第3話 冒険者パーティー到着
ついに、その日はやってきた。
「あー。コレは間違えようがないわ」
たしかに”ソレ”は俺のおへその下あたりから、その存在を訴えかけてきた。
「すぐに諦めなくてよかった」
……ここまで何度、丹田くんが熱い気がしたけどただの気のせいだったことか。
「長かった。いや、あれからまだそんなに経ってないけどさ」
気持ち的には何年も修行した、その道の達人みたいな気分だった。今言った通り、1週間くらいしか経ってないが。
「なるほど、一度”認識”できればもう見失わないのか」
なんか自転車の乗り方みたいだな。一回覚えればもう忘れない、みたいな。
「ここからは魔力を循環させたりして、自在に操れるようになるとなんか強そう(小並感)」
歴代の主人公キャラ達はみんな、コレやってるからね。古式に則って、俺もやらなければならない。
地道な修行が、今は楽しくて仕方ない。モチベは今がマックスだぜ!
そう思っていた時期が俺にもありました。
それからわずか2日後。
「Cランク冒険者パーティー ”フェザーテイル”のリーダー、アルだ。よろしく頼む」
「同じくテレーゼよ。よろしくね!」
「わしはガルフじゃ」
ボア退治の依頼を受けた冒険者パーティーが、シーズ村にやってきた。
片手剣を帯びている、20代前半くらいの男がアル。
背中に弓、腰に短剣を2本装備している、犬系の獣人女性がテレーゼ。彼女もアルと同年代かな。
最後に、大きい杖を持った、見るからに魔術師の老人がガルフだ。
冒険者は、一番下のFランクから一番上のSランクまでのよくあるやつで、パーティーランクは所属するパーティーメンバーの平均で決まる。
Cランクは一般的に見て、実力のあるベテラン冒険者という分類になるらしい。
ちなみに冒険者ギルドに登録されている、ボアの魔物としてのランクはEランクだ。群れになるとDランク相当に上がる。
──前衛のアルに、中・遠距離から弓を使い、装備的に多分斥候までこなすテレーゼ。後衛から魔術をブッパするガルフって感じかな。
と、遠目から村長と挨拶している彼らを見ていると、ガルフと目があった。
「……ほぅ」
だけでなく、なんか感心しているような声まで聞こえてきた気がした。
あぁ、これはあれだ。辿々しくも魔力を循環させているのが完全にバレてますね。
シーズ村に一軒しかない宿屋に向かうアルとテレーゼから離れ、ガルフだけこっちにやってきた。
「魔力循環かの。その歳でもう魔力を知覚しとるとは、優秀じゃな」
やっぱりバレてた。
「えーっと、それってそんな簡単に分かるものなんですか? 俺、他の人の魔力なんて全然分からないんですけど……」
「人による。じゃが高いレベルで魔法を扱う者なら、他者の魔力を感じ取れる者はそれなりにおるな」
「はぇ〜」
なるほど。なら魔力で大体の力量が分かったりもするのかな。
「ちなみにですけど、魔法ってどうやったら使えるようになるんです? なんとか魔力は、少しだけ動かせるようになってきたんですけど、そこから先が分からなくて」
「ホッホッホ。まずは属性の向き不向きを知ることじゃな。人によって、火は使えるが他はダメじゃったり、水と風が得意で他は少しだけ使えるなど千差万別じゃ。これは実際に試さねば分からん」
「ふむふむ」
「魔導書を読むなり、師から教わったり。イメージ次第では自力で習得できたりと。自分の属性に適性さえ合えば、難易度に差はあれど覚える方法そのものは割とあるぞい」
聞いた感じだと習得の自由度はかなり高いな。
「とまぁ、ここまで説明しておいてなんじゃが、一番はそもそもの才能の有無じゃな。魔法を使えぬ者は、魔力が多少あろうがいくら頑張っても使えん。そういう者は総じて、前衛タイプのスキル習得が得意だったりするのじゃが」
マジかよ。そこが一番重要じゃねーか。最初に言ってよ。
俺の場合【視て盗む】があるから、最悪なんとかなるだろうけど。
「なるほど。ありがとうございます! でも、こんなに教えてもらっちゃってよかったんですか? こういうのって、お金とって教えるようなやつなんじゃ……」
「そこまで価値のある情報でもあるまいし構わんよ。ただ、この程度のものでも容赦なく金を毟り取ってくる輩は、ゴロゴロおるから気をつけるんじゃぞ」
そういう奴は、どの世界にも絶対いるよね。
「はい! あ、今更ですが俺はルインです。よろしくお願いします」
「うむ、わしはガルフじゃ。パーティーメンバー共々、依頼が終わるまでよろしく頼む」
そう言い残して、ガルフは去っていった。
「思いがけず色々情報が手に入ったな。ガルフは確かにさっき『イメージ次第では自力で習得できたり』と言った」
イメージ(妄想力)なら、現代日本人の記憶を持つ俺の見せ場だぜ!
魔力の循環がスムーズにできるようになったら、魔法の自力習得も目指してみよう。
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「ただいま戻ったのじゃ」
「おう、おかえりガルフ。あの子供に気になるところでもあったのか?」
宿に向かう直前にガルフが自分達と別れ、金髪碧眼の子供に話しかけに行ったことが、少し気になっていたアルは開口一番に尋ねた。
ちなみに犬獣人のテレーゼは、お昼寝中である。
「あの幼さで魔力を知覚し、わずかじゃが循環までさせておったでな」
「はぁっ!?」
「魔力の知覚という点だけ見ればまだ分かる。貴族の子なんかはあれくらいの歳でも、教育を受けている者はおるからの」
この世界の貴族階級は、王をトップに下から男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵となる。伯爵以上の上級貴族の子供は、早い子で大体ルインと同じ年齢である、5歳ぐらいから魔法教育を受け始める。
「いやいや、お貴族様とあの子じゃ環境が違いすぎるだろうよ」
「わしが気になったのもそこじゃな。見たところこの村にそこまで魔力の扱いに秀でたものはおらん。つまりあの子は誰の教えもなしに、独学で魔力を感じ取った訳じゃ。ほれ、異常じゃろ?」
完全にノーヒントで、魔力の存在に辿り着くことなどまずあり得ない。
が、ルインは「異世界ファンタジーもののテンプレだとこうだよな!」でやったことが、お約束を外すことなくクリティカルしただけで、ぶっちゃけ運が良かっただけである。
本人もこれには「ラッキーボーイだぜぃ☆」と思っているくらいだ。
「少なくとも俺はそんなケース、聞いたことねぇな」
「話した限りでは、年齢の割にとてもしっかりした素直な子じゃったから、この村におる間は少し気にかけておくとしよう」
「了解だ」
勘違いから、運良くCランク冒険者に目をかけてもらえることになったルイン。
幸せそうにすやすや寝ているテレーゼは、この話を夕食時に聞いたのだった。
ガルフの見た目はホグ○ーツ魔法学校の校長です




