第97話 まぁ、お前だよね
第7章のリザルト回・前編
庭園での戦いから、数刻が経過した。
俺と"フェザーテイル"、ハインツ新皇帝に、帝国の宰相を長年務めているクラウザー氏が帝城の玉座の間で顔を合わせている。
……会議室とかでいいじゃんって?
現在フリードが城内の混乱を収めるために、各方面を駆けずり回っているので、ここが一番落ち着いて話ができるのだ。たまに爆発音も聞こえてくるし。……何やってんだアイツ。
ひとまずの自己紹介を済ませると、ここに至るまでずっと中立を保っていたらしい宰相クラウザーが口を開いた。
「いつかはこうなると思っておりましたが。……やはり、この結末は避けられませんでしたか」
白髪のダンディなおじさんが無念そうに目を瞑る。まぁ、フリードがこっちにいる時点でなぁ。
「すまないなクラウザー。だが、これからやらねばならん事が山ほどある。お前にも手伝ってもらうぞ」
「承知しております。まずは最優先で、これからの国の運営に関わる人事を決めませんと……」
2人が話に没頭し始めてしまったので、部外者の俺と"フェザーテイル"は空気を読んで黙っている。
俺がテレーゼの目をじっと見つめて、"ファミ◯キください"と脳内に直接語りかけて遊んでいると、玉座の間への扉が開いてフリードが戻ってきた。
「ハインツ様、お待たせしました」
「ご苦労。首尾はどうだ?」
「使用人らは特に問題ありません。兵士たちは半々、といったところです。皇帝派の思想がどうしても拭えない者らについては、ひとまず牢に入れております」
まぁ妥当か。今はそんな奴らに時間を費やしている場合じゃない。"ファミ◯キください"とか言って遊んでいる場合ではないのだ。
フリードの報告を聞いたハインツ皇帝は少し思案した後に答える。
「それで良い。……それよりも早く王国と渡りをつけて、支援物資の輸送を始めたいのだが──」
「失礼する」
その時、玉座の間に新たな4人の人物が現れた。
騎士団長感をこれでもかと撒き散らしながら先頭を歩く、バチくそ強そうな初老の男性。その後ろを歩くのは、明らかに王族に見える2人だ。40代と20代くらいかな。そのさらに後ろに、立派な身なりの文官がいる。
……ここで来ちゃったかぁ。
真っ先に反応したのはガルフである。その場で片膝をつき、臣下の礼をとる。
続いて、帝国側の3人が驚きに目を見開く。かろうじてハインツ皇帝の口からその名が告げられた。
「……アーサー=フォン=ルミウム王」
名を呼ばれた40代の、我が国の国王であろう男性がニヤリと笑って威厳に満ちた声音で応じる。……いや、『ニヤリ』じゃないよ。他国の玉座の間に勝手に入ってきた事をうやむやにしようとしてない? 大丈夫?
「フッ。非礼は詫びよう。だが、今この時も民は飢えているのだろう? 余が直接話をした方が早いかと思うてな」
「そ、それは助かるが……どうやってここに?」
この場の誰もが思っているであろう当然の疑問。
するとアーサー王の隣にいる、髪をぴっちりオールバックでまとめた『THE貴公子』が、落ち着いた声で返事をした。
「私の魔法です。ハインツ新皇帝陛下」
「そなたは?」
「ルミウム王国第2王子、ユニウス=フォン=ルミウムと申します。以後お見知りおきを」
そう言って一礼したユニウス王子は、こちらを見てフッと笑う。悪戯が成功した子供のような顔で。
いや、普通にそうじゃないかと思ってたが。
何してんのマルクス。
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「ルインよ、驚かせてしまったか?」
「んなこたぁない。そうじゃないかと思ってたよ」
王様と皇帝の緊急会談が開かれている間、手が空いたユニウス王子と話をする。どうやら、彼は重要な話には混ぜてもらえないらしい。あの明らかに偉そうだった文官さんが、きっとアレコレするに違いない。
「ほう。いつから気づいていた?」
「最初から。マルクスみたいな奴って、大体重要なポジションにいる人物だったりするんだよね。だから、『調査室の特別記録官』以上の立場があるに決まってる(断言)」
異世界ものじゃなくてもお約束だよ。テンプレ中のテンプレだ。
「? 何を言っているのか、よく分からんな」
「せやろな」
こればっかりは、日本のサブカルチャーに通じてないと分からんだろうよ。
「それよりルイン。『スタンピードの主である強大な新種の魔物を討伐し、街の被害なしで終息させた今代の"女神の使徒"』という名目で、お前は叙爵されるだろう」
長いよ。そしてまた急だね。……いや、機会を窺ってたのかな?
「叙爵の基準なんて俺には分からないけど、それだけじゃ少し弱くない? なんか政治臭がすごいんだけど。他のメンツの扱いは?」
「そのあたりはこっちで上手くやるさ。他のメンバーには金一封と簡単な名誉勲章を贈って終わりだ。言い方は悪いが、国にとって重要なのは"女神の使徒"だからな。理由は理解しているな?」
こちらを試すように聞いてくるユニウス王子。
「"女神の使徒"に立場を与えることで王国からの流出を防ぐ。それと『ルミウム王国はリーン教会を大事にしてます。仲良くしてます』っていう国内外に対するアピールも、かな」
あと、法国が俺に何かしてきたら、国として対応できるようになるというのもあるか。自国で悪さをされても、"女神の使徒"とはいえ被害者が一般人だと国が動く理由としては微妙だからね。
それが、ルミウム王国でも立場がある人間だったら、大手を振って報復できる。
「他にも理由はあるが、概ねそんなところだ」
「なら、こういう形にするのって無理かな?」
ユニウス王子に俺の希望を伝える。特に難しいことはない。
ざっくり言えば、平時は冒険者として自由に行動したい。領地はいらない。寄親はダグラム伯爵家でー、とかそんな感じだ。……うん。十分わがままだわ。
「ふむ。それなら多分、問題なく通るぞ。多分な。父上には私から伝えておこう」
「おぉ! マジで!? 言ってみるものだね。助かるよ」
なんで『多分』を2回言ったのか気になったが、ひとまずここはスルーするー(激うまギャグ)。大事な事だったから2回言ったんだろう。
「他に何か希望はあるか? 言うだけならタダだが」
思いがけず訪れた大チャンスに、つい俺は食い気味にお願いしてしまう。
「じゃあ、俺にユニウス王子の"魔法"を見せてくれない?」
クックック! それだけは、なにがなんでも盗ませてもらうぞ。これからの、俺の楽しい楽しい異世界ライフの為にもなぁ!
最後の方で、ルインも調子が出てきましたね。
次回、第7章ラストです。
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