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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第8章 王都で"彼"を待つものは

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第102話 大型種族用の宿『巨人達の巣窟』


磯野を呼びに来る中島くんみたいな。


「さて、次はビルの所だね」

「おー!」

「こっちの方まで来んのは、何気に初めてかもしんねぇぜ」


 お気づきの方もいらっしゃるだろうが、エルルがお供に加わった。この後、ビルのところに行くと言ったら「ボクも行くぞ!」と身を乗り出して立候補したのだ。熊さん大好きドワーフっ娘である。


 街の中心部から見てさらに外側へ向かっていくと、すぐにそれが目に入った。一発で分かるほどでかい建物だからね。めっちゃ目立ってる。


 周りの建物とのサイズ差で距離感が少しバグりそうになりながら、ついにその宿屋『巨人達の巣窟』へと足を踏み入れた。うーん、このネーミングセンスよ。



「こんにちはー」

「いらっしゃい。あら? 人族のお客さんは珍しいわね」


 声が聞こえてきたカウンターの方を見ると、そこにはでかい女の人がいた。2m50cm以上はある。巨人族の女性だね。


「ここに泊まってる熊人族のビルに会いにきたんだけど」

「ビルさんに? 失礼だけど、アンタ達は?」


 めっちゃ困惑した目で見られてる。そりゃ子供3人がいきなりやってきたら、一体何の用かと思うか。簡単に俺達の立場を説明しよう。


「俺達はビルのパーティーメンバーだよ。"アルゴスアイズ"の仲間だね」

「あーっはっは! バカ言っちゃいけないよ! あははっ! アンタらみたいな可愛らしい子供達が? ふふっ! こりゃ傑作だ! ヒーッ、ヒーッ! 笑いすぎてお腹痛いよ!」


 笑いすぎでは?


 俺の発言はどうやら傑作だったらしく、巨人族の女性にクリティカルヒットだった。さて、めんどくさいことになってきたぞー。と思った俺の横で、エルルが大きく息を吸い込んだ。あ、これはやばい!



「おーっ! ビルーっ! 遊びに来たぞーっ!!」



 間に合った! なんとか両手で耳を塞ぐことに成功した。ローグも間に合ったな。巨人族の女性は……『鼓膜がないなった』ってリアクションしてる。ごめんね。


 ややあって。


「こらエルル。宿で大きい声を出したら、他のお客さんに迷惑だろう」


 上の階からビルがのっしのっしと降りてきた。鎧を着てないと、ほんとに熊だな。夜道でばったり遭遇したら普通に怖い。


「おーっ! みんなで会いに来たぞ!」

「来たぜ!」


 なぜかローグが急に便乗し始めた。さては退屈だったな?


「うん? なんだ珍しいな。どうかしたのか? というか、ヒルダさんは大丈夫か?」

「あ、ありがとさん。ほんとに知り合いだったんだね」


 この巨人族の女性、ヒルダさんっていうのか。ビルが手を差し出すと手を取って立ち上がる。……なんか2人共体が大きいから、いちいちスケールがでかく見えるな。


「最初から言うとったやろがい。逆になんであんな爆笑されたのか、コレガワカラナイ」

「あはは……悪かったね」


 バツが悪そうに笑うヒルダさん。フォローの為か、ビルが話を進める。


「それで、お前達は結局何しに来たんだ?」

「お、そうだった。王都に行く件で少々話があってね」



 ──あれがああして、これがこうして、それがそうなって(事情説明中)



「ふむ。事情は理解した。オレもカトレアに同意だな。領主様とコネクションが作れるのは悪くないと思うぞ」

「そういうものかねぇ」

「ルインはなぜか、自然と権力者達に溶け込んでるからな。このあたりの感覚がオレ達とは少し違うのかもしれんな」


 これは前世で散々触れてきた異世界モノのおかげ(せい)で、そこまで天上の存在って実感がないからだろうね。……良くも悪くもだが。


「まぁいいや。話はとりあえずそれだけだよ」

「わざわざ足を運んでもらってすまなかったな」

「すまなかったぞ!」

「大した手間じゃないし、いいってことよ」


 ちゃっかり肩車状態のエルルとビル。おそろしく速い移行、俺でなきゃ見逃しちゃうね。

 この宿は大型の種族用なので、余裕を持った肩車が楽しめるのだ。良かったねエルル。


 キャッキャ、ハッハッハ。とお楽しみの2人を邪魔するのも悪いので、俺とローグはここいらでお暇することにする。


「じゃあ俺たちはそろそろ行くね。この後、冒険者ギルドに寄って手続きとかしておくよ」

「む? それも任せてしまうのは申し訳ないのだが……」

「代表者がいればOKだからね。ゾロゾロ行く必要はないって。それじゃ、次に会うのは出発の日になるかな。またね」

「うむ。またな」

「またなー!」


 うんうん。エルルとたっぷり遊んであげておくれ。ヒルダさんにも軽く挨拶をして『巨人達の巣窟』を後にした。





 通りに出てすぐ、ローグに確認をとる。


「ローグはどうする? 先に『渡り鳥の止まり木』に戻っててもいいよ?」

「水くせーこと言うなよ。ここまで来たら最後まで一緒に行くっての」


 ローグが気持ち良いくらいの即答を見せてくれた。まったく、いい奴だぜ。


「それならギルドでの用事が終わったら、帰りにちょっとだけ買い食いしていこうか」

「いいのか!? やったぜ! 何食おっかな〜」


 途端に瞳をキラキラさせるローグに、釘を刺しておくことも忘れない。


「いい? ちょっとだけだよ? もし宿の夕飯を残しでもしたら、ターシャさんに肉殺されるからね」


 一瞬で瞳から一切の光がなくなった。……想像してしまったのだろう。その場合に訪れるであろうヘルビジョンを。


「気をつけるぜ……」

「決して"やめる"とは言わないあたり、さすがだよ。じゃ、行こっか」



 そうして、2人並んで冒険者ギルドへの道を歩き出した。



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