第112話 先輩と後輩
第8章エピローグです!
「それにしても随分可愛らしくなっちまったなぁ、塁……今はルインだっけ? あんま変わんねぇから、呼び間違えなくていいな」
「先輩の名前こそ、"ヨハン"ってなんすか。似合わなすぎですよ。あと、年齢おかしくないすか? 先輩死んだの、俺が死ぬ4年くらい前っすよ」
場所を応接室へと移し、教皇と化した先輩と情報交換をする。
その中で、単純計算なら先輩は16歳とかになるはずなのに、どう見ても30代後半にしか見えなかったので聞いてみた。……いや、その若さで教皇になってるのも異常な気がするが。
なお、カトレアとセシリアは事情を説明したところ「積もる話もあるだろうから」と席を外し、教会内のセシリアの部屋で女子会をしている。
「余計なお世話だ。歳のことなら、この世界に転生する時に女神から聞いたんだが、地球とは時間の流れが違うらしいぜ」
「へ〜。またテンプレ設定な…………ん? 先輩、女神リーンに会ったんですか?」
ちょっと聞き逃せない情報ですねぇ。
「会ったぞ。そこで、いつかお前もこの世界に来るって聞いたから、俺は転生を受け入れた訳だしな」
「俺、これまで1度も会ってないんだけど!?」
どういう事だよ! 聞きたい事いっぱいあるのに! 俺も1回くらい会いたかったよ。
「そうなのか? …………あ〜。うん、なんか色々あんだろ。気にすんなよ」
「え……なにそれ。思わせぶりなの、良くないですって。何か知ってるなら教えてくださいよ」
嫌な予感しかしないが、聞かないわけにはいかない。嫌な予感しかしないが(大事な事なので2回言いました)。
「はぁ…………。一目惚れらしいぞ」
「は?」
「だから、一目惚れだよ」
「誰が米の話しろって言ったんすか。こっちは真面目に聞いてるんですけど」
あの"切れたナイフ"みたいな先輩が、こんな空気読めないジョークを俺に言ってくる日が来るなんて。時の流れはこうも人を変えてしまうのか……。
思い出したら米食いたくなってきた。この世界にもあるのかな。
「こっちも米の話なんかしてねぇよ! 女神が! お前に! 一目惚れ! したんだとよ」
「………………」
「理解したくねぇのは分かるが、飲み込め」
「……ハッ!」
あまりにもあんまりな事実を突きつけられ、思わず魂が召されそうになってしまう。しかし、ここで召されたら渦中の女神の元へと運ばれてしまう危険性が大なので、気合いで踏みとどまった。ふんぬらば!
やっぱ、会いたくないです(前言撤回)。
「あくまで予想だが、土壇場になって直接話すのが恥ずかしくなったとか、そんなところじゃねぇかな」
「えぇ……」
そんなしょうもない理由で、説明書無しでここまで人生やらされたんかい。
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以下、先輩が知ってる情報。
なんでも数百年に1度、地球の死者の魂をこの異世界に転生させて『女神の使徒』にしているらしい。その理由までは先輩も知らないそうだ。
多分「地球からの転生者の魔力的なサムシングを、この世界に入れることでエニシング」みたいなテンプレだろうなぁ、どうせ。
それでちょうど今がその周期なんだって。女神リーンが地球の神々と下界をチラチラ覗きながら相談していたところ、偶然目に入った俺に心を奪われてしまったのだそうな。
なんてはた迷惑な話なんだろう。普通、神の一瞥を受けたら嬉しいはずなのに、そんな気持ちがこれっぽっちも湧いてこない。不思議だね。
すぐさま女神リーンが、生命を司る神に俺の寿命を聞いてみたところ、なんと数年以内にポックリ死ぬことが判明(!?)。この瞬間、めでたく俺の異世界行きが確定した。
ここまではいい。いや、良くはないけど一旦置いておこう。最も気になっていること、それは……。
「なんで先輩まで?」
ということだろう。しかも、ちゃっかり教皇になってるし。ヨハンだし。
「あぁ。それはな────」
ある日、俺の様子を確認しにきた女神リーンは、悲しみの向こうへと辿り着けそうなほど落ち込んでいる俺を見てしまったらしい。ナイスボート。
スーパー女神調査の結果、原因は尊敬する先輩の死。それを知って心を痛めた女神リーンは地球の最高神に直談判し、「貸しイチな」という言葉と共に先輩の魂を譲り受け、いつか再会させてあげようと転生させたそうだ。
この点に関しては、心の底から感謝してます。『曇らせ』の属性があなたに無くて本当に良かった。ありがとう、リーン様。
一応その際、先輩にどうするかの確認をとったが「塁に会えるって? マジかよ! それなら行く行くドイツ、ワイマール憲法!」と二つ返事。ったく、この先輩は……やれやれだぜ。←嬉しい。
「そんなこと言った覚えはねぇが、大体合ってる」
なお、女神リーンから説明を受けている最中、何かにつけて俺のことを語り出す彼女の目は、大分キマっていたらしい。結局それくらいしか聞くことも出来ずに転生へのタイムリミットが来て、地上に放り出されてしまったとさ。
ちなみに、先輩は王都の平民スタートだったらしい。
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「そっから頑張って、この地位にまで上り詰めたわけよ。お前が女神の使徒ってんなら、その方が都合が良いだろう?」
「先輩……っ!」
なんて後輩思いなんだ。またちょっと涙が出そうになったじゃないか。
色々と聞くべきことはまだまだあるが、ひとまず今日のところはここまでにしておこう。怒涛のように押し寄せる事実を、まだ上手く処理しきれていないからね。ちょっとでいいから時間が欲しい。
────それに、これからはいつでも話すことが出来るのだから。
「まぁ女神を一言で言うなら、『シャイな追っかけ』ってとこか? カッカッカ!」
「普通に怖いんですけど。婚約者達に何かされたりとか、しませんよね?」
心配はそこに尽きる。もし、周りの人間に手を出すようなら、俺は女神とラグナロクしなきゃいけなくなる。
「お前、その歳でもう婚約なんかしてんのかよ。まぁ、今はいいか。……その心配はいらねぇと思うぞ」
「どうしてっすか?」
「あれでも女神だぞ? 下界に直接手ぇ出して、自分から秩序を崩すような真似はしねぇさ」
「なるほど」
そりゃそうだ。どうやら、ひとまず世界の危機は回避されたようだ。
「じゃあ先輩、そろそろカトレアとセシリアのところに行きますか」
「だな。待ちくたびれてるかもしれねぇな。あの聖女、じっとしてらんねぇ性格だしよ」
教皇の私室を後にしようとする俺達。部屋を出る直前で、ふと気になって聞いてみる。
「そういえば、転生者ってなんか特殊なスキル持ってるっぽいですよね?」
ユニウス王子の口ぶりから、これはまず間違いないだろう。
「そうだな」
「先輩のはどんなのだったんですか? 言いたくないなら別に言わなくてもいいですけど」
そこで先輩……ヨハン教皇はニヤッと片頬だけを釣り上げて、こう言った。
「"妖精さん"の声が聞こえるだけの、しょぼいスキルさ」
俺にはとても、そのスキルがしょぼいものだとは思えなかった。何かしら、ずっこい効果があるスキルなんだろうなぁ。
多分、彼がこの若さで教皇まで上り詰めることができたのも、そのスキルが関係している。
とにかく、これで王都にきた目的の1つは達成した。あとは……。
「叙爵式まで何して過ごそうかなぁ」
「ま、ゆっくり考えな。それよりおら、行くぞ"ルイン"」
「待ってくださいよ。相変わらずせっかちだなぁ、"ヨハン教皇"」
──おら、さっさと帰んぞ塁。
──今行きますって。先輩、せっかちってよく言われません?
いつか交わした会話。
あの日の俺達が、世界を超えて今ここにいる。
教皇の後に続きながら、俺はこれからの王都での生活に胸を高鳴らせるのであった。
お読みいただきありがとうございます!
第8章はここまでとなります。
ルインは武元う◯かくらい英語ができません。彼が英語を使ったら、だいたい適当なことを言ってると思ってください。
あと、再会の喜びで今回は(も?)テンションがバグってます。
さて、第9章は叙爵式までの間に、王都で色々する章となります。
王都を中心に、あっち行ったりこっち行ったりと相変わらず落ち着きのないルインですが、よろしければお付き合いくださいませ。
最後になりますが、
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