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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第2章 少女が見た英雄の背中は

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第21話 バッドエンドは許さない



 場所は変わって、ここは領主館の応接室。


 あの後、俺は女騎士グレースに連れられて領主ガーランド伯爵と面会する運びとなった。いわずもがなセレナ様奪還についてだろう。


 だって、一緒に"フェザーテイル"も来てるからね。


「話はグレースから聞いた通りだ。娘は何者か、というより犯人も隠すつもりはないのだろうね。確定ではないが、アルセイン帝国の手の者に攫われた」

「エルディライト法国は、良い意味でも悪い意味でも他国に興味がありませんからね」


 例によってソファに腰掛け、対面でガーランド様と話すのはアルだ。


「この国の貴族という線はないんですか?」

「ない。少なくとも国内の貴族が動けば必ず"それらしい痕跡"は残るよ。今回はそれがない」


 つまり、北の山脈から抜け道でこっそり来た、と。

 正規のルートは、よほど身元がしっかりしてなければ入国すらできないからね。


「ついに例の抜け道が見つかってしまいましたかね?」

「多分ね。敵の狙いは国の北部にあたる私の領地一帯だろう。娘を交渉材料にしてね」


 おそらく王都には悟られないよう、伯爵を傀儡にして少しずつ帝国に侵食させていくのだろう。慎重に。だが確実に。


「領都だと警備が厳重ですから、直接ヴォルクスで実行に移したんでしょうね。となると」

「来た時と同様に領都を経由しないルートで、そのまま抜け道を使って本国に連れ去るつもりだろう」


 これは相手勢力のヴォルクス脱出までがタイムリミットだな。


「街を出られて、商隊なんかに偽装されたら面倒ですね。なるべく街にいる間に奪い返したい」

「そうだね。潜伏先は十中八九スラムだ。そこで君たちへ依頼をしたい」


 ガルフの探知魔法がここで活きてくる。ちなみに腰は治っている。




「報酬は言い値を払おう。……頼む。娘を取り戻してくれ」




 ガーランド伯爵が頭を下げる。


 ……貴族が頭を下げるその意味を、分からない俺たちではない。


「頭を上げてください。俺たちの全力を以って、御令嬢の奪還にあたらせていただきます。……ルインもいいか? ……おそらく人を殺すことになる。できるか?」


「もちろん」


 俺は即答した。


 そんなもん7年前からずっと考えてた。その日が来ただけだよ。

 ここは日本どころか地球ですらないんだ。殺しに来る相手は殺すよ。


「感謝するっ。ルイン君もありがとう。すまないが、力を貸してくれ……っ」



 ……それに、俺は『こういうテンプレ』は大嫌いなんだ。



 まだ12歳の女の子が知らない大人たちに攫われ、一人ぼっちで怖い思いをしている。言葉に並べるとたったこれだけだ。


 でも、あの子の立場だったらどうだ。


 きっと泣いているだろう、きっと震えているだろう、

 『どうして自分がこんな目に』と、世の中を恨んでさえいるかもしれない。


 そんな子を見殺しにしてみろ。


 俺はもう、心から『人生を楽しむ』ことができなくなるだろう。


 何の罪もない女の子と、平民の冒険者にすら頭を下げてみせる気概を見せた領主。


 この親子は、1秒でも早く再会させてあげなくちゃ。



 ……バッドエンドは許さねぇぞ。




「大掛かりな捜索をすると相手側に警戒される。こちらからはグレースを出そう。救出に役立ててくれ」


 ガーランド伯爵に言葉を向けられたグレースが、一歩前に出る。


「お嬢様のために全力を尽くす。よろしく頼む」


 こうして、"フェザーテイル"とグレース、俺の5人でセレナ嬢奪還作戦は開始された。





☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 話し合いを終えた俺たちは、スラムにほど近い大通りで買い食い中だ。


「こんなことをしていていいのか? 早くお嬢様をお救いしなければ……っ!」

「今ガルフが探ってるから待ってなさい! 冷静に行動しなきゃ、助けられるものも助けられないわよ!」


 逸るグレースを宥める犬耳テレーゼ。……どうでもいいけど微妙に名前が似てるね君たち。



「そうだとしても、彼らは気を抜きすぎではないか?」


 グレースがこちらをチラリと見ると、


「アル! これ良くない!? 持つところに『ヴォルクス』って彫ってある木剣!」

「王都から来た観光客の子供かお前は! ……子供ではあったな」

「いや〜、こんな店あったんだな〜。まだまだ知らない穴場がいっぱいでルイン嬉しい」

「マジで気持ち悪いからそれはやめろ」


 俺とアルは緊張感のカケラもない掛け合いを繰り広げていた。


「はしゃいでるルイン可愛いわよね!」

「えぇ……」


 グレースが『だめだこいつら、早くなんとかしないと』みたいな表情を浮かべたその時。



「うむ。おそらくコレじゃな」

「お、もう見つけた? 早いね」

「お前の切り替えも早いがな」


 ガルフが早速見つけたっぽいので意識をそっちへ向ける。


「人が集まっている場所はいくつもあるが、魔力の大きさからすると、該当しそうなのは1箇所だけじゃ」

「さすガル」


 やっぱ探知魔法ずっこいな。探知魔法を【視て盗む】で貰えばよかったかもしれない。あの時は攻撃手段が欲しかったから、後悔はしてないけど。


 ……『1個体につき1つ』っていう縛りがネックだ。そのせいでアルとテレーゼに何のスキルを頼もうか決めかねてるし。


「数は分かるか?」

「飛び抜けて強いのが1。そこそこのが3。有象無象が約10ってところかのぅ」

「やれないことはないか」


 その飛び抜けて強いやつ次第だが、こっちはBランクパーティーに伯爵令嬢の護衛騎士がいるんだ。そこまで悲観するような戦力差ではないだろう。




 軽く打ち合わせた後、俺たちは潜伏先を実際に目で見て確認することに。


 もちろん、今回のケースは時間が経てば有利になるようなものでもない。そのまま突入する気満々なので、完全武装でスラムに侵入する。



「あれじゃな」


 なるべく人目に付かないように侵入することしばらく。目的の建物を捕捉した。


 2階建てのボロい邸宅で、元は商人か貴族の持ち家だったのかな? 朽ちる前はさぞかし立派だったことだろう。


 外にいる見張りは入り口に2人だ。


「セレナ様の場所は分かるか?」

「ひとつだけ弱い反応が地下にある。そこじゃろう」


 アルとガルフが小声で情報を共有する。


「ひとつだけってことは、見張りはいないのか?」

「強い反応は2階に集中しておるな。1階には先ほど言った有象無象の反応が全てあるのぅ」


 1階は大ホールになってるのかな。ここにいる奴らは地下への入り口の見張りも兼ねている、とかだろうな。

 2階はリーダー格たちが使ってるっぽいし。


 アルが少し早口で指示を出す。


「突入したら1階で暴れてる間に、間違いなく2階から強いのも降りてくる。戦力は1階に集中させたい。セレナ様の救出はルイン、お前が行け」

「気を使わなくていいよ」

「そうじゃねーよ。単に役割分担だ」


 ……嘘つけ。


 口ではどう言っていても、子供の俺に人殺しはさせたくないのだろう。


「さて、派手に引きつけてる間に頼むぞ、ルイン」

「分かった。そっちも油断はしないように」

「ぬかせ」


 話はまとまり、突入のタイミングを伺っていると、グレースに声をかけられた。


「どうか……どうかお嬢様を」

「必ず連れて戻ります」

「っ!」


 グレースがなんか息を詰まらせたけど、なんすか?


「……行くぞ。頼むテレーゼ」

「了解よ。……ふっ」


 ほぼ同時に放たれた2本の矢が、2人の見張りの喉に突き刺さる。さすが。


 見張りの身体が地面に倒れる前に、俺たち全員が入り口へと駆け出した。



 さぁ、囚われの姫を助けに行こうじゃないか。


 作戦開始だ。



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