第30話 Cランク昇級試験スタート
はい、よーいスタート(幻聴)
「ここから俺は口を出さん。離れて着いていくが、助力は期待するなよ」
街を出てすぐに、ギルド長ルーカスはそう言った。
彼が離れていったのを見届け、俺たちは話し合いを始める。
なぜか自然と俺に視線が集まったので、この流れに乗っておくことにしよう。
「じゃあ、一応確認しとこうか。ビルは敵を引きつけてのタンクでいいんだよね?」
「おう。挑発スキルも使えるぞ」
「攻撃系はなにかある?」
「【シールドバッシュ】くらいだな」
「なるほど。ありがとう」
ビルは見たまんまのスキル構成でオッケー、と。さっきから予想はしてたけど、いざ本番で「実は違いまっせ」的な食い違いがあったら嫌だからね。
「次はエルル」
「おー!」
「元気があって大変結構。エルルはそのハンマーでぶっ潰すスタイル以外には何かある?」
「ないぞ! ハンマーで叩くぞ!」
「アッ、ハイ」
清々しいほど脳筋だわ。ドワーフの血が濃すぎる。
「最後にカトレア。いい?」
「ええ。どうぞ」
「得意な系統の魔法は? この試験で使用するつもりのものだけでいい」
魔術師は特に隠したい手札も多いだろうしね。
「そうね……いいわ、教える。水と雷が得意よ。というか他の属性魔法は使えないわね」
思いのほかあっさり教えてくれたな。でも。
「そこまで言っちゃっていいの?」
「いいわよ。だってあなた"フェザーテイル"と懇意なんでしょ?」
「? そうだけど……」
それが何か関係あるの?
「ガルフは私のお祖父ちゃんなのよ」
「マジで!?」
「だからお祖父ちゃん達が信頼してるなら、別に教えても構わないわ」
なんか最近、世間が狭すぎん?
リーン教会のエカテリーナさんはセレナ様と知り合いだったし、エルルはあのゴルドフの娘だし。挙句のはてに、ガルフの孫まで出てきちゃったよ……。
次はなんだろ? どうせ来るなら、テレーゼの妹とかでオナシャス。
「それで? 固まってないで。どうするの?」
「あ、ゴメン。そうだな……。てか俺が話進めちゃってるけど、いいの? 今更だけど」
みんなを見渡しながら聞くと、
「いいぞ」
「おー!」
「別にいいわよ。私はやりたくないし、性格的にあなたが適任よ」
と返ってくる。
……俺、一応12歳の子供なんだけど、いいんすかね。
でもま、そう言うことなら遠慮なく。
「じゃあ、戦闘時の方針だけは今決めちゃおうか。ビルとエルルは普段通りで。細かいことは言わないから、ビルが引きつけてエルルがぶっ叩く。以上」
「「おー!」」
ビルがエルルに合わせてるのが微笑ましい。
「カトレアは後方から撃てそうなら魔法よろしく。必要な時だけでいいよ。魔力は温存していこう」
「分かったわ。……あなたはどうするのかしら?」
「遊撃。状況に応じて立ち回りを変える。回復魔法も使えるから、怪我したら遠慮せずに言ってくれ」
そう言ったら全員がバッ!と俺の方を見た。あれ、俺またなんかやっちゃいました?
……いや、鈍感系になるのはやめよう。もう流行らない。
回復魔法の件ね。
あれ結構なレア魔法らしいからなぁ。ほとんど教会か治癒院でしか見かけないみたい。
独占というと聞こえが悪いが、この両組織の待遇が破格なので、ほとんどの回復魔法持ちは自らそこに行く。
結果的にそうなってしまっただけである。ありがちな強引な勧誘とかは、特にないから安心だ。
「あ、あなた。回復魔法、ですって?」
「そう。別に元々使えた訳じゃないよ。今は『そういうことが出来るスキル』を持っているって認識でいい」
3人はそれでひとまずは納得してくれた。……カトレアだけは最後まで何か聞きたそうにしてたけど。
「思ったより時間食っちゃったな。出発しよう」
いつまでもここにいてもしょうがない。まずは森へ向かおう。
※ ※ ※
「こっちだぁ! 【アピール】ッ!」
ビルの挑発系スキルを受けたコボルト3体が、彼めがけて突っ込んでいく。
それぞれが手に持つ、ナタの様な武器による激しい攻撃は、ビルが構える大楯によって完全にシャットアウトされている。
(コボルト程度なら全く問題ないな)
森に入って早々に魔物の気配を察知した俺たち。ちょうど良いので、こいつらで軽く連携を確かめる事にした。
「ギャッ! グギャ!」
「ふんっ! 効かんなぁ!」
余裕の表情を浮かべるビル。
一方で、コボルトの背後へ回り込んだエルルが、ハンマーを力いっぱい振り下ろした。
「どっせーいっ!」
「グギャ…」
───ドカーーーンッ!!
そのハンマーは見事にコボルト1体を捉え、文字通り叩き潰した。
……すげぇ。これがよく耳にする『力こそパワー』ってやつか!
残りは2体。これは俺とカトレアでやろう。
「カトレア、右のヤツいける?」
「もちろんよ。あなたは左かしら?」
「そゆこと」
言うや否や、俺は全速力で駆け出す。
速度を落とすことなく、駆け抜けざまの一撃で首を落とす。振り向くと、ちょうどカトレアが魔法を発動するところだった。
ビルが魔法の発動を察知し、【シールドバッシュ】でコボルトを吹き飛ばして距離を作る。
(ふぅ、間に合ったか)
カトレアの持つ杖から、黄金のスパークが迸る。……関係ないけどあの杖、ガルフの使ってるやつとそっくりだな。
「【ライトニング】」
──バチバチィッ!
まるで真横に落ちる雷のようだ。
放たれた雷撃は瞬く間にコボルトに到達、派手な音と共に目標を黒焦げにした。
(……よし、この感じは問題なく盗めたな)
おそらく『男が憧れる魔法ランキング』で1位2位を争う、雷魔法をゲットだぜ!
心の中でスキップしながら皆を労う。
「みんなお疲れ! やっぱDランクモンスター程度なら手こずる事もないか」
「当然よ。むしろ手間取るようなら、Cランクになる資格なんかないわよ」
フンッと言いながらウェーブがかった青髪をファサッ、とするカトレア。
やたらその仕草が似合うね、君。
と、そこで頼れる兄貴分ビルが口を開いた。
「それでルイン。野盗の拠点は洞窟という話だったな?」
「そうだね」
「なら候補は絞られる。一番近い場所だとここから半日ほどのところだな」
「次に近い場所は?」
「1日は確実にかかる。道中のことを考えると2日は見たほうがいいだろう」
なら最寄りで間違い無いかな。
「じゃあ順当に一番近いところから見ていこうか。……多分そこにいる」
「なんで分かるのよ? さっきギルド長に聞いてたことに関係あるでしょ。教えなさいよ」
ビルからも、
「たとえ予想の段階であっても情報の共有はしておけ。パーティー行動するなら、些細な認識の齟齬が命取りになることもある」
「……その通りだな。ごめん、話すよ」
そして俺は「あくまで確証はないが」と前置きした上で、ここにいるメンバーに野盗の『正体』を話した。
(エルルはヒロインになる予定は)ないです。




