第115話 ウィル兄さんを祝おう!
父マッシュと兄ウィルが帰宅したようです。
「へぇ! おめでとうルイン。セレナ様とソフィちゃん、弟をよろしくね」
「まさかお前が、2人も嫁さんをもらうとはなぁ……」
畑の世話がひと段落した2人が家に帰ってきたので、母さんに話したのと同じことを伝えると、そんなお言葉を頂戴した。
にしても……。
「2人とも、叙爵については興味なさそうだね」
びっくりするくらい完全にスルーされてしまったので、こっちから振ってみる。もっと驚いてくれてもいいんだよ? 君らの息子、弟が貴族ぞ?
兄のウィルは少し困ったような顔をして言う。
「そう言われてもね。農民には遠い世界の話すぎて、正直ピンとこないんだよ」
「あ〜、そういう……納得したよ」
俺は前世で異世界ファンタジーに散々触れていたから、すんなり受け入れることが出来たけど、農民なら兄さんの感覚が普通なのだ。だって、生きてる内に貴族に会う機会なんて、ほぼ無いもん。
俺が納得していると、おもむろに父マッシュが肩を組んでくる。
「とにかく! お前が元気そうで安心したぞ。……いやまぁ、元気じゃないお前を想像できないが」
「元気があればなんでもできるからね」
「なんだそれ?」
有名な人の名言である。
「それより僕たちにルインの話を聞かせてよ。村の外で、色々見てきたんでしょ?」
兄さんが、料理の支度をしている女性陣を横目にそう言ってきた。待っている間の雑談がわりに、ということだろう。
「そうだね。それじゃあ、この村を出たすぐ後のことから話そうか」
「いいね」
「俺も楽しみだ」
父と兄と俺。
この組み合わせも懐かしいなぁ、と何度目か分からない郷愁の念に駆られながらあの日のことを語り出すのだった。
あれは今から36万…………いや、1万4千年前だったか……。
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「それで試験の後にカトレア達とパーティーを組んだんだよ」
「以前、村に来た子達だよね? なるほど。そういう出会いだったんだね」
「あの熊獣人を最初に見た時、一瞬ビビっちまったのを思い出したぜ」
と、Cランク昇級試験後のあたりまで話したところで、女性陣が料理を持って戻ってきた。
「お待たせ〜。ルインのお嫁さん達が手伝ってくれて、お母さん助かっちゃったわ〜。それどころか、食材に着火の魔道具まで頂いてしまって……本当にありがとうね〜」
「いえいえ。お気になさらないでください」
「そうですっ! ルイン君の家族に会うからって、うちのお母さんがいっぱい持たせてくれたので!」
早速セレナが贈った着火の魔道具を使ったみたいだ。それに、美味しそうな匂いが漂うこの料理も、ソフィの言ったように『渡り鳥の止まり木』がおすそ分けしてくれた食材を使っている。
言葉ではお礼を言ったけど、今度ちゃんとお返しをしないとね。
それじゃあ、料理と飲み物の用意ができたところで始めよう。
僭越ながら音頭はこの俺、弟であるルインが務めさせていただきます!
「改めまして。遅くなっちゃったけど、ウィル兄さん16歳おめでとう!」
『おめでとう!』
「それでは、乾杯!」
『かんぱ〜い』
さあ! 宴の始まりだ!
※ ※ ※
「それじゃあ兄さん、プレゼントを受け取っておくれ」
「う、うん。その顔をしてる時のルインに、あまりいい思い出がないんだけど……ありがたく頂くね」
軽く料理と飲み物を味わって良い頃合いになったところで、いよいよ準備してきたプレゼントを渡す時が来たれり。
みんなが固唾を飲んで見守る中、今まさに贈呈式が行われんとしていた。
「まずはこれだよ」
手始めに『祝福のミサンガ』を、効能の説明をしながら渡す。すると、受け取りながら兄ウィルはあからさまにホッとした。
「良かった、普通だ。ありがとうルイン!」
「どういたしまして。でも実はこれ、効能がいいから家族みんなに贈る事にしたんだ」
「うん。それがいいよ」
安心するのは、いささか早くないかねマイブラザー。俺のターンはまだ終わっちゃいないぜ! ドロー!
「だから主役の兄さんには、当然プラスアルファのとっておきをご用意しました!」
そう言ってから、俺は『渡り鳥の止まり木』の自室に転移して一瞬の後に舞い戻ってくる。そして、とってきたその"ブツ"をウィル兄さんに手渡す。
「これは……クワ?」
その通り。こっそりとゴルドフに作成依頼していた、黒鋼であつらえられた攻撃力に全振りの『農作業用アサルトクワ』である。
なんかのRPGで、終盤のモンスターと互角に戦っている村人達がいたのを思い出して、飲んだくれドワーフに「なる早で」とお願いした。
最初は渋っていたゴルドフだったが、ちょっと酒を目の前にチラつかせてやれば。後はもうこっちのラジコン状態よ。へっ、ちょろいぜ。
これでウィル兄さんも、村に仇なす魔物を余裕のよっちゃんで処せるようになるに違いない。
やたら攻撃力が高そうな黒いクワを、引き攣った顔で眺める兄に告げる。
「兄さん。お前はシーズ村の柱になれ」
やがて、諦めたようにため息をひとつ吐いた兄さんが、苦笑と共に口を開いた。
「ルイン、今度は何に影響されたの?」
中学生がテニヌするやつ!
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「今日もルイン君、楽しそうだなぁ」
「ソフィはいつもあんなに楽しそうなルイン様を近くで見られるのですね。……羨ましいです」
ソフィとセレナが話す横で、グレースは首を傾げている。彼女にはどこが羨ましいのか理解できないらしい。
そんな3人をニコニコ眺めているのがルインの母セラである。
「いい子達みたいで良かったわぁ。仲良くできそうね〜!」
上機嫌なその言葉は、賑やかな室内にふんわりと溶けていった。
ライフ◯ッドの村人は衝撃的でしたね。
あと、テニヌは誤字じゃありません。
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