第37話 領主からの指名依頼
※本日2話目の更新です。まだ読まれていない方は、先に第36話をご覧ください。
「帝国と繋がる抜け道の捜索、ですか?」
領主館の応接室にて。
再会の挨拶もそこそこに、領主であるガーランド伯爵から告げられたのは、件の抜け道捜索の依頼であった。
この場には前回と同じく、伯爵、グレース、"フェザーテイル"、俺というメンバーが揃っている。セレナ様はいない。彼女には退屈な話になるだろうからね。
例によって、伯爵と対面で話すのはアルだ。
「うん。国の上層部はまだ日和見してる感じでね。実際に抜け道が発見されないと、本腰を入れた対策は打たないだろう。まずは私たちで捜索しろ、とのことだ」
やっぱ上の人間ってそうだよね。安全な王都に籠っているから、基本的に危機感が足りてない。
「え、それじゃあ王都に行った意味って……」
アルが遠回しに「何しに行ったんすか」って聞く。
「あぁ、『私が直接報告した』という事実が欲しかったんだよ。あとは自分の派閥への根回しだね。慌ただしく動き回る私の姿は、様々な場所で目撃されているだろう。これで後からウダウダ言われる心配はない」
なるほど。足を引っ張りたがる貴族達への、牽制の意味もあったのか。
「とはいえ、私の領地の問題であることも事実だ。東の公爵も、事が大きくなるまでは静観の構えだろう」
王国北部のおよそ中央辺りを領地に持つダグラム伯爵だが、東のお隣には王国でも屈指の軍事力を持つ『ランドゥ公爵』の領地がある。
かの家の役割は、隣国エルディライト法国の監視と有事の際の戦力派遣なので、現時点では動かないとのことだ。
ガーランド伯爵が話を続ける。
「抜け道は森を抜けた山脈の麓にあるだろう。帝国の人間がこの街まで来れているという事は、少なくとも森の中の移動ルートは確保できているはずだ」
「その痕跡を発見し、逆に辿れば」
続きを引き継いだアルの言に、伯爵は満足そうに頷く。
「抜け道は見つかるだろう。しかし、軍は森の中の行動にはとことん不向きでね」
「そこで俺たちの出番というわけですね」
「そういうことだ。森の中は冒険者のフィールドだからね。指名依頼という形を取らせてもらうよ。頼めるかい?」
「"フェザーテイル"は受けさせてもらいます」
アルがそこでチラリと俺を見やった。それに気づいた伯爵が言葉を重ねる。
「ルイン君もパーティーを組んだのだったね。君も良ければパーティーで参加してほしい。人手は多い方がいいからね」
うーん、俺は参加してもいいけど、勝手に決める訳にはいかないな。
「メンバーと話し合って決めたいのですが、構いませんか?」
「もちろんだとも。門番には言っておくから、結論が出たらいつでも伝えにきてくれ」
「分かりました。ありがとうございます」
そういう訳で、詳細を話し合う"フェザーテイル"を残し、俺だけ一度退散してメンバーの意見を聞いてくることに。
カトレアに今日のことは言ってあるから、ギルドの酒場で待機してるはず。
廊下に出て歩き始めると、セレナ様にバッタリ遭遇した。もしかして会議が終わるのを待ってたのかな。
俺を発見すると『ぱぁっ』と、花が咲いたかのような笑顔を浮かべ、タタタッと駆け寄ってくる。
「ルイン様! もうお話は終わったんですか?」
「いえ、一度席を外しただけですよ。用を済ませてまた戻ってきますね」
そう言うと、セレナ様はあからさまに残念そうな顔になってしまった。
「そうですか……。ゆっくりお話しができると思ったのですが。邪魔するわけにもいきませんね。今度お時間ができたら私とお茶会してくださいね」
「えぇ。お約束します」
「必ずですよ?」
約束を交わすと、彼女は名残惜しそうな顔で、何度もこちらを振り返りながら去っていった。
……謎の罪悪感に襲われる俺だが、今はメンバーに会わなければ。急ごう。
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「ということなんだけど」
ギルドの酒場で待つ"アルゴスアイズ"のメンバーと合流した俺は、かいつまんで事情を説明した。
返ってきた答えは。
「やっぱりあなた、普段通りの日常は送れないのね。……私は参加するわ」
憐れみの一瞥をくれてから、カトレアは参加を表明。もはや俺にとっての『普段通り』ってこういうのになってるんじゃ……。いや、諦めるのはまだ早い。
「オレも参加でいいぞ」
ビルも参加。
「うー、お母ちゃんが久しぶりにお家に帰ってくるから、長く離れるかもしれない依頼はダメだぞー! ボクはお家にいるぞ!」
エルルは不参加。……というかエルルの母ちゃんって、ゴルドフの嫁だろ? 何それ、俺も超会いたいんだけど! 戻ってきたら絶対鍛冶屋に行こう。
「おっけー。結成した時にも言ったけど、参加は自由だからね。不参加だからって気にするなよ?」
「おー! ありがとう!」
話はあっさりとまとまったので、領主館にとんぼ返りする事に。
俺1人でパパッと戻り、門番さんに用件を伝えると、すぐに先ほどの部屋に通された。
先ほどと変わらぬメンツに、参加の意思と参加メンバーを伝え、契約を交わす。ギルドへの手続きは伯爵の方でしてくれるらしい。手間が省けて助かるね。
「では準備が出来次第、依頼に取り掛かって欲しい。これはダグラム領の、いや、王国の未来を左右する案件と言っても過言ではないだろう。心して臨んでくれ」
最後に伯爵から激励のお言葉を頂戴し、領主館を後にする。セレナ様がわざわざ玄関まで来て、手を振ってお見送りしてくれたのが印象的だった。
……なるべく早く、お茶会の約束を果たさないとな。
「ルイン、お前のパーティーメンバーはまだギルドにいるんだろ? そいつら拾って『渡り鳥の止まり木』に行くぞ」
「他の人に依頼の内容を聞かれたくないからね!」
アルの発言をテレーゼが補足する。
「そうだね。了解」
※ ※ ※
場所は変わって、『渡り鳥の止まり木』の俺の部屋。
あれやこれやと順調にミーティングは進んでいくが、ついに俺は耐えきれずに言ってしまう。
「狭くない?」
「食堂にはまだ人がいる。我慢しろ」
アルに窘められてしまったが、狭いものは狭い。
ちなみに、ビルは場所を取りすぎるので、彼には後から説明する事にして帰宅してもらった。
せっかく待ってもらってたのにごめんよ。熊ってハチミツが好きなんだよね? 今度買ってあげるから許しておくれ。
「話を戻すぞい。調査をするにあたって、森のそばで拠点とするのにちょうど良い場所が1ヶ所あってのぅ」
ガルフがさっそく拠点となる場所の候補地を見繕ってくれたようだ。さすガル。
「さすがお祖父ちゃんね。それで、どこかしら?」
カトレアからの質問に、お祖父ちゃんは俺をチラ見してからその名を告げた。
「シーズ村じゃ」
思ったよりも、ずっと早い里帰りになりそうだ。
※ルインの熊についての知識は、ホームランダービーをやってた黄色い熊さんに関するものしかありません。なので、めっちゃ偏ってます。
次回、第38話 帰郷




