悲しいような、寂しいような。
木ノ葉ちゃんが戻ってきたのは、夕方になってからだった。
行きしみたいに烏さんに掴まれた木ノ葉ちゃんは、普段と変わらない明るい言動だったけど、何か違和感があった。
夕飯の時に平安の都会の様子を話してる時も、お風呂から上がってからも、それは消えてなくて。
つい気になって、寝る前に居間へ連れ出した。
「何かあったん?」
「何って、何?」
「平安京で何かあったん?」
「別になんもなかったよ。ただ、ここよりも人がぎょーさんおったから、疲れてもうたわ」
からからと笑うけど、嘘だなって直感が告げてる。
でも、それ以上踏み込まないで、という雰囲気があった。
「それより、大蛇さんのこと、知ってもうたんやね」
「うん」
「まぁ、本当やったら、ここに住むって決まった時点で教えなあかんかったんやけど……すぐに元の世界に帰るかもしれへんし、自分もおるから、葵たちには安心して過ごしてほしいって、酒吞さんが」
「うん」
でも、そのおかけで、今日まで楽しく村で過ごせたし、いよちゃんたちとも仲良くなれた。
結果オーライな感じだけど、今はそれでよかったって思ってる。
「木ノ葉ちゃんは、大蛇のこと、知っとるん?」
「うん。元の世界やと、有名人やからね。大妖機の八岐大蛇っていうたら、あの人らやなって、世界中の大勢が同じ人らを想像するんとちゃうかな。私は直接会ぅたことないけど、アーカイブとかSNSとかで、どんなことしてきたんか、どんな力を持っとるんか、くらいは見とったから、知っとるよ」
「そうなんや」
大蛇も、こっちの世界の八岐大蛇になっちゃったけど、元の世界だと、普通に暮らしてたのかもしれない。
「ちなみに、酒吞さんも名の知られた大妖機なんやで? 鬼機神の酒吞童子って有名やったんやから」
何かすんごい二つ名が付いてるな、酒吞さん。
直感も、この世界てトップ中のトップって言ってるから、本当に元の世界でも凄かったんだろう。
そんな人たちが、なんでこっちの世界に来たんだろ。
私たちみたいに、神様とかと戦って、こっちに来ちゃったのかな。
「ねぇ、何で酒吞さんたち、こっちの世界に来ちゃったんやろ」
「それは、私にもわからへん。むしろ、私も知りたいくらいやわ」
木ノ葉ちゃんはため息を吐いた後、苦笑しながら「ごめん、忘れて」と言った。
また、線を引くような感じがした。
ここから先は、木ノ葉ちゃんや酒吞さんたちにしかわからない領域なんだって、何となくわかった。
「ああ、ごめん、そんな顔させるつもりやなかったんやけど」
木ノ葉ちゃんが困ったように笑った。
今、どんな顔をしてるんだろ。
悲しいような、寂しいような。
でも、これくらいなら、表に出さないようにできてるはずだし、今回もそのはずなのに。
「ごめん、木ノ葉ちゃん」
「……いんや。友達心配させまくるのも、それはそれでいややな。
そうやな、私が話せるんは、酒吞さんから聞いた話が多いけど……」
壁際に二人並んで座ると、木ノ葉ちゃんがぽつぽつと話し始めた。
次回は明日、18時予約投稿です。




