第五話 【召喚編】土蜘蛛
ガラガラと音をたてて、前頭前野背外側部のシャッターが下ろされる。
ボン、プツッ、とポップな音を立てて、プラグが扁桃体に突っ込まれた。
ブ〜ンと歪んだ音を響かせ、海馬が立ち上がる。
ドカドカと無意識の一群が大脳皮質に躍り出てきた。
甘い匂いを伴って、スモークが立ち込め、ぼんやりと脳幹が灯る。
ここにいてはいけない、いちゃいけない、理由のわからない焦燥感。
目の前の老婆が、険しい表情で語りかける、言葉を刻み込むように、祈るように。
”し・ん・で・は・な・り・ま・せ・ん”
”はは・は・ゆ・る・し・ま・せ・ん”
愛しさが湧き上がる、とめどなく、湧き上がる。
老婆の耳飾り、イルタテと同じ型の耳飾り、より細やかな飾り彫り。
慙愧の念、なにを悔やむか、体が熱い、舌が喉に詰まる。
逃げろ、逃げろ、逃げろ、懇願する。ここにいちゃいけない、悪い予感しかしない。
目の前の脂ぎった官吏が、ニヤリと嗤う。
ダクダクと心臓が脈打ち、怒怒怒怒とコメカミで血が滾る。
もう間に合わない、もう遅い、ここにいちゃいけなかったのに。
周りで控える官吏の一人が、杯を差し出してくる。
毒による神明裁判。
嵌められた。弁明の機会もない。
手渡された杯を脂ぎった官吏に投げつける。
衣を濡らした杯の中身に怯える官吏。
笑える、ああ笑える、大笑いして終わらせてやろう。
掴みかかる官吏を躱し、階を駆け上がる。
慌てふためく脂ぎった官吏を蹴倒して、その胸を踏みつける。
官吏を官吏足らしめているものを踏みつける、官吏を官吏あらしめているものを踏みにじる。
やるの、ねぇ、やるの、やっちゃうの。
手にあるのは蛇刀の短剣。
脂ぎった官吏を踏みつけたまま、蛇刀を自らの腹に突き立てる。
冷気が腹から背へ突き抜ける。痛みだ。
突き刺した刃をゆっくりと真一文字に引いていく、焼けるような激痛が走る。
吹き出した血で、血まみれになる脂ぎった官吏。
やったんだね、やっちゃたんだね。
槍で突かれ、剣で刺されて、男は階の上に頭を下にして大の字に倒れる。
割れた男の腹から石が転げ出た。
血まみれの男の目に、光はない。
血まみれの体、その体には、精緻な文様が刻まれている。
”し・ん・で・は・な・り・ま・せ・ん”
老婆の言葉、母の言葉が、御霊を締め付ける。
男の体から紅い光がフラフラと舞い上がり、どこかへと消えていった。
ここにいちゃいけないって、逃げろって言ったのに・・・オズヌ・・・
ガチャ、プラグが唐突に扁桃体から引き抜かれる。ガヤガヤと無意識が撤収を始める。
前頭前野背外側部のシャッターがガラガラと上がる。
目が覚めて、わたしは夢を覚えていない・・・・
ーーーーーーーーー
グゥゥウウ!お腹が盛大な音を立て、目が覚めた。
お腹が空いて、目が覚めるなんていつ以来だろう・・・コロナの頃はよくあったんだよね。
仕事もなかったから昼まで寝ちゃったりしてハハハ・・・ハッ!とする。
わたしは一気に背筋が寒くなるのを覚える。
いけない!遅刻だ!飛び起きる。
なにやってんだわたし!怒りとも嘆きともつかない感情に、髪の毛が抜けそうになるほどの焦りを感じる。
契約更新が迫ってるっていうのに、何してんだよ!
更新してもらうために、ミスしないように、あれほど注意して働いてきたんじゃないか!
すべてが台無しになっちゃうよ!
社員の冷たい視線が目に浮かぶ、派遣会社の担当者のため息まで聞こえてくるようで、泣きそうになる。
寝坊なんて、もってのほかじゃないか!目覚まし時計とスマホのアラームはどうした?
かけ忘れて眠ってしまったのだろうか・・・昨日の夜????
薄明かりが木戸の間から射している・・・わたしの部屋じゃない・・・
えっ!えーっ!ここどこよ!?
わたしは目の前の木戸を開ける。向き合って話していた二人の男がこちらを振り向いた。
「おお、起きたか、調子はどうじゃ」オズヌ・・・
「おはようさん、朝餉はとってあるきん、炊事場にいってみまい」と空海・・・
ウソ、ウソ、嘘!えっ、夢じゃない。
わたしは、まだ平安時代にいる。809年の世界に・・・泣きそうになる。
同時に安堵のため息が漏れる。
寝坊じゃない、遅刻じゃない、契約更新も、社員の視線も、派遣会社の担当の溜め息も気にする必要はないのだ、わたしは、そう自由なんだ!多分・・・飯食って、屁をこいて、寝てればいいんだ!そう、飯・・・・ぐうぅ〜とお腹がなる。
わたしのお腹の音を聞いて、男二人がクスリと笑った。
デリカシーの欠片もないとはこのことか!男なら聞こえなかったフリしろよ!
キッと二人を睨みつけてやる。
しかし、まぁ腹が減っては戦はできぬって言うじゃん。
わたしは、そそくさと炊事場へと向かう。
「今、目覚めか?」
前鬼である。やっぱり夢ではないのだ。
「ここへ、ほれ、飯じゃ、飯」
後鬼が盆を持ってきてくれる。
盆の上には、こんもりと盛られた白い飯、それに焼いた川魚が一匹、山菜?多分、山菜。
見たことのない野菜みたいなやつが小鉢に盛られている。それと塩。
わたしは、焼き魚の腹に齧り付き、白飯を掻き込む。
そして、盛大にむせた。
「ゲフッ、ゲフッ」
「おうおう、水をお飲み、水」
後鬼が竹筒で作ったコップに水を入れて持って来てくれた。
それを、ありがたく飲み干す。
「お茶か、御味噌汁はない?」
わたしの言葉に、前鬼と後鬼が首をかしげて互いに見つめ合う。
「お茶とは?御味噌汁とはなんじゃ」
おお、ジャパン!わたしは白飯の椀を持ったまま天を仰ぐ。
お茶も、味噌汁もない時代に来てしまった。
わたしは涙を拭って、未だ和食ならざる日本の朝食を味わった。
わたしのお腹は、白飯をお替りしてやっと落ち着いた。朝から、こんなに食べるのも珍しい。
プフ〜と一息ついていると、後鬼がお盆を下げていく。
「ああ、ごめん、わたしやるよ」
土間にある草履に足を通して後鬼を追いかけた。
その時、気付く、セーラー服じゃない。
なんだろう、筒袖に、袴のようなものを着けている。
筒袖は薄いピンクで白抜きの花びらが舞っている。袴は紺色。しかも、髪が両脇で結ってある。
これ、絶対、可愛いはず!鏡で見たい!
テンション爆上がりで、表に飛び出す。
「見て!見て!この着物、超可愛くない?」
「よう似合っとる」
「ほんに、ほんに」
「あ、ありがとう」
わたしの返事は、うわのそらだったに違いない。
目の前の景色に、心を奪われてしまった。
絶景だった。夕焼けも良かったけれど、朝の景色も、また、格別じゃないか!
周りを囲む木々が目の前で開け、山並みの向こうに海だ。
初春の空気はもったりとして、鈍く滲むように波が輝いている。
船が白い帆を張って行き来しているのも見える。
「絶景だねぇ〜」
「いつもと変わらぬ難波の海じゃ、摂津の海とも言われておるわ」
うんうん、前鬼の言葉に頷いて、庭の縁に立って、大きく深呼吸する。
こんなに気持ちいい朝は、いつ以来だろう。ていうか、気持ちいい朝などあったろうか。
振り向くと、もう、洗い物は終わっていた。
二匹は薪割りに取り掛かる。
薪割りはどうもわたしに手伝えそうにない。わたしは軒に腰掛けて二匹の作業を見守った。
後鬼が立てた薪を前鬼がタンッと斧で割っていく。
二匹の息はバッチシだ。
「ねぇ、二人は夫婦だよね。仲いいもんね、息もぴったり!」
黙って作業を続ける前鬼と後鬼。
「なんでオズヌと一緒にいるの?オズヌは二人のことを式神だって言ってたけど、式神ってなによ?」
「主様は、そう言うたがな・・・」
フンッと斧を振る。
「ワシらは、式神ではない」
「ほんに、ほんに」
後鬼が次の薪を置く。
「違うんだ」
「違うのぅ、式神とは術師の術に縛られた人形、主である術師の言いなりじゃ、言わば奴隷のような存在じゃな」
フンッと斧を振り下ろす。薪が出来上がる。
「ワシらは逆じゃ、主様に術を解いてもろうたのよ」
「え?二人共、術を掛けられてたの?誰に?どんな術を?」
「話すと長くなるぞ」
手ぬぐいで汗を拭う前鬼。
「今は昔ですもんね、おまえさん」
立ち上がり腰を伸ばす後鬼。
「話してよ、ね」
わたしは、好奇心を抑えられない。
ならばと斧を脇において、前鬼は、軽く咳払いした。
「いつの帝の御時か・・・」
芝居がかった声をだす。
薪を運んでいた後鬼が振り向く。
「止めとくれよ、おまえさん」
二匹は顔を見合わせて笑った。
これが平安ギャグなのか、二匹の間のお決まりなのか、何が面白いのかも、わからないけど、わたしも一緒に笑っておく。
「ワシも、後鬼も長髄彦王の家臣じゃってのう・・・」
長髄彦王って誰それ?聞いたことないんだけど、まあ、それは置いといて。
「人間だったってこと?」
「そうじゃ。ワシも後鬼も元は人間・・・ワシは長髄彦王の前将軍、後鬼は後将軍であった」
「えっ将軍!凄いじゃん!後鬼もなんだ、女性で将軍って凄くない!」
「なんの、なんの」
後鬼は照れたように言う。
どちらにせよ、今の二人から将軍といった厳しさは感じられない。
「長髄彦って凄かったの?」
「長髄彦王じゃ」
前鬼がわたしをキッと睨む。わたしはペコリと頭を下げる。
前鬼は鼻から短く息を吐いて、続ける。
「長髄彦王は、葛城から東の土地を束ねる偉大な王であった」
東北出身だからね、関西の地名には疎くて葛城っていうのが、どの辺だか、イマイチ分からないけども、束ねてるって言うんだから凄いはずだよね、なんつったって王だからさ。
「へぇ、凄い人だったんだねぇ」
前鬼は、わたしの返事が気に入らないご様子。
「ほんに知らぬのか、長髄彦王を?ほれ、最近、できた本があるじゃろ、古事記とか、日本書紀とかいう本が、あの中に長髄彦王の名が出てくるはずじゃが」
「読んでないんだよね」
わたしは、頭をかいて見せる。
「おまえさんッ」
後鬼が前鬼の発言をたしなめるように声をかけ、わたしに目でゴメンねと伝えてくる。
はて?何のことだろう。
「いやすまん、ワシの気遣いが足らなんだ」
前鬼が頭を下げる。
「字が読めるとか、読めんとか、そんな事は些末なことじゃ、気にするな。許せ」
「いや、いや、わたし字は読めるからね」
「お嬢、気に病むことはない」
後鬼が首を振りながら言う。
「いやだから読めるって」
わたしの言葉に構わず、前鬼が話を続ける。
「その偉大な王の前に、神が現れたのじゃ」
えッ、いきなり神とか言っちゃって、前鬼、大丈夫?
「高天原から磐舟に乗って饒速日命と名乗る神が大和に降りてきたのじゃ」
タカマガハラは聞いたことあるような、ないような・・・ニギハヤヒノミコトは初耳だ。
これって、日本の神話の話?
「で、これは尊いお方じゃと長髄彦王もお感じになられて、妹を饒速日命に嫁がせたんじゃ。で、饒速日命からも長髄彦王に妃を差し出されてな、ワシらは同族とあいなったと言うわけじゃ」
神と人とが同族になるとか、よくわかんないんだけど、そこを突っ込んだら前鬼と後鬼は気分を悪くするだろうか・・・神話なんだろうけど、おばあちゃんから聞いた話とは違うような気もする。
たしか、名前なんだっけ、二、ニニギ?が三種の神器を持って、大和を作ったっていう、う〜ん記憶が覚束ない。
「ところが」
前鬼は声を低めて話を続ける。
「饒速日命がお亡くなりになってしもうて、長髄彦王の妹が産んだウマシマジが国を統べることになったんじゃ。しかし、まだ幼かったゆえ、長髄彦王が後見人として、政を見ていくことになったんじゃ」
ウマシマジって名前、ウケる。笑いそうになっちゃったよ。
「お前さん、あのころは楽しかったですなぁ、米も作るようになり、祭りも増えて」
「そうじゃったなぁ」
「オズヌは?」
「主様が生まれるずっと前の話よ」
ずっと前、もうこれ、マジで神話時代の話なんじゃない?
「で、戦が起こったんじゃ」
暗い顔になる前鬼。
「西から別の神が、天津国からやってきたのじゃ、三種の神器を持って」
「邇邇芸命でしょ!」
思い出しましたよ、ありがとうおばあちゃん!
「違う、神日本磐余彦尊じゃ。邇邇芸命の曾孫じゃな」
はい、やらかした、知ったかして恥かいた。
もう、馬鹿でいくよ、馬鹿でいくことに決めました。
「その軍勢がの、難波津から攻め上がってきたのじゃ」
前鬼は海を指さした。
「ワシらは山の上から逆落としに攻めての、敵を散々に蹴散らしてやったんじゃ」
「あの時、おまえさんは見事に五瀬命に矢を射たてたのでしな」
「その後、敵は紀の国をぐるりと回って各地で軍勢を集めながら、今度は東から攻めてきたのじゃ」
前鬼は海とは逆の方角を指さした。
「東はワシらの集落、田畑のある方角、山に籠もってはおられぬ。山を下りての戦いとなった」
「今思えば、山を下りてはなりませなんだな、たとえ、田畑を捨てることになろうとも・・・」
「激しい戦闘の末、ワシも後将軍であった後鬼も深手を負ってしもうたんじゃ。もう、これはいかぬ、息も絶え絶えといった状態じゃった」
「そうでしたねぇ、おまえさん」
後鬼が前鬼の肩を励ますように擦る。
「二人は助かったんだよね」
「助かったといってよいものか・・・」
「ほんに、ほんに」
「ワシらが欠けることは、我が軍勢にとって大きな痛手であった。相手を打ち負かすために、なんとしてもワシらの力が必要じゃったんじゃ」
「それで、長髄彦王が十種の神宝を持ち出されて、布瑠之言を唱えられたのじゃったな、おまえさん」
「そうじゃ、ワシらは蘇った・・・醜き鬼となっての・・・」
「ちょ、ちょっと待って、鬼となって蘇ったって、この間のゾンビみたいな感じってこと?」
「ちがうな、アレは屍奔恨、屍を恨みをもって奔らせる唐の術じゃ、生き返らせているのではない」
確かに、ゾンビたちからは意識のようなものは感じられなかった。文字通り、生きる屍だった。
「それから」
わたしは先を促す。
「さらに激しい戦闘が続いた・・・」
前鬼が言葉を飲み込んだ。
「ワレらも奮闘したのでしたよね、おまえさん」
うんうんと何度も頷いて前鬼は口を開いた。
「で、のぉ・・・ウマシマジが神日本磐余彦尊に降ると決めたんじゃ・・・長髄彦王は最後まで反対したが、どうにもならず・・・」
「どうなったの?」
「長髄彦王は、自らの命をもって、ウマシマジを諌めるべく、自害されたのじゃ」
「無念でしたでしょうな、おまえさんよ」
「”我は地霊となってこの地を守らん”というのが最期の言葉じゃった」
「饒速日命の一族。ウマシマジの一族じゃな、こちらは神日本磐余彦尊の陣営に高い位を用意され仕えることになったんじゃが・・・」
悔しそうに口を引き結ぶ前鬼。後鬼はすすり泣いている。
「ワシら長髄彦王の一族は土蜘蛛と呼ばれ、蔑まれたのじゃ」
「え・・・」
ひどくないか、饒速日命と縁を結んで神と同族になったって言ってたじゃん。
結局、同族として扱われなかったってこと?
「酷なことですよねぇ、おまえさん」
「土蜘蛛と呼ばれ、奴隷のように扱われてのぉ・・・耐えられなくなった者たちが反乱を企てたんじゃ・・・すると、待ってましたとばかり網にかけられ、反乱に加わっていないものまで・・・一族郎党、生きたまま塚に埋められた」
「ひどすぎる・・・」
わたしは拳を握りしめる。
「地中での・・・ワシらの上、下で呻く仲間たちの声がな・・・したんじゃ。そのうち、声はなくなっての、地虫が肉を食らう音を聞いたものよ・・・どのくらい経ってからであったか、塚から出てきたのはワシら二人だけ、ワシらは死ねんからな・・・」
「それから二人で、山に籠もったのでしたなぁ、おまえさん」
「そうじゃ・・・長髄彦王からの命を果たすべく、敵を屠った・・・山を通る人々を襲って暮らしたんじゃ・・・何年も、何十年も、ワシらを退治しようと軍も出てきたこともあったが、それも打ち倒した・・・」
「で、どうなったの?」
「主様が来たのじゃよ・・・」
「そうでしたな・・・ちょうど官吏の一行に襲いかかろうとした時でしなぁ、おまえさん」
「主様がな、もうよい、もうよいと申されてな・・・」
「長髄彦王に命じられた軍令を解いて下さったのじゃったなぁ、おまえさん」
「オズヌはやっぱり凄い術師なんだ」
「ただの術師ではない・・・主様には、長髄彦王の血が流れておるのじゃ」
「マジで!」
驚いたものの、正直、納得感が半端ない。あの傲慢さは王族の血から来ているのか。
「でも、オズヌは死んじゃうわけでしょ。なんで?」
わたしはオズヌが死んじゃったとサラリと言ってしまう。いや、多分、死んでるでしょ、肉体が無くなって御霊とかいうものだけになってるわけだし、間違ってないはず。
「弟子にな、裏切られたのじゃよ・・・帝に呪いをかけたと諫言されたのじゃ」
「えっ、弟子に?」
「ひどい話ですよ、それから主様は弟子をお取りにならなくなって、ねぇ、おまえさん」
まあ、死んでるし、弟子を取らなくなって当たり前といえば当たり前だよね。
「ユダだね、ユダ。その弟子は、なんでオズヌを裏切ったの?」
興味津々でわたしは尋ねた。
「また、長い話になるぞ」
「ぜんぜん構わないし、仕事ないし」
変な間があって、前鬼と後鬼は互いに顔を見合わせ、サッと飛び退った。
あれ?目の前から消えちゃった。
わたし何か気に障ることを言っちゃったのか?それとも、また、土偶でも出てくるのかと身構える。
少しして「ごめんください」と門の方から声が掛かった。
《登場人物》
長髄彦:神武の東征に抵抗した大和の豪族として古事記、日本書紀に記されている。本物語では土蜘蛛の祖であり、オズヌはその末裔である
饒速日命:天照大神から十種の神宝を授かり、天磐船に乗って大和の国に天下った、邇邇芸命とは別系統の天孫降臨として古事記、日本書紀に記されている
ウマシマジ:饒速日命と長髄彦の妹である登美夜毘売の子で、神武天皇に下り、それ以降、配下の物部氏とともに皇城警護にあたる。物部氏の祖神
邇邇芸命:天照大神の孫。日向の高千穂に天孫降臨する
神日本磐余彦尊:邇邇芸命曽孫、初代天皇、神武天皇
五瀬命:神日本磐余彦尊の兄、神武東征の際に矢を受け「太陽神の子孫である我らが、東に向かって攻めるのは良くない、回り込み、太陽を背にして戦うべし」という言葉を残し死去
土蜘蛛:古代にあって、大和にまつろわぬ地方の豪族。体に比して手足が長く、山野を素早く駆け回り、穴蔵を住処にしていたという。葛城山の麓には土蜘蛛の塚があるが、葛城自体が、土蜘蛛を討伐した際に用いられた葛に由来するとされる。本物語では蝦夷と同族かつ、オズヌ、前鬼、後鬼の血筋である




