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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第8章 王都で"彼"を待つものは

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第111話 王都で"彼"を待つものは


引き続き、リーン教会本部です。


「結構待たされるね」

「ちょうど忙しかったのかもしれませんよ」

「むしろ私はアポをとっていなかったことに驚いたわよ。よくあんなに快く迎えてくれたわね」


 俺たちが教会を訪れ、この部屋に案内されてから1時間ほどが経過した。いまだに何の音沙汰もないので、ついぼやきが口から出てしまう。


 それなら、どうしてアポを取らなかったのかって? ……コレガワカラナイ。


 あとセシリアの言う通り、今は忙しいタイミングだったのかもしれないね。



「そういえば……ちゃんと聞いたことなかったけど、教皇ってどんな人なの?」

「なかなかファンキーな人ですよ」


 教皇の人柄を表す言葉で"ファンキー"って初めて聞いたかもしれない。でも、この聖女ちゃんも大概だしなぁ。


「セシリアよりも?」

「失礼な。そんなこと言うと、聖女の権力を使って無理やり婚約しちゃいますよ」

「聖女が家庭崩壊を目論んでいる件」


 せっかく奇跡的(?)に揉めずに2人との婚約話がまとまったのに、波風立てようとすんなや。


「ほら、見てみ。カトレアも怖い顔してるじゃん」

「え?」


 ソフィの幸せを願うカトレアが、完璧な能面になっている。いや、怖い怖い!


「セシリア。余計なことはしないでちょうだいね?」

「ひえっ……は、はい」


 圧倒的な『覇気』を浴びせられ、すっかり萎縮してしまった聖女セシリア。それを見て、カトレアは普段の顔に”すんっ”と戻った。その早さはまるで一種の顔芸のようだ。


 芸達者だなぁ。水魔法も使えるし、そのうち『花鳥風月』とか言って扇子から水を噴き上げる宴会芸とか、やってくれないかな。髪の色も若干似てるし。……ハッ!


 ──キッ! 睨まれる。

 ──サッ! 目を逸らす。


 無言の攻防。何とか逃げ切ったぜ。



 と、その時。


 ──コンコンコン


 何とも言えない空気になってしまっている室内に、ノックの音が響き渡った。ナイスタイミング!


 部屋に入ってきたシスターは、特に部屋の空気を気にした様子もなく告げる。


「失礼します。準備ができましたので、ご案内いたします」



 やっとご対面か。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




「違うんかい」



 案内された先は……なぜか食堂。すいませ〜ん、ルインですけど〜、ま〜だ時間かかりそうですかね〜?


 とりあえず席には着いたものの、状況が理解できていない俺は、ここまで案内してくれたシスターに直接聞くことにした。


「いつ教皇に会えるんですかね……てか、なんで食堂?」

「教皇様からは『話は飯を食ってからだ。いいから黙って食っとけ』と言付かっております」

「なるほど。分からん」


 教皇の意図がこれっぽっちも読めない。何を考えているのか。そんな俺を見かねて、2人から声がかかる。


「食べれば会えるのよね? なら、大人しく従いましょう。別に焦る必要もないんだし」

「そうですよ! 教皇様の料理は美味しいんですよっ!」

「……確かに。待たされすぎて、ちょっぴりカリカリしちゃってたよ。ごめんね」


 反省反省。カトレアの言う通り、この後、何か予定がある訳でもないんだ。焦る必要はない。

 元はと言えば俺が横着したからだしね。ゆっくり教皇の料理を…………ん? 教皇の料理? 



「待った。え、今から食べる料理って、教皇自ら作ってるの?」


 気になったので、案内のシスターに聞いてみると。


「ええ。その通りです。まもなく運ばれてきますよ。あっ、来ましたね」


 ならやはり、先に俺達と会ってから食事でもよかったのでは。と思わないでもなかったが、ここまできたのだ。もう大人しく流れに身を任せよう。



 運ばれてきた料理が目の前に並べられていく。あれ? 懐かしい匂い。それに……これは、肉野菜炒め?




 思考が停止する。




 ──お疲れっス、先輩! またアレ作ってくださいよ。肉野菜炒め。

 ──お前なぁ。せっかくの賄いだぞ。そんな雑なもんでいいのか? 俺は楽でいいけどよ。

 ──そうなんスけどね。働いた後は、ああいう男メシが食いたくなるんスよ。




 遥か彼方の記憶がフラッシュバックした。……視界が滲む。


「ルイン?」

「ルインさん?」


 俺を呼ぶ2人の声も、どこか遠くに聞こえる。今はただ、目の前の料理しか目に入らない。


「……いただきます」


 たったひと口。


 俺が状況を理解するには、それだけで充分だった。ずっと食べたかった味。よくこんな異世界で再現したものだ。相当、試行錯誤を繰り返したのだろう。


 でも今は、そんなことより。



「ゔまい……っ!」


 何度願ったことか。


 二度と味わえないと諦めていたモノが、確かにここにある。


「ひっぐ……! ゔまいっず……先輩……っ!! ……グスッ!」


 ああ、ダメだ。"あの日"は泣けなかったのに、今は涙が止まらない。


 一心不乱に口に運ぶ。流れる涙にも構わず……。

 気を遣って、黙ってくれているカトレアとセシリアに、心の中で感謝した。




 やがて。


「ごちそうさまでした……っ!」


 涙がようやく止まった頃、俺は料理を平らげた。


 そして、まるでそのタイミングを見計らっていたかのように、俺に声がかけられる。


「俺からの『サプライズプレゼント』は気に入ってもらえたか? ……塁」

「っ! やっぱ賄いは、これが一番好きっすわ。また作ってくださいね。……先輩」


 返事をしながら声が聞こえてきた方を見ると、頭にコック帽をかぶった欧風のイケオジが立っていた。


 見た目は全くの別人になってしまったけれど、間違えるはずがない。この溢れ出るヤンキー感は俺に料理のイロハを教えてくれた先輩だ。【視て盗む】の、そもそものルーツもこの人のような気がする。



「たまにはお前が作れや。はははっ! 相変わらずみたいで安心したぜ」

「俺もっす」


 どちらともなく近づいて握手を交わす。その手からは生きている人間の"熱"を感じる。それが今は、なによりも嬉しかった。


「久しぶりだな」

「先輩も…………なんか、やたら老けてません?」

「ぶっ飛ばすぞ」


 こうして俺は、かつてお世話になった『先輩』と遥か遠い異世界の地で再会を果たしたのだった。


という訳で、『間話 その転生者は再会を待ち望む』は教皇視点でした。



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