こらなかったので、平和なものだったよ。

 そして村の門をくぐったところで、村の衆に発見された俺が彼らにわちゃわちゃされている内に、騒ぎを聞きつけたマイファミリーがやってきて今に至る。


 ──回想、終わり。



「それでルイン、どうしたの? 寂しくなっちゃったのかしら?」

「言うほど時間経ってないでしょうが。冒険者の依頼だよ。森に用があってね。しばらくこの村に滞在する事になるから、みんなよろしくね」


 『森に用がある』の部分で、村人たちが不安な表情を見せた。……あ、しまった。またスノーボアみたいな事件かと思われたな、こりゃ。


 咄嗟に弁明しようとするが、俺より先に頼れる漢アルが声を張り上げる。


「悪い! 不安にさせたみたいだな! 今回は単なる森の調査だ。魔物は一切関係ないから安心してくれ」


『アルさん!』


 アルの言葉で、露骨にホッとする村の衆。

 村人はあの時のことを鮮明に覚えているからね。"フェザーテイル"はこの村じゃあ、そりゃもう大人気よ。


「じゃあ、ひとまず宿に荷物を置いてくるよ」

「分かったわ。また後でゆっくり話しましょうね」

「ルイン、色々話聞かせてね」

「いつでも訪ねて来いよ」


 母、兄、父がそれぞれ一言ずつ残して戻っていくと、村人たちも次第に散っていった。


「ルインの子供らしいところを、初めて見た気がするわ」

「そうかな?」


 ニヤニヤしながらカトレアが言ってくる。

 君と行動を共にする時って、大体状況が殺伐としてるからね。ほら、昇級試験だったり討伐依頼だったり。だからじゃない?


「おい、いつまでもここにいてもしゃあないだろ。早く行こうぜ」

「まずはお昼寝ね!」

「ほっほっほ」


 "フェザーテイル"に促されて、ようやく移動を開始した。


「……良い村だな」


 1歩踏み出した時にビルが言ったその言葉が、なぜかとても印象に残った。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 兎にも角にも、宿を取った俺たちは2人部屋を3つ確保した。というか村唯一の宿屋であるここには、それだけしか部屋はない。


 宿の需要がないし、客がいない時はそもそも営業自体していないのだ。いつでも泊まれるように掃除だけはしているが。


 部屋割りは俺とビル。アルとガルフ、テレーゼとカトレアに決まった。


「何気に宿の部屋の中って、見るの初めてなんだよなぁ」

「村の住人ならそんなものじゃないか?」


 部屋に入って、さっそくベッドに腰掛けた俺の呟きをビルが拾う。


「ま、そりゃそうだ。家があるのに宿に泊まるとか意味分からんし」

「そういう事だな」


 さて、この後は。


「今日はもう自由時間って事になったし、俺は実家に顔出してくるけどビルはどうする? 一緒にくるか?」

「せっかくの家族水いらずだ。野暮な真似はせんよ」


 気を遣われてしまった。優しい熊さんである。


「別にいいのに」

「いいから早く行ってやれ。きっと待ってるだろう」

「そうするよ。でも、何かあったらすぐに呼んでね」

「ああ」


 ベッドから立ち上がって部屋を後にする。じゃ、お言葉に甘えて家族団欒タイムといきますかね。


 こうして意気揚々と宿を出たのだが、そこで俺が目にしたのは所在なさげに佇むカトレアの姿であった。


「カトレア、どしたの?」

「テレーゼが秒で寝ちゃってね。やることもないから、ボーッと雲が流れるのを見ていたのよ」


 その時俺は、日本家屋の縁側でお茶を飲みながら雲を眺める、カトレアおばあちゃんの姿を幻視した。……したら悪鬼羅刹のような表情で、カトレアが俺を見ている事に気づいたので、すぐにそれを打ち消した。なんで分かるんだよ……。


「じゃあカトレアも来る? 今から実家に帰るけど」

「お邪魔じゃないかしら?」

「ビルは遠慮したけど、ぶっちゃけ賑やかな方が俺は好き」


 そう、俺はワイワイガヤガヤしたいのだ。


「それならお言葉に甘えるわね」

「バッチコイ」


 話がまとまったので、2人並んで実家へ顔を出す事に。狭い村なので、あっという間に家が見えてきた。


「3人とも、もう揃ってるかな?」

「お、お邪魔します」


「あら? お客様も連れてきたのね〜」

「さっきルインと一緒にいた子だよね? よろしくね」

「さぁ、上がってくれ」


 家に帰ると、そこには変わらぬ家族の姿が。夕食の準備も早々に終えて、俺が来るのを待っていてくれたようだ。


(あぁ、この感じ)


 なぜだか分からないけど、不覚にもちょっとだけ泣いてしまいそうになった。


 自分で「大した時間は経っていない」なんて言ったのに。……それでも、やはり『家』というのは特別なものらしい。


「「「ルイン、おかえりなさい」」」


 父、マッシュ。

 母、セラ。

 兄、ウィル。


 ほんの少しだけ時間の流れを感じさせる3人の笑顔と、12年間毎日嗅いでいた母親の手料理の匂いに包まれて、胸に込み上げるものを今一度大事に噛み締める。


(頑張ろう。絶対にこの日常が失われないように)


 決意を新たに、今は笑顔でこう返そう。


「ただいま!」


 こうして俺は、初めての"帰郷"を果たしたのだった。


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