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タイムアウト

「タイムアウト!!海清です!!」


 三春の3Pシュートが敵ゴールに突き刺さり同点、海清のリターンで再び攻守が入れ替わろうというところで笛が鳴った。


「やった...........!」


 強豪相手にタイムアウトを引き出させた。つまり一泡吹かせてやったのだ。3クォーターも残り2分を切って点数は36点で並び、滝蓮側の士気も高い。

 得点は同じだというのに、ベンチへ戻っていく各チームの様子は対照的であった。


「いいよいいよっ!みんなナイスファイトッ!」


 自陣へ帰ってきたメンバーを興奮しながら迎え入れたのは、キャプテンのアリサだった。立ち上がって全員とハイタッチをする。


「三春、さっきの3(スリー)よく打てたね。一瞬びっくりしちゃった!」

「今なら絶対外さないって思ったから。みんなが頑張って繋いでくれたからね」

「小春もやったじゃんか!初得点だったよな!」


 相変わらずハツラツな刹那が、小春の肩に腕をまわして喜んでいる。しかし当の小春は............?


「............!..................?......!............?」


 目は泳ぎ、口をぱくぱくとするだけだった。どうやらプレイ中の集中が解け、自我に帰ったらしい。


「ダメだこりゃ............」

「小春が2点決めたから同点まで追いつけたんだから。もっと自信を持ちなさいよ」


 水分補給をしながら、心が小春の頭を優しく叩いた。


「は、はい」


 このように滝蓮メンバーのほとんどが明るいムードだったが、ただひとり。絵馬だけは不機嫌な様子で相手ベンチのほうを睨んでいた。

 ここまでの絵馬の活躍としては誰よりもド派手なプレイで点を獲ったり、海清のキャプテンかつエースの千夏を相手に食らいついたりと、悪くないどころか上々であるはずだが。本人は何故か浮かれない表情だった。


「先生、絵馬っていつもこんな感じなんです。気にしないであげてください」


 敵ベンチを睨みつける絵馬、を見ている俺に話しかけてきたのは、アリサ...........じゃなく三春だった。生徒側から俺に話しかけてきたのはアリサ、小春、......あと刹那もだっけ、この3人くらいだけだったので、少しびっくりした。


「あー、わかったよ。じゃあほっとくか」



◇◆◇◆◇◆



 海清側のベンチではスターティングメンバー5人がベンチに腰掛け、他の選手たちは忙しそうに水分補給等の用意を回していた。

 そしてコーチの波原がその5人の前で腕を組みつつ立っている。コーチのメガネの奥に光る眼は、明らかに試合開始前より鋭くなっていた。数秒の沈黙のち、口を開いた。


「勉強になったわね」

「............!?」

「本来なら、あちらより海清の方が実績は上。それでも今は同点にまで追いつかれたわ。それは滝蓮が全霊をかけてこちらに挑んできてくれているということよ。このまま続ければ私たちは負けるわ」

「..................!!」


 静まり返る選手たち。


「公式試合で格下が強豪チームに下剋上を果たすなんてことはザラにあるわ。それなのにあなたたちが大会を勝ち続けていられたのは、ひとつひとつの試合を全力で挑んできたから。滝蓮の選手たちのプレイを思い出しなさい。想いの強さが勝負を決める、それは公式試合だけには限らないのよ」

「その通りです、波原先生」


 沈黙を解いたのは、キャプテンの千夏だった。その千夏の声に、隣に座っていた秋が目が覚めたように表情を変える。

 

「私たちは全力で試合に挑んでいるつもりだった–––––。だけど、心の何処かで"たかが練習試合"と胡座をかいていたのかもしれません。滝蓮(あの子たち)との実力の差は、ここで埋められていたんですね」


 千夏の言葉がチームを巡り、再び火を灯した。コーチは納得したように頷くと片膝をつき、座っている千夏に視線を合わせた。


「私はあなたたちが精神面でも劣っているとは一切思っていないわ。場数、技術、体力、精神。海清の持つ全てをぶつけ、挑みなさい」

「「はい!!」」


 1分以上にも感じるタイムアウトが終わり、試合が再開する。






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