第27話 格上キラーと領主からの推薦
ヴォルクス近郊、東の森にて。
「【ウィンドカッター】」
「「グギャッ!」」
俺の放った風の刃が、目の前のゴブリン2体をまとめて両断した。
「残りも2体、と」
剣でやろうか。可能な限り近接戦の経験を積んでおきたい。
「ギャギャッ!!」
ちょうど剣の切っ先を向けたタイミングで、2体まとめて襲いかかってきた。
「ほいっ、と」
先に振り下ろされた棍棒は、半身になって回避。そのままカウンター気味に下段から斜めに斬り上げる。まず1体。
「グギャギャッ!」
間をおかず、残る1体が横薙ぎを繰り出そうとする気配を察知。踊るようにクルリと半回転しながら、背中合わせに密着。初動を封じる。
この状態のまま、逆手に持った剣で俺自身の脇の下を通してゴブリンを突き刺す。これで2体、終了だ。
「後は討伐証明の右耳を剥ぎ取って依頼完了だな」
現在、俺はDランクの常設の討伐依頼『ヴォルクス東の森で増加傾向にあるゴブリンの間引き』を受注している。
ただいまの戦闘でちょうど10体目の討伐が完了したところだ。
「じゃあこいつから……お?」
急に体が軽くなったな。……これは、もしかして。
「ステータス」
ヴォン
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ルイン
レベル11
魔法
【点火】【氷の盾】【ウィンドカッター】
スキル
【視て盗む】【魔力操作】【突進】【剣術】【槍術】【気配察知】【身体強化】【水鏡】【鑑定】
称号:転生者 格上キラー
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「やっぱりレベルが上がってたか」
塵も積もればって奴だな。
剣を手に入れてから、連日討伐依頼を受けまくった甲斐があった。早く冒険者ランクをCまで上げて、適正レベルの魔物でさらにレベリングを加速させたい。
というのも、規定上1ランク上の依頼を受けられるとはいえ、Dランクの冒険者が昇級試験を受けなきゃ上がれない、Cランクの討伐依頼を受けようとすると「こいつ危機管理できてねぇな」と思われて評価が下がるらしいのだ。
これを"フェザーテイル"の3人から聞いた時は、あまりに悪質なこの罠に絶句した。
ポーターの時の件といい、この世界の冒険者ギルドはだいぶやってるな。と認識を改めたよ。あの組織の言う事は、そのまま鵜呑みにしてはいけない。
向こうは純粋に冒険者の安全を守ろうとしていて、悪意は特にないから尚更タチが悪いんだよなぁ。
とはいえ俺はまだEランク。先は長い。
そして、流すつもりはないのでご安心ください。
称号欄に現れたる『格上キラー』の存在をね!
タップした時の詳細がこちら。
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格上キラー
己よりも遥かに強大な敵と幾度も戦い、その全てにおいて勝利を掴み取った者にのみ贈られる戦士の誉れ。
この者は生涯、高みに君臨する強者へと挑み続けるだろう。
その身が朽ち果てるまで……。
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……ツッコミどころが多すぎるんだよなぁ。
勝手に俺の身が朽ち果てるまで、戦わせようとしないでくれる?
イヤだよ、そんな人生。
この称号はスノーボア、ワイバーン、アイゼンリートあたりが原因と思われる。
……別に好きで格上とやってる訳じゃないんだけどなぁ。
とはいえだ。この不吉極まりない予言が、現実のものとなってしまう可能性も否定できない。
「早くCランクに上がって、稼げる依頼をいっぱい受けよう。お金を貯めたら観光がてら王都の闘技大会でも見物して、スキルと魔法を乱獲しよう」
もっと強くなるためにもね。
今の目標を口に出してから、いいかげんゴブリンの剥ぎ取りに取り掛かることにした。
口に出したおかげか、きっとリーン様が聞き届けてくださったのだろう。
……その機会はすぐに、やってくることになるのだった。
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「は? Cランク試験を受験しろって? なんで?」
唐突に降って湧いた2階級特進チャンスに、俺の口から間抜けな声が飛び出した。え、マジでなんで? 殉職するのかな、俺。
混乱した頭を整理するために、ここに至るまでの経緯を思い返すことにする。
……遡ること20分ほど前。
東の森から冒険者ギルドに戻った俺は、アンナさんに依頼の達成を報告していた。
ここ最近受けまくった討伐系依頼のおかげか、規定数に到達したようで、Dランクへの昇格を告げられる。
ここまでは良かったのだが、いつの間にかアンナさんの後ろにいた、偉そうな人物から待ったの声が掛かった。
なんと、ギルド長が俺を呼んでいるとのことで、2階にあるギルド長室へ強制連行されてしまったのだ。
あれよあれよと言う間に、お茶が出されたソファに対面で座ってすぐ、強面で筋肉ムキムキ、マッチョマンのギルド長ルーカスが言った。
「ルインだったな。お前にはCランク昇格試験を受けてもらうことになった」
それを受けて、先の言葉が俺の口から飛び出したという訳である。
……よし、落ち着いてきたのでギルド長の話を聞こう。
「領主様から打診があってな。というか、ぶっちゃけると圧力がかかった。手紙を預かってるから、まずはコレを読め」
「なんでまた……。じゃあ失礼して」
ギルド長から手紙を受け取り、目を通す。
『グレースから報告は受けているよ。ずいぶんと女性と仲良くなるのに忙しいみたいだね。私は王都で忙しく駆け回っているし、セレナも屋敷で退屈な思いをしているというのにね。
そんな時間があるなら、早くランクを上げて強くなってくれると助かるんだけどね。それで、あの子が外出する時に、護衛依頼の1つでも受けてあげてくれ。不本意だが、きっとセレナは喜ぶだろう。不本意だけどね。
冒険者ギルドに話は通しておくから、くれぐれも試験に落ちないようにね。もし落ちたらセレナに、君が見境なく女の子を口説いてたことを言っちゃうからね』
「ふむふむ」
お小言はいただいてしまったが、伯爵による死は回避できたようだ。見境なく女の子を口説いていたなどという全く身に覚えのない、いわれなき誤解はあるようだが。
ひとまずは良かったと言っておこう。
「理解したか? ここまで真正面からコネを使う人間も、なかなかいないぞ」
「えへへ」
「褒めてねぇよ」
知ってるよ。
「護衛依頼なんかは、Cランク以上の冒険者限定の依頼になるからな。試験は対人戦闘が含まれるものになる」
「濁すなよ。人を殺せるかどうかを見るんだろ?」
「……そうだ」
もっと言えば、人を殺しても精神的に壊れないか。高ランク冒険者に求められる基準の人間性を有しているかを、試験官がチェックする。
……結構いるのだ。
相手が悪人とはいえ、人を殺したことで病んでしまう者が……。
トラウマになってしまったり、ひどいケースだと快楽殺人者に堕ちてしまう者もいるらしい。
彼らを一概に『心が弱い』と責めることはできないだろう。単純に冒険者には向いていなかった。それだけの話だ。
「試験は東の森奥地にある洞窟に拠点を構えた、野盗たちの殲滅だ。生かす必要はない。受験者はお前を含めて4人。出発は3日後の朝で、ギルドに集合。……質問は?」
「じゃあ1つだけ。今『4人』って言ったよね。それはパーティーとして動けって理解で合ってる?」
「別に強制ではないが、それも含めて見ていると思え」
「強制みたいなもんじゃん」
こんな簡単な集団行動もできないようなら、Cランクに上がる資格なしと見られるだろうな。
「話は以上だ。帰っていいぞ」
ということで俺はギルドを後にした。
「3日後か。できる準備はしておこう」
宿への道を歩きながら考える。
(……ちょうど欲しい魔法もあったし、3日後というのはありがたい)
早速明日にでも、その魔法を盗みに行くとしよう。
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