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私ができる勝手なお節介

「君が、大蛇を?」

「はい」


 皆が静かに私たちを見てる中で、私と酒吞さんは見つめ合う。


 元々身長の高い酒吞さんは、座った状態で見上げるとさらに大きく見える。


 謎の威圧感も相まって、巨人と向き合ってるみたいだ。


「君の力を借りるのは、もしもの時と、言ったはずだ」

「一週間以内ですよね」

「っ?!」


 空気が漏れるような声が、酒吞さんの僅かに開かれた唇から発せられた。

 聞こえた音からは、普通だとわからないけど、強化された感覚は、何、とちゃんと捉えてた。


 茨木さんも驚きを隠せなかつたらしく、目を大きく見開いてた。


「そこまでわかるのかい?」


 何となく、で通せそうな雰囲気ではなさそうかな。

 無言で頷き返した。


「……君の言うとおり、大蛇たちは七日以内に復活する。可能性じゃない。確実に、目を覚まして現れる」

「たち、ってことは……」

「酒てるん、まさか……?」

「あぁ。各地の封印が、今にも解けそうになっている」


 衝撃の事実だけど、私はもちろん、時子ちゃんたちも大きな反応は見せなかった。

 木ノ葉ちゃんは、この話を知っていたらしく、私と酒吞さんを静かに見守ってる。


「今日、木ノ葉を使いに向かわせたのは、都にいる友人とその協力者から、各地の情報を得るため。それから、こちらの封印状況を伝えるためだ」

「そういうことでしたの」

「それで木ノ葉っち、帰ってきてからなんか変だったんだ」


 どうやら、帰ってきてからの木ノ葉ちゃんの様子は、時子ちゃんたちにも伝わってたらしい。

 皆、よく人を見てるし、一緒に生活してる木ノ葉ちゃんのことなら、尚更。


 木ノ葉ちゃんは「まぁ、はい……」と少し歯切れ悪い感じで頷いてた。

 それもだけど、メインはそうじゃない、みたいなものを直感が囁いてるけど、今はスルー。


「今、この日本には、俺を含めて三人の大妖機がいる。大蛇の封印場所は二十一世紀日本でいう、中国地方、関西地方、中部地方に分かれているため、手分けして再封印ないし、復活した際の対処を行う予定だ」

「で、そこにあーしらも加わるわけっしょ?」

「……不本意だが、その通りになりそうだ」


 酒吞さんが右手で顔半分を覆いながら頷きかけて、顔を上げた。


「いや待て。君も?」

「おうよ! 葵っちは確かにつえーけど、相手は後、七人いるんしょ? 酒てるん合わせて三人がそれぞれ一つずつ対応するとしてさ。残り五つのうち、ここ含めて二つはあーしたちが対応すれば、その分、酒てるんたちも焦らずに封印やれんじゃね? そしたら、残りの三つに早めに対応できるっしょ!」

「葵は、木ノ葉を足止めした報告があったから協力を要請した。君も確かに凄まじい力を持っているが……」

「おいおい酒てるん。酒てるんが隠し事をしてんのと一緒で、あーしもまだ酒てるんたちに教えてないこと、あるんだぜ?」

「あら、奇遇ですわね、私もですわ」

「私も、まだ言ってないこと、いっぱあるよ?」


 時子ちゃんだけでなく、イザベラちゃんとメアちゃんも酒吞さんをまっすぐな眼差しで見上げた。


 確かに、私も含めて全員、誰にも言ってないことはたくさんあるかも。


「酒てるん。酒てるんってさ。メッチャクチャ優しいし、あーしたちに突き放すようなこと言うのは、あーしたちを危険に巻き込まないためだってわかってんだけどさ」

「けど?」

「あーしたちは、酒てるんたちに助けられた恩がある。でも、それだけじなくてさ。木ノ葉っちじゃないけど、あーしも、この村のこと、大好きだし、酒てるんたちのこと、助けたいって思うんだ。猫の手も借りたいなら、あーしたちの手をもっと借りてくれい! 別にあーしたちはそれで貸し借りとか、イニシアチブがどーとか、しちめんどくせーこと言わねーよ」


 そう言って、ニカッと時子ちゃんは笑った。


「それに、あーし、酒てるんと茨っちの幸せな姿、見てみてーし!」

「なっ?!」


 唐突な爆弾発言に絶句する茨木さんとは対照的に、酒吞さんはきょとんとした顔になって、首を傾げた。


「俺は、今、幸せだぞ?」

「酒吞様?!」

「それは見てわかるけど、そうじゃねぇ!」

「クー姉さま、落ち着きますの」


 イザベラちゃんが時子ちゃんの口を両手で塞ぎ、ため息を吐いた。


「イバラ姉さま、ウチのクー姉さまが申し訳ありません」

「……いや、いい」


 顔を赤くしながら額に手を当てる茨木さんを、酒吞さんが何のことかよくわかってない表情で見てた。


 酒吞さんの今の感じには覚えがある。

 フー兄もそうだったから、わかった。


 この人、ここまで言われて、本気で気付いてない。


「シュテン様……」

「イバラ姉さま、可哀想……」

「酒てるんェ……」

「どうしたんだ、皆?」


 イザベラちゃん、メアちゃん、時子ちゃんから色々な感情の目を向けられても、酒吞さんは戸惑うだけで、茨木さんの好意に全くこれっぽっちも気付いてなかった。


 でも……私たちが、無理に言うことじゃない。

 これは、茨木さんが、直接酒吞さんに言わなくちゃいけないことだから。


「酒吞さん、ひとまず、大蛇の再封印が終わったら、茨木さんに一日付き合ってあげていただけませんか?」

「葵?!」

「うん? それは構わないが、一体どうしたんだ?」

「たまには仕事抜きで、二人で村を見て回ってみては、っていうだけです」

「そうだな。たまには、そういうこともいいかもしれないな」

「酒吞様?!」


 私ができる勝手なお節介は、ここまで。

 後は、茨木さん次第だ。


 それを見ることができないのは、少し残念、かな。


「そ、それよりもだ! お前たち、どうやって大蛇たちを再封印するんだ?」


 照れながら茨木さんが話を軌道修正してきた。

 私と時子ちゃんはちらっと互いを見た後、それぞれ、それまで隠してた手の内を明かした。


「封印場所に、神様にも通じる浄化の光を撃ち込みます」

「あーしは、時空をぶった切って、大蛇の意識を夢の世界へ送り返す!」


 あ、やっぱり時子ちゃん、自分でも言ってたけど、時間関係の能力持ってたんだ。

 いつの間にか思い出してたんだ。


 ちらっともう一度見たら、イケメン笑顔のサムズアップをもらった。

 私もそれにサムズアップで返した。


 それから酒吞さんたちへ顔を戻したら、またも驚き顔の酒吞さんと、遠い場所を見るような目になった茨木さんの姿があった。


「今更なんだが……君たちは……本当に、何者なんだ?」


 何とか出せたって感じの酒吞さんの問いかけに、時子ちゃんは目を一瞬輝かせた後、決め顔で答えた。


「通りすがりの上級冒険者でーす、覚えといて!」


 予想通りのセリフを言って、やりきったーって感じの顔をする時子ちゃんに苦笑した後、私も答える。


「夕日の騎士で、女神ベル様の友達です」


 団長さんがくれた二つ名と、ベル様たちを思い出しながら。

次回は明日、18時予約投稿です。

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