第127話 ようこそ実力至上主義の都市へ(2度目の訪問)
久々のギルド長フィアーナさん登場回。
ダンジョン都市ファランダールの冒険者ギルドにて。
──パタンパタン
「お、おい。あれ見ろ……」
「げえっ! 『剛拳のリアラ』じゃねえか!」
「一緒にいるのは"アルゴスアイズ"だぞ!」
「最悪な組み合わせじゃねぇかよ……」
「お前ら、あいつらがいる間は絶対に暴れんなよ……暴れんな」
リアラさんを先頭に、肩で風を切ってギルド内を進む俺達。
今日も朝から気持ちよく酒を飲んでいたヤンチャ系冒険者達が、その姿を見て一瞬でシラフに戻る。
俺たちだけの時よりも明らかに恐怖しているな。さすが姐さんだぜ! よほど暴れ散らかしたに違いない。
くくくっ。諸君、少し頭が高くはないかね? ひれ伏したまえよ。『剛拳のリアラ』を従える我、貴族ぞ? 女神の使徒ぞ!?
「ルイン、調子に乗らない。いいわね?」
「アッハイ」
カトレアに釘をグッサリと刺されてしまったので、大人しくリアラさんの後に続いてカウンターへ向かうことにした。
……なんでリアラさんがいるかって? 単純な話だ。
俺達がカグラのレベリングをしにファランダールに行くことを、晩御飯の席でエルルから聞いたからだって。「ちょっとコンビニ行ってくる」「あ、私も行くー」みたいなノリである。
どうやら、久々にここのギルド長フィアーナに会いたいらしい。身も蓋もない言い方をしてしまえば、友達と飲みに行きたいだけなのだが……。
まぁそんな日もあるよね、ってことで連れてきてあげました。
カウンターに着いたところでリアラさんが受付嬢に声をかける。
「ギルド長はいるかい? リアラが呼んでるって伝えてくれ」
「お久しぶりです、リアラさん! 少々お待ちを────」
「その必要はない」
2階へと続く階段の方から、懐かしい声が聞こえてきたのでそちらを見ると……。
「久しいな、リアラ。それに"アルゴスアイズ"の諸君も」
相変わらず『女傭兵がスーツを着ました』みたいな風貌の、ギルド長フィアーナの姿がそこにあった。
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「なるほどな。事情は理解した」
俺たちがここに来た目的や、リアラさんが飲みに誘いに来たことなどを説明すると、フィアーナは少し考えた後に口を開いた。
「"アルゴスアイズ"に関しては、拠点変更の報告をしなくともこちらでいつでも活動できるよう取り計らおう」
「助かるよ。ありがとう」
頻繁にダンジョンに潜るようなら、本来は活動拠点を移す報告をしなきゃいけないからね。ギルドの規則も、まさか転移で通うなんて想定はしていない。
「気にするな。子爵、そして女神の使徒という確たる立場があるからな。別に難しいことはないさ。多少の融通は利く」
やばい。前世では権力を使ってやりたい放題やってる大人をあれだけ忌み嫌っていたというのに、今世では俺にそのルートが広く開かれているじゃないか。特別扱いされることの、なんと気持ち良いことか……。
……ふぅ。こうなっちゃったものは仕方ないよね。
せっかくだし『悪徳貴族』ルート……ちょっとだけ、右足の先っちょだけ踏み込んでみよっか。
「ね。カトレア」
「アンタがそっちに行こうとしたら、力ずくで止めてあげるから安心しなさい」
『ピュイ!』
──ペシペシ!
どうやらそのルートは、侵入禁止の一方通行だったらしい。
カトレアに「悪りィが、こっから先は一方通行だ。侵入は禁止ってなァ! 大人しく尻尾ォ巻きつつ泣いて無様に元の居場所へ引き返しやがれェ!!」と言われてしまった。
「そこまで言ってないでしょうが! いったいどこの誰がそんな酷いこと言うのよ!」
学園都市の第1位さんは、割といつもそんなこと言ってたよ。
そんな俺たちの横では、友人同士の会話が続いていた。
「じゃあ仕事が終わり次第、お前の家に行けばいいな?」
「ああ。アタイは今日はずっとウチにいるから、いつでもいい」
「ふっ、了解だ。私のオススメの酒と、何かつまみも持っていこう」
「相変わらず、気が利くじゃないか」
小気味よい会話のテンポから、2人の仲の良さが伺えるね。内容だけ見ればフグ◯くんを飲みに誘うア◯ゴさん的な感じがしてアレだが……。
「ボクは今日はお母ちゃんと一緒に飲むぞ!」
「エルルはそう言うと思ったよ。じゃあビルはこの母娘を見ててくれる?」
「うむ。了解だ」
この後リアラさんはギルド長を待ちながらの飲酒タイムだろうから、エルルはそっちに行きたがると思ったよ。
リアラさん、行動パターンが下のゴロツキどもと変わらない説。念の為、ビルを派遣しておく。
「カトレアとローグはどうする? ここまで来ておいてなんだけど、他にやりたい事があるなら、そっち優先してもええんやで」
「ルインを野放しにできる訳ないでしょ。どこでどんなイベントを拾ってくるか分かったものじゃないわ」
俺の扱いもそうだが、イベントを野良猫みたいに言わないでくだしゃんせ。
それに俺が拾ってる訳じゃなくて、イベントの方からぶつかってくるんだよ。ローグとセシリアに至っては、故意に物理的な体当たりまでしてきてるんだよ。
「オイラも一緒に行くぜ! この都市で1人になると、色々思い出しちまうからよ」
当のローグは悲しい理由で同行を申し出てきた。が、そこには触れないのが優しさというものだ。黙って一緒にいてあげよう。ルインの半分は優しさでできています。
「じゃあ3人で道場通いだ。今日はいけるところまでいっちゃおう」
『ピュンス!』
器用に「ふんす!」みたいに鳴くカグラだ。気合十分なようで大変結構!
「1日でどこまで上げられるのかしらね?」
「さすがにレベル1がレベル20の魔物でレベリングなんて聞いた事ねーしな」
2人とも、全く予想できないようだ。そういえばスノーボアってレベル何だったんだろうね。
「今回は『効率』をとことん突き詰めようと思う」
「この前も十分効率的だったと思うけど……」
カトレアはあれ以上の効率を想像できないようだ。
いつの間にか、世間話をやめてこちらを見ているリアラさんとフィアーナも含め、この場にいる全員に聞こえるよう高らかに告げる。
「私にいい考えがある」
リーパー先生。いま、会いにゆきます。
リーパー「こっちくんな」
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