第99話 働きたくないでござる!
第8章スタートです
危うく記念すべき100話目が、こんなサブタイトルになるところでした
「はいルイン君、お茶淹れたよっ」
ソフィが甲斐甲斐しく、俺に紅茶を淹れてくれる。
「ありがとうソフィ。いつも悪いねぇ」
「それは言わない約束よ。ふふっ!」
俺は香りをじっくり楽しんでから口に運ぶ。うむ、良き!
遅く起きた休日の朝に、ソフィに淹れてもらった美味しい紅茶をいただく。これが俺の求めていたものである。
幸せって、すぐそばにあったんだね。
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帝国から帰ってきてから、はや1週間が経過した。
帰国後、俺がしたことは以下の通り。
まずリーン教会に行って、聖女の護衛という名のお泊まり会を満喫していた"アルゴスアイズ"の面々に『ありがとう』をした。
驚くべきことに、俺の心配をしてくれていたのは聖女セシリアとエカテリーナさんだけだったよ。真の仲間ってなんだろうね。
しょんぼりしながら『渡り鳥の止まり木』へ帰った俺を出迎えてくれたのは、まるで天使のような笑顔を浮かべたソフィである。
俺の顔を見た彼女は、こう言い放った。
「おかえりなさいルイン君っ。お願い事が決まったわ!」と。
まさかの初手お願い。これには俺もビッくらポンだが、こんなに瞳をキラキラさせている彼女に「ノー!」と言える訳がない。あらかじめ、アル達から聞いていたしね……。
意を決して、彼女の"お願い"を聞いてみると。
「あのね、その……。わ、私と……(ゴニョゴニョ)……一緒にいてくれるっ?」
恥ずかしいのか、顔を真っ赤にした彼女のお願いは、とても子供らしくて可愛いものだった。きっと寂しかったのだろう。なんとも微笑ましい気持ちになった俺は、もちろん二つ返事でOKする。
大喜びのソフィを見て、とてもほっこりした。うんうん。時間があったら、なるべく一緒にいてあげよう。
その後、宿に戻ってきたカトレアに休暇を申請したところ、無事に受理された。やったぜ。
ということで、こうしてソフィにお世話されながら今日に至るのであった。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
これが、この1週間で起こった出来事である。
──バァン!
「である。じゃないでしょうが!」
「げえっ!? カトレア!」
扉を乱暴に開け放って入ってきたのは、釣り上がった目をしたカトレアだ。やばい、おでこに怒りマークがくっついてる。このままじゃ怒られる! かくなるうえはっ。
「ええいっ! なんと無礼な! ノックもしないで入ってくる奴があるかっ! 出直して参れ! 喝っ!」
最終奥義『怒られる前にこっちが先に怒る』だ。帝城でもそうだったが、やられる前にやれば戦いとは確実に勝てるものなのだ。
「黙れ」
「…………」
負けました。
「たしかに休んでいいとは言ったけど、いくらなんでも1週間は休み過ぎでしょうが! ソフィ、悪いけどこいつ借りるわね。ほらっ、今日はギルドに行くわよ」
カトレアに首根っこを掴まれる。ソ、ソフィ! ボスケテ!
「おっ、お仕事……はっ! ルイン君、行ってらっしゃい! 帰ってきたら、美味しいご飯用意してるわねっ」
ちょっと顔を赤くしたソフィは、なぜか新婚さんみたいな空気を出してお見送りしようとしていた。救いは無かった。
しかし、ナメてもらっては困る。こんなところで諦める俺ではないわ!
近くにあったベッドのシーツをギュッときつく握りしめ、高らかに叫び散らかす。悪いな! 俺は往生際が悪いんだ!
「働きたくないでござる! 働きたくないでござる!」
「【スタン】」
──バチィッ!
「……それ、は……やりす、ぎンゴ……」
痺れを切らしたカトレアが、駄々をこねる俺を痺れさせる。後ろ襟を掴まれてドナドナされる俺が最後に耳にしたのは。
「行ってらっしゃいルイン君。気をつけてね〜」
というソフィの優しい声であった。
※ ※ ※
パーティーメンバーと合流後、討伐依頼なんかを軽く済ませた俺たちは、ギルドの酒場で改めて近況報告会を開催することにした。
「はははっ! なかなかルインから連絡がないから、また何かに巻き込まれてるんじゃないかと思ったぞ!」
「おー! むしろルインが1週間も無事に休めたのが奇跡だぞ!」
「ははは。何も言い返せないや」
ビルとエルルにズバッと言われてしまうが、実際その通りなのでなんも言えねぇ。
「それで、そっちは特に何も無かったんだよね?」
「おう。法国の影はどこにも無かったぜ。まぁ、今はこの街に"剛拳のリアラ"もいるしな。下手なことはできねーって」
「それもそうか」
それと俺が帝国に行っている間に、ローグはしれっとCランク昇級試験を受けて合格していた。これでうちのパーティーは全員Cランクってことだね。
ローグの報告を受けた後は、帝国であった事なんかを、かいつまんで説明する。もちろん話せることだけだが。
「なるほど。お疲れ様だったな」
「ありがと、ビル」
一通り仲間達に労われた後は、これからどうするかの話し合いが始まる。
「それで、王都に行こうかと思ってるんだけど」
「王都に?」
「そう、ちょっとリーン教会本部に用があって」
転生者云々と言われたら、会いに行くしかあるまいて。
「……あっ、教皇聖下に会いに行くのね?」
カトレアはやはり理解が早い。……早過ぎじゃない?
「それが一つ。他にも王都で色々イベントがありそうだから、いつでも跳べるように1度は行っておきたいんだよね」
叙爵されるみたいだし。帝城でユニウス王子に伝えた、俺の希望が通ってるといいなぁ。
「分かったわ。ルインの魔法でいつでもこの街に帰って来れることを考えると、準備もそう必要ないでしょうし、予定を決めて近いうちに出発しましょう」
「さんきう」
その後話し合った結果、出発は2日後ということになった。大まかな段取りを決めたらこの日は解散することに。
あぁ。これからまた忙しい毎日がやってきてしまうのか。
俺の夏休み、終わっちゃった……。
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