順調なボス戦と不穏な元凶
ちなみに、私の弾が命中した時の事を、後でパトリシア達はこう評した。
「いくら殴ろうが斬ろうが平然として、発破しても大して反応を見せなかったあのドラゴンが、まさか頭を押さえてのたうち回るとは! しばらく何が起こったのか分からなかったぞ!」
「しかも続けざまに次の弾が飛んできてどてっ腹に叩き込まれたもんだから、うずくまって丸まるんだもんなぁ。ほんとに同じ相手かちょっと不安になるほどの哀れっぷりだったよ、あれは」
まぁどう考えても間違いなく確実に過剰火力だからな。仕方ない。
さて、2発目を撃ち込んだところで大人しくなったのをスコープ越しに確認し、距離を取っていたパトリシアが素早く近づいて、それこそゲームか何かのように攻撃を叩き込み始めたのも見て、一旦スコープから目を離した。
特殊防御が剥がれてからも様子を見る必要はあるだろうが、少なくともレベル9まで来た「申請者」ばかりではあるんだ。その中の戦闘職が集まっていて、恐らくボスである黒いドラゴンへの挑戦もこれが初めてじゃない。なら、まぁ、大丈夫だろう。
「それにあの調子だと、私が当てたら間違いなく致命傷になる上に、弾が貫通して他に被害が出かねないし……」
開きっぱなしの扉から黒いドラゴンへの射線は空いているが、黒いドラゴンの向こうに誰もいないかどうかは確認できないからな。スコープ越しに見える限りは扉に向かって左右に分かれて戦っているみたいだけど、回り込んでいる人がいないとも限らない。
そこでふと気付いて、スコープの倍率を下げて塔の周り、ではなく、拠点が設置されている場所を確認してみた。そこは既に片付けられて何も残っていなかったので、次は非戦闘職の「申請者」が待機している、塔から少し離れた場所を確認する。
何を探しているかと言うと、戸籍上の妹だ。今絶賛戦闘中の塔の中にはいなかった。まぁ前に出る訳が無いだろうから、自分の事をどう説明したのかは別として、非戦闘職の側には入っている筈だ。
「…………」
なの、だが。
「っち」
小さく舌打ちをして「カテゴリーチェンジ」を発動。銃をリボルバー状態にしてベルトに収め、三脚をアイテムボックスにしまい、素早くその場を離れた。もちろん意識して「マルチハイディング」を発動し、「存在感知」にも重ねる事で可能な限り気配を消す。
……いなかったんだよ。非戦闘職の集団の中に。しかも念の為のつもりで確認した非戦闘職の人達は、虚ろな目をしている癖に妙に熱っぽいという奇妙な顔をしていた。明らかに様子がおかしい。
たぶん、満華の予想した「魅了系のスキル」は大当たりだったんだろう。随分とファンタジーな事が続いているが、あの集団催眠にかかったような様子はそれぐらいでしか説明できない。
「……どっちだ?」
あの隠密系騎士は「存在感知」に引っかからなかった。だから、「存在感知」に反応がない事は安心材料にならない。なのでまず距離を取った訳だが、相変わらず反応はない。
一応自分でも周囲の気配を探ってみるが、こちらも特に何も引っかからない。そして、戸籍上の妹が取る選択肢は2つだ。……とはいえ。
「あのスキルで、少なくとも私の居場所はずっと割れている筈なんだけどな……」
スキル「マーキング」。繰り返しになるが、あのスキルを不正に利用したとして取り上げられたのは、不正に利用した事で入手した経験値だけだ。だから、入力してみただろう私の名前は残っているだろうし、それを使って後を追いかける事は可能な筈だ。
もちろん、「マルチハイディング」がそのスキルを上回って、どちらが私か区別がついていない、あるいは私がいる事に気付いていない、という可能性も、あると言えばある。
けど、事態っていうのは大体、悪い方に考えておくものだろう。だから私の居場所は割れている、として。今私の方に来てない、って事は。
「安牌である私は放っておいて、同行者から狙う、か。……らしいと言えばらしいけど」
たぶん、満華の方に行ってるんだろう。




