第32話 Cランク昇級試験を終えて
※本日2話目の更新です。まだ読んでいない方は、先に第31話をご覧ください
冒険者ギルド2階、会議室に再び集まった俺たち。
「先に言っておこう。お前達は全員"合格"だ」
ギルド長ルーカスが端的にそう告げた。ホッとする俺たち4人へと、さらに続ける。
「聞きたいこともあると思うが、まずは最後まで聞いてくれ。この試験での審査項目は主に、"人を殺めて精神に異常をきたさないか"と、"もしターゲットが聞いていた話と違った場合の行動"の2つだ」
うん。そんなところだろうね。後は、
「加えて言えば、冒険者ギルドが"犯罪者を使っている"という事実にどこで気付くか。さらに、それを知っても『冒険者として揺らがないか』と言う点も見させてもらった。……言っちゃ悪いが、この程度で嫌悪感を露わにするような潔癖な奴は、さっさと辞めちまった方がいい」
それは同意する。そんな"キレイな人間"が冒険者をしていたら、遠くない未来に確実に命を落とすことになるだろう。
「だから最初、ここで俺が聞いた時にすっとぼけてたの?」
「気付くのが早すぎて、ちょっと動揺しちまったぜ。その反応で確信したんだろ?」
「まぁね」
とにかく、合格できたんだ。未来の話をしようか。
「で、これから俺たちはどうすればいいの?」
「受付カウンターで冒険者カードの更新手続きをしてもらったら帰っていいぞ。もう聞きたい事はないか?」
みんなを見ると、特になさそうだな。
「じゃあ、俺はこれで失礼する。……諸君、Cランク昇級おめでとう!」
そう言い残して、ガチムチギルド長ルーカスは去っていった。
と、同時に横から声をかけられる。
「ねぇルイン。この後、打ち上げはしないの?」
なんかカトレアが打ち上げをしたがってる。急にどうしたの。
「考えてなかったな。ビルとエルルはどうする?」
「やるならぜひ参加させてくれ」
「ボクもだぞ!」
ノリのいい奴らである。
「じゃ、やろうか。どこでやる?」
「あなたの泊まっている『渡り鳥の止まり木』はどう? お祖父ちゃん達もいるし。あそこ、食堂だけの利用もいけたわよね?」
「なるほど。じゃあこのままみんなで行こうか」
「ええ」
善は急げと、受付でカードの更新をしようと1階に降りた時。
『Cランク昇級おめでとう!』
1階にいた冒険者達がみんな立ち上がって、拍手と共に祝福してくれた。顔も知らない人達ばっかりなのに、それでも惜しみない拍手を贈ってくれている。
……あったけぇ。なんだこの民度の高さは。
俺の知識にあるような、登録しに来ただけで"ならず者系冒険者"に絡まれるような秩序が終わってる冒険者ギルドには、是非彼らを見習ってほしい。
「みなさん! おめでとうございます!」
アンナさんの笑顔も、今日は一段と眩しく見えるぜ。心なしかその素敵な垂れ目も、いつもより垂れて見える。
「ありがとう、アンナさん。カードの更新お願い」
「承りました。みなさんのカードをお預かりしますね」
みんなでカードを預け、しばし待つ。
「お待たせしました。カードをお返ししますね」
アンナさんから1人1人カードを受け取った。やはり色に変化はない。
「これでCランクか」
「12歳でCランクって、かなり珍しいんじゃない?」
「オレは聞いた事ないな」
「ボクもだぞ!」
まぁ伯爵のコネだからね。そらもう12歳だろうがゴリ押しよ。ゴリゴリのゴリよ。
「もうここに用はないし、打ち上げしようか」
「なによ、そんなに楽しみにしてるの? ふふっ、やっぱりまだ子供なのね」
……お前じゃい! と心の底から叫びそうになるのを、グッと堪える。
釈然としないけど、とにかく宿へ向かおう。いつまでも冒険者達から温かい視線が飛んでくるから、落ち着かないんだよここ。
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『渡り鳥の宿り木』1階食堂にて。
「Cランク昇級を祝して〜」
『かんぱ〜い!』
ゴスンッ!!っと、木製ジョッキがぶつかる威勢のいい音が響き渡る。この音が好きなんだよね。
参加者は合格者4人に加えて、"フェザーテイル"の3人だ。
「あの小さかったルインが、もうCランクか。感慨深いな」
「本当にあっという間ね!」
「ほっほっほ。子供の成長は早いのぅ」
保護者勢がなにか言っているが、下手に触れると面倒なことになるので放置だ、放置。
並べられた料理に手をつけていると。ビルがおもむろに話し出した。
「今回の試験はお疲れ様だったな。パーティーのバランスが良くて、かなり戦闘が楽だったぞ」
「ボクもだぞ!」
側から見たらモグラ叩きみたいな感じだったもんね、君たちのとこ。
「それで、みんなはこれからどうするのかしら?」
「随分とフワッとしてるね。それはどういう意味で?」
カトレアの言いたいことがよく分からなかったので問い返してみる。
「そうね。周りくどかったわ。……この4人でパーティーを組まない?」
「オレはいいぞ」
「ボクもだぞ!」
即決するビルとエルル。……ちょっと漢らしすぎない? 通販番組を見た時のお年寄りでも、もう少し悩むと思うよ?
「うーん、条件付きでよければ俺もいいよ」
「条件ってなによ?」
「依頼の参加は自由」
受けたくない依頼に無理やり同行させる事はしない。それだけ。
いくら仕事といっても、楽しめないなら無理にやらなくていい。いつも言ってるけど、俺は『人生を楽しむ』ために冒険者やってるんだから。
他のメンバーにもそうであってほしい。
ということをみんなに説明。
「なるほどね。私はそれでいいわよ」
「オレも異論はない」
「ボクもだぞ!」
今気づいたけど今回それしか言ってないぞ、エルルよ。
ということで、今回試験を受けたメンバーでパーティーを結成することになりました! 断る理由というか、ソロでいる理由も特にないからね。
「じゃあ改めてよろしく頼むわね、リーダー」
「全力を尽くすよ」
再度、乾杯で祝おうとしたところに追加の料理が届く。
「はい、ルイン君。お料理ここに並べるね」
そう言ってソフィは料理をテーブルに置きながら、視線はカトレアの方へ。
「……」
「……」
しばらく見つめあっていたが、やがてほっとしたかのような息を吐き、ソフィはテーブルから離れていった。
「ふ〜ん、あなたモテるのね」
ニヤニヤしながら言うカトレアから顔を逸らすと、参加者全員がニヤニヤしながらこちらを見ている。
……なにこの状況。
公開処刑というものを、生まれて初めて体験した夜であった。
※Cランク試験終了時のステータス
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ルイン
レベル11
魔法
【点火】【氷の盾】【ウィンドカッター】【ヒール】【ライトニング】【ウォーターハンマー】
スキル
【視て盗む】【魔力操作】【突進】【剣術】【槍術】【気配察知】【身体強化】【水鏡】【鑑定】
称号:転生者 格上キラー
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・今日の一言
「ボクもだぞ!」




