両極を抱きしモノ②
その頃、市井の中を探索しながら練り歩いているモノがいた。
「全く、朕は世の中の為に政務をしなければいけないのに…」
不機嫌な顔だがかなり年若く立派な装いをした美女が不貞腐れた表情でキョロキョロとソッと見回していた。その理由はと言うと…
「全く、……のやつ!気分転換でもして来い!と言われても…」
この世界が不安定なのは、今に始まったことでは無い。我等がこの世界に生まれて随分と経つが、未だに世界はうごかない。其れは我等を生み出した存在が我等を忘れ、世界の心理を紡ぐ事を諦めてしまったからだ。この影響は人々に降りかかった。始まりの災難を解決出来れば良いのだが、我らはあくまで…あの方の…美女はハァッと溜息を吐くと、遠くにある空を見上げゆっくりと太陽に掌を向けた。
すると何処からか地鳴りのような音が響き渡った。
「な、なんだ?」
『わぁ!どいてどいて!!』
「ッ!」
美女に突撃して来た猪…もとい、天音は。
『ごめんなさい!美人さん、お怪我はありませんか?』
「え、ええ、大丈夫です。」
『よ、良かった…こんなに綺麗な人に怪我なんてさせたら私の顔面国宝を守るに反しますから…』
グっと握り拳をするその姿に美女は目を見開いた。
「綺麗…ですか?」
『そりゃあ、もう何処からどう見たって顔面国宝じゃないですか!真珠のような御髪と黒曜色の違うハーフアップの御髪もマッチして、とても調和していて!貴女こそまさに両極の化身と呼ぶに相応しい人です!』
「ッ…そんな事…ないです。ち…私はこの国において異物に過ぎないのです。」
目の前の人にそう言われ、美女は思わず涙目になった。私は…創造主から民草とは違うモノを与えられた。故に私が民に寄り添おうと行動しても…必ず何らかの形でボロが出てしまう。結果、蔑まれ塞ぎ込んでしまうのだ。
『うーん…美人さん、じゃあ、名前は?貴女には名前はないの?』
「え?」
いきなり、名前の話をされ混乱する美人さんの姿をみると天音は優しく微笑んだ。
『この世界を形を象る万物は必ず呼び名を与えるんです。其れは名称であったり象徴としての名前だったりと多岐に渡ります。』
「…そう、ですね。」
『だから、貴女の気持ちも名をつけるなら特別なモノという事になるわ。後はこの想いをどうやって実現させるかにかかってる。それだけの事よ。』
"偉そうに言ってるけどね"と言って笑う天音の姿をみて、彼女は不思議と安心していた。まるで、迷子の子供が安心出来る場所に帰ってきた来たような…そんな、そんな心地よい感覚に包まれていたのだ。
「では、先ずは私の名をお伝えしたく存じます。」
そう言った彼女は優しく天音の手を両手で包み込み…
「私…いや、朕は…」
そして、この名が飛び込み響き渡った時、天音の目は点にさせたのだった。




