第98話 旅の終わり
第7章ラストです
リザルト回・後編
「私の魔法を?」
ユニウス王子が聞き返してきたので、俺は重ねて言う。
「うん。"転移魔法"使えるでしょ?」
「フッ。さすがに分かるか」
そりゃ気付くだろ。
まず、お供も連れずにヴォルクスにやってきた時点でおかしい。
子供が「ちょっとコンビニ行ってくる」みたいなノリで王都からヴォルクスまで来てるんだもん。何かあるに決まってる。
さらに出発の朝、北門で待ち合わせた際にマルクスは"急に"現れた。それまで一切気配なんてなかったのに。ここも疑惑ポイントだね。
その後のガルフの態度なんかで、ほぼ確信した。いざとなったら転移で簡単に逃げられるから、全く心配していなかったのだ。
ちなみに後で聞いた話だが、マルクスが担当した残りの皇族達はルミウム王国の王都で隔離中だって。転移でポイポイって飛ばしたらしい。
転移魔法があるからこそ、身分を隠してこういう職務に就いてるんだろうね。……でも。
「なんでマルクスやってる時はあんなキャラなの?」
ちょっとだけ気になったので聞いてみる。すると。
「あれが素だ」
「おぅふ。お前が王太子じゃなくて本当に良かったよ」
こんなふざけた人間が未来の国王とか、考えただけで恐ろしい。
「王子に向かって『お前』呼ばわりか。無礼打ちにしてくれようか?」
「かしこまれって言うならそうするけど……どうする?」
「はっは〜! このままでいいよん、ルイっち」
「だよね」
今の姿でその口調は、やめていただきたいが。
違和感が仕事しすぎて、過労で倒れてしまわれる。そんなことより本題に戻ろう。
「話が逸れちゃったけど、転移見せてくれない?」
「ふむ。…………お前ならいいか。悪いようにはならんだろう」
若干の逡巡の後、了承してくれた。やったぜ。
しかし、続く言葉に天高く舞い上がったテンションが垂直落下する。
「『視れば習得できる』のだろう? それがお前の"転生者"としてのスキルか」
……は?
突然のブッ込みにより、一瞬フリーズしてしまう。が、すぐに気を取り直す。【視て盗む】に関しては、特にそこまで隠してないから構わない。
問題は、"転生者"だ。
ここはどう立ち回るのが正解か……。瞬時に最適解を模索する。
誤魔化す? いや、悪手だ。これは確信している顔。変な誤魔化しは、ここまで積み上げてきたわずかな信頼すら損ねてしまう。
……ん? 待て。なんでこいつは"確信"しているんだ? 転生者のことは"アルゴスアイズ"と聖女しか知らないはず。どっちも他人にペラペラ話すとは思えない。
…………聖女。教会関係。もしかしてこれか?
「"女神の使徒"って、転生者が選ばれる?」
俺がボソッと言うと、まるで「よくできました」と言わんばかりに満足げな表情を浮かべるユニウス。
「そういうことだ。……安心しろ。このことは王族の一部と教皇しか知らん。聖女は……女神から聞いていれば知っているかもしれんな」
「なるほどねぇ。とりあえず納得したよ」
「ちなみに今代の教皇も転生者だぞ」
「情報過多で草」
次々と衝撃の情報がユニウスの口から飛び出してきて、もうお腹いっぱいですわ。マルクスの正体なんて、ほんの些細な事でしかなかったって、はっきりわかんだね。
「彼から伝言だ。『こっちだけお前が"転生者"だってことを知ってんのも、フェアじゃねぇだろ? 俺も教えてやるから、時間ができたら会いに来い』だそうだ」
「そういうタイプの教皇だったかぁ」
異世界モノの教皇にはいくつかのタイプが存在する。
正真正銘の聖人系、次に口調は丁寧だが黒幕だったりする系、そして、なんで教皇になれたか全く理解できない不良系なんかだ。リーン教の教皇はこの不良系みたいだね。
ついでに、聖エルディライト法国の教皇は間違いなく黒幕系です。本当にありがとうございました。
「ていうか、さっきからどんだけ横道に逸れてんだよ。いいかげん転移見せてくれない?」
「それもそうだな。話はまた今度、改めてするとしよう」
……
…………
………………
改めてするような話がまだあるのかよ、と超絶ゲンナリする俺であったが、転移魔法は多少手間取ったものの無事に習得することができた。
今までに行ったことがあれば転移できるようで、習得してから再度現地に行き直す必要はないみたいだ。親切設計助かる。
そしてなにより、消費する魔力が思ったよりも少ない、ドラ◯エのルーラくらい気軽に使える魔法だったので、これにはルイン君もニッコリだ。
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結局心配していた物資なんかは、収納の魔道具を使った高ランク冒険者達による脳筋輸送がすぐにでも始められるそうだ。
ルミウム王国の南端にある貿易港へ、他国や周辺の街から急ピッチでかき集めた物資・食糧を全力ダッシュで運ぶらしい。……もはや高ランク冒険者達のスタンピードだ。ガルフに【ミソロジーレイン】を撃ってもらわなきゃ、止められる気がしない。
アルセイン帝国の負債額を考えると恐ろしいが、蛍石をはじめ、この国でしか取れない鉱石や宝石がいくらでもあるので、ハインツ皇帝やクラウザー宰相が上手い事やるのだろう。俺の領分じゃないので、詳しくは聞かなかった。
うちの王様は忙しいのか、ハインツ皇帝との会談が終わると俺のところまでやってきて「王都でまた会おう。楽しみにしておるぞ」などという、とてもハートフルでユニークなお言葉を残して帰っていった。
自分が住む国のトップからのお言葉なんて、とてもこの小さな体では抱えきれないので、そのまま帝城に「そぉい!」して、さっさと忘れることにする。
帝城はまだ慌ただしくしているし、俺が転移を使えるようになったということもあって、王国組もさっさと帰国する事になった。落ち着いたらその時にゆっくり話そうと、ハインツ皇帝達と約束を交わして。
なお、その際に「ヴィクトルが持ってたような『鑑定妨害の首飾り』が欲しいなー」ってチラッチラッとおねだりしたら、フリードが「む、持っていないのか。なら僕のをやろう」と言って、自分の首から外して俺にくれた。漢気が半端ないし太っ腹である。
気分的にヴィクトルが付けてた現物(血やら何やら付き)はイヤだったので、ありがたく頂戴した。
そんなこんなで「見送りはフヨウラ!」と丁重にお断りをし、気持ち人目につかない場所に移動してから転移することに。
「んじゃ、早く帰って寝よう。『渡り鳥の止まり木』のベッドが恋しい」
「おう、お疲れさん」
「ルインは今回も頑張ったものね!」
「ホッホッホ。さすがわしの孫じゃ」
みんなから一言ずつ総括を頂いたので、「それでは」と魔法の発動に移る。
「あばよ帝国! いつか、絶対にまた来るからな! 【転移】っ!」
こうして、今回の帝国の旅は幕を閉じた。
まだまだ問題は残っているが、それを解決するのは帝国の人間の役目だろう。もしも今後また、彼らの手に負えない事件が起こったのなら、喜んで手を貸そうじゃないか。
──その時は、"よき隣人"として。
なお、"レイブン"の存在をすっかり忘れていた俺たちは、彼らを回収するためにわずか数分で帝国に舞い戻ってきたのであった。
「待たせたな帝国! また来たぜ!」
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ルイン
レベル 21
魔法
【点火】【ファイアボール】【ウォーターハンマー】【氷の盾】
【ウィンドカッター】【ウィンドシールド】【アースクエイク】
【ライトニング】【ダーク】【シャドウボール】【シャドウニードル】
【ヒール】【転移】←お前のことが好きだったんだよ!
スキル
・パッシブスキル
【魔力操作】【剣術】【槍術】【盾術】【鎌術】【危機察知】【並列思考】
・アクティブスキル
【視て盗む】【インビジブル】【気配察知】【身体強化】【跳躍】
【突進】【乱刀】【水鏡】【炎剣】【首刈り】【通打】【破砕撃】
【投擲】【ドレインタッチ】【雄叫び】【鑑定】
称号:転生者 格上キラー 女神の使徒
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ここまで読んでいただきありがとうございます!
第7章はここまでとなります。
いつか法国とやりあうことになった際には帝国の力も借りられると、ルインと何故か王国上層部もニッコリしています。
さて、次章は終始明るいテンションでお送りする予定です。
そしてついに、ルインにも年貢の納め時が……?
よろしければ、引き続きお付き合いくださいませ!
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長くなってしまいましたが、また次の章でお会いしましょう。




