幕間 巡る予兆に馳せるモノ
その地は年月関係なく花々が咲き乱れ、人々は様々に想いを馳せる。其れはあるモノ達も例外ではない。
「あら、こんな所に居たのね?探したわよ、ローちゃん。」
唐紅と金の服装の麗しいモノは、木の上で寝そべっている水干姿の若者を見上げ、笑みを浮かべた。
「これはこれは、随分と珍しい客人だ。それで真紅の主殿は、自身の守護地を離れてまでわざわざ僕の治める春麗に?」
「あら、随分とつれないわね。真紅の主殿なんて、他人行儀な呼び方。昔はもう少し可愛げがあったでしょう?」
「あはは、もう耄碌したのですか?」
「失礼な!あの堅物セッちゃんなら兎も角、アタシはまだピチピチの二十代よ!」
唐紅と金を纏う麗人は、軽く肩をすくめる。
「……それで?」
ローはようやく上体を起こし、枝に腰を掛け直した。長い袖がさらりと揺れ、視線がまっすぐに降りる。
「こんな下らない事を話に来た訳じゃぁないでしょ?本題をどうぞ。」
「あらやだ、そうだったわね。」
コッホンと咳払いしたその瞬間、周りの空気が異常に緊迫めいたモノへと変化した。
「あの人が動き出した。」
「ッ!本当なのか?だが、風はそんな事…」
戸惑う若者の姿に真紅の主は目を細めた。
「当然だな、お前の領分で生を受けたモノが教える筈ない。アレは罪悪感を抱えているからな。」
其れが何を示しているのか、ローには直ぐに察しがついた。
「だからこそ、俺の領分のモノがあの人を導いたんだ。全く…分かっていて行動したのかは謎だがな。」
呆れてはいるものの、その表情は決してわずわらしいというものではない。寧ろ… どこか、懐かしさを滲ませていた。 ローは一瞬だけ目を伏せ、すぐに息を吐く。
「……相変わらず、感傷的だね。」
小さく呟いたその声は、先程までの軽薄さをわずかに失っていた。
「罪悪感に引かれて動く、か。らしいと言えばらしい。」
その言葉に、花のざわめきがピタリと止まった。
「それで今は何処に?」
「シーちゃんの所よ。まあ、らしいといえばらしいけどね。」
「嗚呼、半端モノのところですか?」
あの地の主は、その心によって在るべき姿を変える。我々にはない、ある意味で特別なモノだ。
「……芽吹きか、崩壊の前触れか…フフ、まあ、どっちに転んでも、面白くはあるけどね。」
「だから、あたしが来たのよ。」
真紅の主は、真っ直ぐにローを見据える。
「だって、“春”は、初まりと兆しを読む領分でしょう?」
「まあね…まあ、どっちに転んでも、面白くはあるけどね。ふふ、さて、花はどこの風に攫われてくるのか?或いは、ね。」
「本気で言ってる?」
「半分くらいは。」




