いつものように
翌日。
私たちは普段通りの朝を迎えてた。
いつと通り起きて、いつものように支度をして、朝ごはんを食べる。
その間も、時子ちゃんたちや木ノ葉ちゃんの雰囲気はいつも通り。
酒吞さんと茨木さんもだ。
昨晩、私は皆に、大蛇を封印した後に起こることを話した。
大蛇を再封印した後、私たちはこの世界から居なくなる。
その際に、もしかしたら、空に歪みのようなものが出現するかもしれないけど、それが私たちを別の世界へ飛ばそうとする現象だということも伝えておいた。
皆がみんな、びっくりしてたけど、時子ちゃんと酒吞さんはいち早く受け入れて、その時が来たら落ち着いて対応すると言ってくれた。
「封印の方法の変更について話が来たのは、幸いと言うべきか。君たちとの別れを惜しむ時間が得られた」
「そうですわね。私も、皆様とのお別れの時間が得られて、よかったですわ」
「イヨ様とコユキち
ゃんと、もう少し一緒にいたい」
さみしげな年少組二人の頭を、茨木さんが優しく撫でた。
「まだ少しばかり時間はある」
「そうだぜ? いよっちたちと思い出作りしてけ! 木ノ葉っちもな」
「え? ……あ」
ずっと静かにしてた木ノ葉ちゃんが、酒吞さんたちを見上げた。
酒吞さんも、茨木さんも、木ノ葉ちゃんに頷いた。
「さっき、言った通りだ。俺たちのことは気にせず、お前の好きなようにしなさい」
「……もう寂しいからと、悪さはするなよ?」
兄のような眼差しの酒吞さんと、憎まれ口を叩きながらも心配そうな眼差しの茨木さん。
木ノ葉ちゃんは二人に頷いてから、私たちを見上げた。
「着いていっても、いい?」
私たちが頷いたり、ばっちこーい(これは時子ちゃんだ)って声をかけたりすると、木ノ葉ちゃんははにかんだ。
「えへへ……ありがとうな」
場が和やかになると、時子ちゃんがテンション高そうに柏手を打った。
「よっしゃー! んじゃ、方針が決まったし! 後は大蛇を再封印すれば、千年くらい問題ないっしょ!」
「ですが、千年後はどうするんですの? 私たちはこの世界からいなくなる上に、流石に千年後は、アルヴの方々でもないので見ることもできませんし」
「そこは、俺や友人たちで見守ろう。この世界で千年後……一九〇〇年代半ばから後半なら、十分間に合う」
酒吞さんが私と時子ちゃんを見てきた。
私たちは、二十一世紀に生まれ、生きてきた。
教科書に載ってる歴史を知ってるけど、この世界の歴史が私たちの世界のようになるかどうかはわかんない。
すでに、酒吞さんたちという存在が、この世界に大なり小なり影響を与えてるし。
ただ、歴史の修正力とかいう、日本に居た頃に兄ちゃんたちや友達から聞いた単語が頭に浮かんできた。
でも、目の前の酒吞さんたちが歴史の大きなうねりのようなものに飲み込まれるかどうか、直感が五分五分って言ってる。
この世界に来た頃に感じた、酒吞さんたちや村へ降りかかる、悪い予感や嫌な感じは、少しずつ薄れてる。
きっと、大丈夫だ。
だから、これを伝えるのは、本当に最後にしよう。
これからのことを話した夜は、そうして静かに過ぎていった。
昨日のことを日記に軽く書き留めて、影にしまう。
さて、これから仕事だ。
いつも通りの日常を送りながら、大蛇復活の警戒をしてるのは……もうメアちゃんたちの世界でそういうのには慣れてるから、問題ない。
場所がわかってて、どんな相手で、どれくらいの数がいて……なんて情報が事前にわかってるだけ、滅茶苦茶精神疲労が少ない。
これまでの相手、ほぼ全員突発的にメッチャ遠くに出現するし、物量差がどんだけあるかわかんないしとか、日常茶飯時だったし。
「んじゃ、今日もやるべ!」
「そうだね」
「今日で残り全部片付けますわよ」
「うん!」
そして、私たちは、いつものように、それぞれの仕事へと取り掛かった。
次回は明日、18時予約投稿です。




