第120話 『勇者』と『魔王』がいない訳がない
まぁ、いるよね……。
「それで、これ以上の調査は無理と判断して撤退した訳だ」
想像以上に聖エルディライト法国がヤベェ国だったことを再確認した。
他国の人間だとバレたことについては、こっちのミスかもしれないから置いておこう。
それより、法国民全員がもれなく殺しにきたってことは洗脳的ななにかかな? あとは情報を一斉に伝達するスキル、もしくは魔法の存在もあるか? ……う〜ん、今の話だけじゃよく分からん。
「それ以来、ずっと音沙汰がなかったんだが」
「キメラが現れた、と」
「そうなる。あれが故意的なものか、事故なのかも分かってねぇな」
ってことは、本当に情報はほとんど無いんだな。……って、待てよ?
「リーン様は神託で、何か情報をくれたりしないんですか?」
「呼びましたか?」
『ピュイ?』
ヒョコッと、セシリアとカグラが会話に入ってきた。……ごめん、完全に忘れてたわ。
カグラが俺を見つめてジタバタと何かをアピールしているので、ヒョイっと俺の頭の上に運んであげる。……うん、正解だったようだ。めっちゃ寛いでる。
「それで、神託って言ってませんでしたか?」
「そうそう。リーン様って、法国について何か言ってないの?」
「あ、そういえば」
言ってたんかい。言えよ。前も教皇からの伝言忘れてたろ。
「信仰心がない場所は女神アイでもほとんど見えないらしく、『何かあったら我が使徒ルインよ、頼みますね』と仰られてました」
「ふざけんな!」
頼みますね、じゃねーんだわ。
「ブホッ!」
『ピュフッ!』
情報ゼロの上に丸投げかよ! 前世勤めてた会社でもそんな無茶振りされたことねーぞ! 教皇とカグラが吹き出しちゃってるじゃん。……お前ら笑うなっ!(ヤン◯ミ)
「まあまあルイン。一応予想してることはあるんだが、聞くか?」
「……うす」
「ハッハッハ! 不貞腐れんなって」
ヘソを曲げた俺を宥めながら、教皇は軽い感じでサラッと言葉を続ける。
「あくまで予想だが、『魔王』に関係する何かがあるんじゃねぇか?」
「…………ついに出てきちゃったかぁ」
さっき勇者とか言ってましたもんね。魔王もいるよねそりゃ。転生者ならその可能性を真っ先に考えるわ。
だって勇者がピンで現れて、特に偉業を成し遂げた訳でもないのに建国しました、とかじゃ勇者と呼ばれる意味がわかんないもん。
城かどこかに当時の記録とか残ってそうなもんだけどなぁ。この言い方だと教会には残ってないか。
ちなみに、この異世界ファンタジー世界に転生した当初「俺、勇者なんじゃね?」とか、とても香ばしい事を考えたりしたことが、ありまぁす!
ここまで出揃ってくると、俺にも予想できることはある。予想というか、物語とかでありそうな流れ。
『勇者』は転生者か転移者で、当時魔王(仮)を倒し切ることができなくて現在の法国の場所に封印した。
"聖壁"も、もしかしたら勇者たちが作った物なんじゃないかな。
そしてその封印を監視するために、勇者は現法国の隣にルミウム王国を建国。
「って感じじゃないですかね? なんで中に人類がいるのかとかは分かりませんが」
「どうせ生き残った魔族やらが、どっかから攫ってきたとかじゃねぇか?」
「うわぁ……。ありそうっすね」
ここでふと頭に浮かんだ、浮かんでしまった事が1つ。
「まさか……『勇者召喚』とか、どこかがやらかしたりしませんよね?」
「「「…………」」」
俺の質問には、この場の誰も答えてはくれなかった。
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法国にどう対応するかは俺たちで話し合っても、これ以上どうにもならないので教皇から王様に伝えてもらって、上の人たちにも考えてもらう事にした。
使徒だからって、なんでもかんでも俺が抱え込むのは違うからね。
現状、個人では動きようがないというのもあるが……。
「思ったより、時間経っちゃいましたね」
「お、そうだな」
「お腹が空いてきました!」
『ピュイ!』
そろそろ解散の空気が漂い出しているが、最後にこれを聞いておきたい。
「先輩、カグラがなんでハーピーの巣なんかにいたのか分かります?」
「悪りぃが、そればっかりはマジで全然見当もつかねぇわ」
「私もです」
ですよねー。
「ま、いいや。いつかお前の親も探しに行こうな」
『ピュイ〜ッ!』
──ペシペシペシ
嬉しそうでなにより。
その光景を微笑ましく見つめていたヨハン教皇が、思い出したように言う。
「そういや、叙爵式は俺も参加するからよろしくな」
「あ、私も参加しますよ!」
セシリアも片手を上げてピョンピョンとアピールを始めた。元気だなぁ……。
「そういや2人とも、リーン教会の重鎮ですもんね。当日はよろしくお願いします」
「つっても、俺とセシリアは見てるだけだぞ」
「見てますね!」
「いてくれるだけでありがたいのは確かだけど……その言い方よ」
教皇と聖女が認めてますよって言ってるようなものだからね。ありがたいのはたしかだけど、ありがたみを感じないのはなんでだろうね。普段の軽さ故か。
「式の流れは大丈夫か?」
「え? 王様の前で片膝ついて、なんか聞かれたら『ありがたき幸せ』でいいのでは?」
「……すげぇ。だいたい合ってるはずなのに、不安しかねぇわ」
失礼な。ちゃんとやりますって。……あとでカトレアにお願いして、変なとこはないか確認してもらおう。
「それより、この後はどうする? メシ食ってくか?」
なんて魅力的な! でもなぁ……。
「宿でみんな待ってるんですよね。……多分」
「なんで自信なさげなんだよ。まぁいいや、セシリアはどうする?」
「私は食べていきます!」
なんか最近、セシリアまで腹ペコキャラになりそうな気がしてきた。大丈夫かな。
「じゃあ後でセシリア迎えにきますね」
「悪りぃな」
「ルインさん、すみません」
申し訳なさそうな2人に、気にするなと伝えて宿へ転移する。
……
…………
………………
宿の入り口に転移して、扉を開けてスタッフから鍵を受け取りながら、今日の出来事を振り返る。
だいぶ情報過多だった気がするが、とても有意義だったね。早速この後、みんなにも共有して意見を聞いてみよう。
さて、自分の部屋に入ったところで立ち止まって、全力で祈りを捧げる事にする。
──もし勇者召喚が起こったら、魔王的なイベントがスタートしてしまうと思うので、どうか勘弁してください!
……絶対いつかは起こるんだろうなと半ば諦観しながら祈る俺だった。
異世界ファンタジー王道の勇者と魔王についてチラッと触れました。真実がどうなのかはまだ分かりません。あくまで彼らの予想です。
なお、勇者と女神の使徒は同じく女神案件ですが、色々な部分で違いがあります。
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