第103話 これぞ冒険者のあるべき姿よ!
この世界の冒険者は楽しそうですね!
例によって、冒険者ギルドのスイングドアを景気良くパッタンパッタンさせて入っていく。
すると、突然声をかけられた。
「おっ、ローグじゃねぇか」
「ローグ君、こんにちはー」
「ようローグ! また飯食いに行こうな!」
ローグが。…………大人気である。
この子、コミュ力がカンストしてるんじゃなかろうか。いつの間にか、友達がめちゃくちゃ増えていた模様。
声をかけてきた冒険者達に、ローグが律儀に答えているのを尻目にカウンターへ向かう。決して悔しかったわけではない。決してね。勘違いだけはしないようにね。
悔しいわけないじゃん。だって俺も友達たくさんいるからね。アルとか。あとはマルクス……はちょっと違うか。フリードは……あいつは俺が少しふざけただけで殺そうとしてくるから、これも違うか。
おや? おやや?
まさか……そんなね。こんな社交的で、とにかく明るいルインに友達が少ないなんて、そんなまさかね。………え、マ? そマ!?
「どうしたルイン。なんで世の中に絶望したような顔してんの?」
「ヒエイ! 心の友よ!」
「おわっ! ビックリした〜。なんだよ急に……」
よかった。俺にも友達がちゃんといた。ヒエイにダルトン、エリックがいるじゃないか。……ダルトンとエリックはなぜか目を逸らしてるけど。シャイなのかな?
「いや、なんでもない。"レイブン"は何してんの?」
「仕事終わりだよ。今からそこで一杯やるとこだ」
「へぇ、いいね。俺もここで軽く食べて行こうかな。おーい、ローグ!」
"レイブン"がギルド併設の酒場で一杯引っ掛けていくらしいので、せっかくだからローグも誘ってご一緒しよう。早速、呼んでみる。
「お? なんだルイン」
俺の声に反応したローグが、こちらにトコトコ歩いてやってきた。────後ろに友達の軍勢をゾロゾロと引き連れて。
……そうやって自然に『自分友達たくさんいまっせ』アピールしてくるの、とてもよくない事だと思う。
「どうしたんだ?」
「……うん。"レイブン"がここの酒場でゴクゴクしていくらしいから、せっかくなら俺たちもここで何か食べてかない?」
「おう! ここのメシも美味いからな! 俺は全然構わねーぜ!」
ローグが了承の言葉を発すると同時に、後ろの大きいお友達も沸き立った。
「じゃあ俺たちも今日はここで食って行こうぜ!」
「そうね。席を確保しておくわ」
「ちょっとうちのメンバーも呼んでくるわ!」
あっという間に慌ただしくなるギルド内。呆気に取られている俺に、ヒエイが語りかけてくる。
「……ははっ。やっぱ今日は他で食べようかなぁ、なんて」
大丈夫だって。安心しろよヒエイ。
……お前は絶対に逃さないからさぁ!
※ ※ ※
あっちはローグに任せて、手続きをしにカウンターへ。
「お久しぶりですね。ルインさん」
「アンナさん。なんかもう随分と会っていない気がするよ」
垂れ目とポニーテールがチャームポイント、お馴染みの受付嬢アンナさんだ。たった一言話しただけで安心感を与えてくれるあたり、さすがである。
「お話はつい先ほど、ダグラム伯爵家の使いの方がいらっしゃって既に聞いてますよ。王都までの護衛依頼の件ですよね」
相変わらず話が早くて助かるね。
「そうそう。必要な手続きとかあるなら、今のうちにしておこうと思って来たんだけど」
「こちらで全てやりますので、出来上がった依頼書の確認だけお願いします」
「オッケー」
アンナさんが何やらチャカチャカ作業しているので、ぼ〜っっと待っていると横から声をかけられた。
「あれ、ルインじゃない! 久しぶりー」
「お、誰かと思えばビアンカか。スタンピード前のバーベキュー以来だっけ?」
「多分そう! 奇遇だねー」
そこにいたのは、俺たちと同じCランクパーティーの"リーナの福音"の面々だった。……それにしても、今日は知り合いに会いすぎである。
彼女達も依頼帰りのようで、隣のカウンターで完了手続きをしながら俺との雑談に興じる。
「そういやビアンカ以外のメンバーと話すのって初めてだっけ? 改めてよろしくね」
アイサツは大事。古事記にもそう書いてある。
「よろしく。ほら、バルガスも挨拶!」
「わ、分かってるって。よろしく、ルイン」
この気が強い方は、そばかすがチャームポイントの弓士メアリ。尻に敷かれてる方が"リーナの福音"唯一の男性メンバーの魔術師バルガスだ。以前俺が予想した通り、この2人は恋人同士らしい。
「私もルインさんのお話はリーナ姉様から聞いています。よろしくお願いしますね」
最後に赤髪の三つ編みで柔らかい物腰の女僧侶がマリーである。なんだかんだで今まで絡みが無かったな。話してみると、あの孤児院出身なだけあって全員素直な良い子だった(上から目線だが、俺が一番年下である)。
「あ、そうだ。この後"レイブン"とその他大勢でご飯食べるんだけど"リーナの福音"もどう?」
「楽しそう! ウチは参加するー。みんなはどうする?」
ビアンカが確認すると、全員参加の意思を表明した。いいね。楽しくなってきた。そんな、ちょっとワクワクし始めた俺にアンナさんからお声がかかる。
「お待たせしました。ルインさん、こちらの依頼書の確認をお願いします」
「あ、了解」
手渡された依頼書をチェックする。…………うん、問題は特になさそうだね。ささっとサインをして依頼の受注は完了だ。
アンナさんに依頼書を渡しながら、一応誘ってみることにした。さっきの話も聞こえてただろうしね。
「アンナさんは、この後はまだ仕事? もう上がりなら参加してかない?」
「あら、よろしいのですか? でしたら、もうすぐ上がりの他の子も誘って構いませんか?」
「もちのろん」
またまた参加者が増えた。──これ大丈夫かな。キャパ的な意味で。
……
…………
………………
俺の心配をよそに、参加者は続々と酒場に集結していく。案の定、席が足りなくなったので、ギルドの会議室やら倉庫からテーブルや椅子を引っ張り出して、無理やり増設した。
そして宴は始まった。開会の言葉は、我らがギルド長ルーカスが務める。ご存知のように、髪は茶、筋肉モリモリマッチョマンのHENTAIだ。
「なんでこんな騒ぎになったのかはよく分からんが、せっかくの宴会だ! どうせならとことん楽しんでいけ! ただし、人様に迷惑かけたら殺すぞ!」
『うおぉぉぉぉぉ!』
会場のボルテージが上がっていく。どうやら掴みはOKのようだ。
「話の長い上司は嫌われるからな。さっさと始めるぞ。────乾杯!」
「「「「「乾杯!!」」」」」
こうして、ギルド中を巻き込んだ大宴会が幕を開けた。飲めや歌えやの大騒ぎだ。これぞ自由を愛する冒険者の姿ってもんよ! たまんねぇな!
俺とローグも酒こそ飲まなかったが、美味しいご飯を"お腹いっぱい"食べたのだった。
その夜、お腹をパンパンにして『渡り鳥の止まり木』に帰った2人の前に、"阿修羅"が降臨したとかなんとか。
うん、晩御飯いらないって伝えてないからね。100%俺たちが悪いわ。
少しでも「面白そう!」「期待できる!」そう思っていただけましたら
ブックマークと評価を入れていただけますと、うれしいです
皆さまからの応援が、なによりものモチベーションとなります
なにとぞ、よろしくお願いいたします




