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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第1章 辺境の村シーズ

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第2話 丹田ってどこだよ

夏の軽井沢とか、那須の空気っていいですよね


 俺がこの世界に転生して2日目の朝。


 目が覚めてすぐに木窓を開けると、社会人になってからはついぞ嗅いだ覚えのない、田舎特有のフレッシュな空気が部屋を満たした。


「当たり前だけど夢ではない、と」


 転生した事実を今一度噛みしめてみるが、やはりそこに動揺はなかった。




 さっさと着替えてリビングへ行くと、すでに母さんがキビキビ動き回っていた。朝から元気だなぁ。


「おはよー、母さん」

「おはようルイン。もうご飯できてるから、顔を洗ってらっしゃい」

「はーい」


 ということで、顔を洗ってから農民御用達の黒パン&野菜スープをいただく。

 異世界テンプレセットに俺のテンションは爆上がりだ。


 昨日から思ってたけど、この世界って中世ファンタジー的な世界観の割には、農民の生活水準がそこまで低くないんだよな。

 記憶にあるかぎり、村人たちから生活苦による悲壮感を感じたことはない。


 ご飯は質素だけど、ちゃんと食べられるし。

 家もボロいけど建物自体は意外としっかりしてる。


 まぁ、魔法やスキルが存在する世界だから、なんか謎の技術が発達してたりとかするんだろう。知らんけど。





ー朝食後ー



 短い食休みを挟み、外へ出かけてみることにした。


「母さん。ちょっと散歩してくるね」

「はーい、気をつけてね。あ、そうだ。ついでにマッシュとウィルにお弁当届けてもらえる?」

「いいよ。二人とも畑だよね? 渡しとくよ」




 ということで早速畑にやってきた。


 そこで俺が目にしたものは、もはやギリギリ畑に見えなくもない、荒れ地のような何か。

 そしてその傍で、付近に散乱した野菜の残骸を片付けていた、兄ウィルの姿だった。


「これはひどい」


 ミンチよりひでぇや。


「やあルイン。多分ボアだと思うんだけど、僕と父さんが来た時にはもうめちゃくちゃになってたよ……」

「バッタリ遭遇とかして、兄さんたちが襲われなくて良かったよ。それで父さんは?」

「村長のところで相談してる。結構前に行ったから、そろそろ戻ってくると思うよ。ほら」


 ウィル兄さんが指差した方を見ると、心なしか哀愁を漂わせた父さんがやってきた。


「ルインも来てたのか」

「うん。なんかえらいことになってるね。村長さんはなんて?」


「落ちてた毛から見て、荒らしたのはボアでまず間違いない。んで、この規模で荒らされるってことは、そこそこデカい群れだからな。街から冒険者呼ぶってよ。ボアも俺たちにとっては危険な魔物だし、専門家に任せようってことになった」


 説明サンキュー。


 父さんが今言ったように、ボアはこの世界では動物じゃなくて魔物なんだよね。

 雑食で普通に人間も捕食するから、前世の猪と同じノリで考えているとまず死ぬことになる。


 体高は成人男性くらいで、体長は3mほど。

 それが群れで襲ってくるって考えたらメチャクチャ怖い。


 うん。一般人で対処するのは無理だわ。


「畑については? その言い方だと、被害はうちだけじゃないんでしょ?」

「まぁな。荒らされた畑は、騒動がひと段落するまで整備だけする。んで、ひとまず今季はみんな、無事だった畑の手伝いに回ることでまとまった」

「なるほど」


 実際問題それしかないもんね。


 そこで、ここまで黙っていたウィル兄さんが口を開いた。


「僕もそっちを手伝えばいい?」

「うーん。お前もルインも、まだ好きなことをやっててくれて構わないんだが」

「僕はうちの畑を継ぐつもりだからね。その分、ルインに好きなことさせてあげてよ」


「そうか。じゃあ頼む。……ありがとよウィル」


 ……うちの兄が聖人すぎる!


 8歳でこれなんですよ初見さん。

 歳のわりに頭もめっちゃ良いし、実はウィル兄さんも転生しているのでは?




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 その後、一人になってしばらく。


「さ〜て、【視て盗む】の検証タイムじゃい!」


 と、息巻いて村を徘徊していたのだが……ここで気づいたことがひとつ。


「誰もスキル使わないな」


 よく考えてみれば当然か。

 こんな村の中でおもむろにスキルを発動してる奴がいたら、そいつはただの狂人である。


 【視て盗む】の検証が、速攻で行き詰まった件。


 そもそも、この村でスキルを持ってる人って主婦層で、【家事】みたいな日常生活快適系スキルだったりするだろうしなぁ。


 どうしよう。


 ……はぁ。ボアの件で街から冒険者が来るまで、待つしかないか。


 それまでは自力でスキル習得できないか試してみようかな。


 じゃあ何のスキルにしよう、とか考えていたら……ふと気づいた。気づいてしまった。


 なんてことだ。

 俺はまだ、転生者のお約束のひとつである『アレ』をやっていないではないか。


 そう。座禅を組んで目を瞑り、なんやかんやしたら魔力が目覚めるという、あの儀式だ。


 魔を以って法を制す。つまりは魔法。

 俺も頑張れば、使えるようになるのでは?


 気づいちゃったものは仕方ないね。

 これは是非試さねば。


 ちょっとワクワクしてきたぞ。



 善は急げとばかりに、少し前までウィル兄さんとよく遊んでいた秘密基地へ。


 ここは死角にはなってるけど家からほど近い、保護者にもご安心いただける穴場だ。

 到着して早々、この儀を執り行うこととする。


 座禅なんてしたことないので、とりあえずそれっぽいポーズで座る。

 たしかスト2で、ダ○シムが空中に浮いてる時がそんなポーズじゃなかったっけ?(適当)


「異世界転生モノの定番では、丹田あたりに意識を集中すると熱を感じたりするらしい」


 いざ! 魔法の深淵へ!




 (……丹田ってどこだ? ……たしかヘソのあたりだったっけ?)


 そこに意識を集中して……と。……集中? 意識を集中って、どう集中すればいいんだ?


 筋トレする時くらいの集中度で大丈夫かな?

 ほら、腹筋する時にお腹を意識すると効果的だ、みたいな話があるじゃん。あんな感じ?


 丹田も腹筋も同じくお腹にあるんだから、多分合ってるはず。



 ……いや、ほんとに合ってるか? なんかよく分からなくなってきたぞ。



 異世界転生した主人公たちは、こんな難しいことをあっさりやってたのかよ。

 そりゃ、俺Tueeeeにもなるわ。


 先人たちに負けていられない。


 いつか俺も「あれ、もしかしてなんかやっちゃいました?」とか言ってみたいからね。

 そのための努力は惜しまないぜ!


 ……

 …………

 ………………


 ───結局その日は、何の成果も得られませんでした。



次回、新キャラ登場!

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― 新着の感想 ―
ふと思ったんだけど、「盗む」ってのには2パターン考えられそう 行使した結果相手はスキルが使えなくなるパターンと、行使しても相手はそのまま使い続けられるパターン 前者だったらまじで最強ですね笑笑
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