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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第4章 "炎"との邂逅

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第36話 スタンピードの気配は仄かに


 ヴォルクスへと帰還した俺たちは、その足でギルドへと向かった。


「討伐証明部位のフォレストコングの尻尾3本。たしかに確認しました。これにて依頼は完了となります」


 受付カウンターにて、アンナさんに依頼完了を告げられる。報酬は等分に割ったものを、それぞれのギルドカードへ振り込んでもらうようにお願いした。


 そして、


「アンナさん、ちょっと気になったことがあるんだけど……」

「はい、なんでしょうか?」


 この前のゴブリン依頼の件も含めて、東の森の様子が少しおかしい事を伝える。加えて、一応ギルド長ルーカスに報告しておいた方がいいという事も。


 少し考える素振りを見せた彼女は、


 「少々お待ちいただけますか」


 と言って、少し早足で2階へと上がって行った。


 ……このパターンもよく知ってますね。ギルド長室で直接説明することになるやつでしょ。流れで妙なことを頼まれなきゃいいなぁ。


 ややあって、アンナさんが戻ってくるなりこう言った。


「みなさん、お待たせして申し訳ありません。ギルド長が直接お話を伺いたいとのことです」


 ほらね。



     ※  ※  ※



「なるほど。話は分かった。よく報告してくれたな」


 部屋に入るなり中央のソファへ着席を促され、"アルゴスアイズ"を代表して俺が事情を説明した。……今までこういうのは全部アルがやってたから、ちょっと不思議な感じだったよ。


 そして俺は、ついにこの話の核心を突くワードを口にする。


「あると思う? スタンピード」


 そう、最初に違和感がうんたら言い始めた時点で、異世界転生ものに詳しい人なら絶対思ったはず。『どうせこれ、スタンピードの兆候なんだろ?』って。


 眉間に皺を寄せるギルド長は、少し考えた後に口を開いた。


「俺の勘は『ある』と言っている。だが、多分すぐじゃないな。そこまで大きな兆候はまだ出てない」

「というと?」

「せいぜいが森の奥に生息する魔物が、外側の浅部に少し押し出されている程度だ。スタンピードが近い場合は、森の外まで弾き出される魔物の数が明らかに増える」

「なるほど」


 じゃあ、別に俺たちが報告しなくても、いずれは分かったってことね。

 ……よかった。気づかないうちに、街がピンチに陥ってるとかにはならなそうで。


「とはいえ、早期の発見は調査に割ける時間が大幅に増えるんだ。これは大きいぞ。お手柄だ」

「素直に受け取っておくよ」

「そうしろ。予想されるスタンピードの規模や、核となるボス魔物の種類や強さ等、欲しい情報はいくらでもある。時間はいくらあっても足りないくらいなんだからな」


 ……そう言われればその通りだ。時間というものは、何物にも代え難い唯一無二の武器になる。たしかにこれを稼げたと考えたら大手柄か。


「調査はそっち方面に強いパーティーに任せよう。お前たちは普段通りに過ごしてくれていいぞ」

「そりゃ良かった」


 ほんとに良かったよ。大抵ここでお使いクエストが発生したりするもん。身構えてたけど、取り越し苦労で済みそうだ。


「話は以上だ。下がっていいぞ」

「了解」


 思いの外あっさりと、ギルド長室を後にすることができたのであった。



 1階の広間まで戻った俺たちは、この後どうするかを相談する。


「この後どうする? って言っても時間的に微妙だなぁ」

「そうね。今日は少し早いけど、解散でいいんじゃないかしら」


 俺の発言に、カトレアから解散の提案。ビルとエルルは、


「オレ達の初めての依頼なんだ。最初から無理する必要もないだろう」

「おー! 帰って鍛治するぞ!」


 ということで、このまま解散の流れとなった。


 ビルの泊まっている宿は、ゴルドフの鍛冶屋の近くにあるらしく、マサカリ担いだ金太郎状態で2人は帰って行った。エルルのはマサカリじゃなくてハンマーだけど。


 ……にしてもあの2人、目立ちすぎである。通行人がみんな2度見してるじゃん。



「さて」

「私たちも帰りましょうか」


 俺とカトレアは同じ宿なので、一緒に帰路に着く。

 賑わう大通りを歩きながら、雑談タイムが始まった。


「良かったわね。すぐにスタンピードが発生する訳じゃなさそうで」

「それな。時間的な猶予があるのは、大きなアドバンテージだ」


 万全の準備を整えられれば、それだけこちらの被害を減らせるのだから。


「そうね。新しい情報が入るまでは、普段通りの生活を送りましょう」

「異議な……し」


 なぜかこの瞬間、ふと依頼出発前の広場でのことを思い出した。……ここで思い出しちゃったかぁ。


「……送れるといいね。普段通りの生活ってやつをさ」

「ちょっと、やめなさいよ。あなたがそう言うと、本当に何か起こりそうじゃない」


 心の底から嫌そうな顔をするカトレア。


 だがテンプレとフラグは、俺たちを決して逃さないようにできているのである。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




「「ただいまー」」


『渡り鳥の止まり木』のドアを開けて颯爽と帰宅……


「ルイン殿、ちょうど良いところに」

「……こんにちは、グレースさん」


 した俺の足と表情はそこで固まった。


 グレースさんがここにいて、「ちょうど良いところに」とか言い出しちゃったら、これはもう役満なんだよ……。


「今日はまた、どうしてここに?」


 なんであれ聞かねばなるまいて。様式美は大事だからね。古事記にもそう書いてある。


 はたして、予想通りにグレースさんはこう言った。


「ご当主様が本日、王都より帰還されてな。明日、"フェザーテイル"とルイン殿は領主館へ来て欲しいとのことだ。急な話で大変申し訳なく思うが、了承いただけまいか」


 ですよねー。


 やはり俺は、ゆとりある生活を送ることができないらしい。そろそろ連続でイベント開催するのやめません? リーン様。もしや『虚無期間』と言う言葉をご存知でない?


 ……しかし、ここで黙っていても事態は解決しない。


 覚悟を決めた俺は、グレースさんに元気よく返事した。



「ハイ! よろこんで!」


ギルド長ルーカスは、映画『コマンドー』のシュワちゃんのイメージです。

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