第11話 騒動後のあれこれ
その夜は宴会が開かれた。
しょっちゅう宴会してる気がするが、そこは気にしてはいけない。
「お前と約束したもんな。あいつの肉で宴会するって」
アルが指差す村の広場では、スノーボアの肉料理が豪快に振る舞われている。
異世界ものに造詣の深い諸兄ならとっくにご存じであろう。
この世界も例に漏れず、高ランクの魔物肉ほど美味な傾向にあるのだ。
なので、極上の馳走を前に野生を取り戻すことに成功した、飢えた村人たちによって絶賛奪い合いが発生中。
肉を口に咥えながら奪い合う狼ってあんな感じなのかな。
「……そうですね」
現在、俺は背中をアルマジロみたいに丸めながら、野菜ジュースをちびちび飲んでいる。
「はっはっは! とてもスノーボア相手に、真っ向からやり合った奴とは思えないな」
「だいぶセラさんのお説教が効いたみたいね。ふふっ」
そう。案の定、俺は母さんから叱られた。涙で顔をくしゃくしゃにしながらの優しく諭すようなお説教は、魂に響いた。
転生した直後やスノーボアを前にした時よりも、よほど感情が揺さぶられた。
でも、しゅんとする俺に向かって最後。
「ありがとう、ルイン。あなたがいなかったら、きっとみんな助からなかったわ」
と笑顔で言って抱きしめてくれたのだ。それだけで、あの時頑張ってよかったと心から思えたよ。
……その直前のお説教ダメージがデカすぎて、いまだに尾を引いているが。
「わしも見たかったのぅ。ボス猪と戦うルイン坊の勇姿を」
父さんと一緒にこちらへやってきて、開口一番にそう語るガルフは言葉通り残念そうだ。
あの時ガルフと父さんたちは、こちらの戦いが終わってすぐに駆けつけた。向かっている最中、スノーボアを倒した際の歓喜の叫びがバッチリ聞こえたらしい。
向こうでの戦いは特に語るようなことはない。
ボアが畑の作物を夢中になって食べている隙に、ガルフの範囲魔法で奇襲。弱ったところを全員でフルボッコする形であっけなく壊滅した。
囮にされた挙句、ガルフの魔法でさらに荒らされてしまった畑の持ち主、ダニエルおじさんは宴会が始まってからずっと、隅っこで静かに泣いている。
うまい肉を食って、明日からは元気になってほしいところである。
「マッシュ殿はご子息が魔物と戦ったと聞いても、特に驚いておらんかったのぅ」
「ははっ。俺はね、こいつはいつかやると思ってました」
「言い方ァ!」
宴の夜は更けていく。
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翌朝、村長宅にて
「これで依頼は完了です。お疲れ様でした」
「いや、こちらこそ村人を危険に晒してしまって、すまなかったな」
村長と"フェザーテイル"を代表してアルの話し合いが開かれている。
「とんでもない。あなた方は、イレギュラーな状況でも決して村を見捨てなかった。謝ることなんか何もありませんよ」
「そう言ってもらえると助かる」
穏便に話はまとまりそうだ。村長は依頼完了証明書にサインした後、アルに渡しながら尋ねる。
「いつ村を発たれるんですか?」
「この後、野暮用を済ませてからの予定だ。特に時間は決まってないから、見送りは必要ないぞ」
「わかりました。道中お気をつけて」
「ありがとよ。縁があったらまた会おう。じゃあな」
そう言い残し、アルは村長宅を後にした。
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「……火力が足りないな」
秘密基地にて。
スノーボア戦の時にも思ったことを、木剣で素振りをしながら呟く。
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ルイン
レベル6
魔法 :【点火】【氷の盾】
スキル:【視て盗む】【魔力操作】【突進】
称号:転生者
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レベルが5も上がったと見るべきか。5しか上がらなかったと見るべきか……。
「う〜ん、わからん。でも確かなことは」
レベルアップのおかげだろう。昨日までとは動きやすさが全然違う。
身体が軽い。こんな気持ちで訓練するのは初めてだ。
「もうなにも怖くない」
……いや、ふざけてる場合じゃないわ。火力が足りないんだって。
なにげなく手持ちの魔法とスキルを見て、つい口から出てしまったのが先の発言である。
「1撃で魔物に致命傷を与えられる手段が欲しい」
現状、短剣を突き出して【突進】を繰り出す、ヒャッハーな蛮族スタイルが最高火力となる。これは強さ的にも見た目的にもいただけない。
次にまた強力な魔物と戦う時のために『確実に殺し切れる手段』が必要だ。
いつまでも、目を狙うとかの小細工が通用するわけがないからね。
「次の目標は火力の確保だな」
「へぇ、アテはあるのか?」
そこに割って入る声が聞こえた。そちらを見ると、旅支度を整えた"フェザーテイル"の3人が。
「みなさん! 昨日の今日で、もう行っちゃうんですか?」
え、まじで行く気か? まだ冒険者のことについてとか、ほとんど何も聞いてないんだけど。
「おう。ここは良い村だが、早くホームに帰ってゆっくりしたい。ギルドに報告もしなくちゃ行けないしな」
「そうなんですね……」
「で、さっきの質問の続きだ。火力の確保だっけか。アテはあるのか?」
やけにグイグイくるな。なんだ?
「えーと、特にあるわけじゃないですけど……」
そこへテレーゼとガルフも会話に入ってきた。
「こら。誘導尋問みたいなのはやめなさいよ。聞くならハッキリしなさい」
「うっ…すまん」
「やれやれ。のぅルイン。お主……『他者の技を真似する』といったことが出来るじゃろう?」
ガルフはアルに呆れながらも、ズバッと聞いてくる。
あ、なんだ。そのことか。
「はい。できますよ」
俺はあっさり認めた。




