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振り出しに

「さあここ一本!止めるよ!!」

「「おうっ!!」」


 心の号令が滝蓮のディフェンスを活性化させる。前線で当たりにいく刹那、中盤の三春、絵馬。これまで緊張で上手く動けなかった小春も動けるようになってきた。

 海清側はもちろんキャプテンかつエースである千夏へボールを回してきた。開幕から常に余裕のある表情でプレイをしていた彼女も、今はまさしく真剣そのものであった。ただし、熱くなり過ぎず、冷め過ぎずに。


(来る............!)


 攻撃姿勢(トリプルスレット)に入った千夏と対面する絵馬。両者研ぎ澄まされた集中力の先で、2人だけの駆け引きが生まれる。呼吸、目線、足のチカラの入り。

1............2............3。


「きたっ!!」


 何度も見てきたそのキレのあるドライブが始動した。やられまいと真横にピッタリと付き、レイアップシュートへの道を作らせない。千夏にはダブルチームすら簡単に突破してしまうほどの攻撃力がある。それは1クォーターで実証済みだ。だからシュートのステップすら踏ませないディフェンスをするのだ。


「ならば............これならどう!?」


 千夏はコートの端へ追いやられる前に急ブレーキをかけ、またしても跳弾のようなバックチェンジ(裏通し)ドリブルでディフェンスを引き剥がした。

 絵馬は追っていた勢いを殺しきれず、前へ出てしまう。が、絵馬とてこれで終わらせるハズが無い。滝蓮ナンバーワン運動神経の実力を、今こそ見せる時だ。外に出てしまった左脚で(コート)を強く踏みこみ..................


「あああッ!!」

「!!」


 身長175超えの千夏のシュートを完全に落とすまではいかずとも、絵馬の指先をボールに触れさせた。

 勢いは削いだ。シュートが外れることは確定、後はリバウンドの勝負だ。もちろんゴール下でポジションを競い合うのは、C(センター)である心と(6番)だ。


「今度は負けないわ............!」

「うっ......」


 スクリーンアウト勝負は心が劣勢の状態だった。早い段階で内側を取られ深く腰を落としており、こちらが中へ入ることを許してくれない。


「落ちたぞ!!」


 リングに千夏のシュートが弾かれ、ゴール下の両者がボールめがけて跳んだ。

 敵にスクリーンアウトをされてしまったが、これで心が負けてしまった訳ではない。とにかくめいっぱいに高く跳んだ。


(とりあえず弾けば誰かが取ってくれる!お願い!!)


 ポジションを確保できていた秋が空中でボールを掴みかける。そこを心が後ろから手を伸ばし、縦に弾いた(チップした)。もう一度ボールは選手の手から離れ、宙へ投げ出される。ボールの行く先にいたのは............


「小春っ!!」


 アリサがベンチから叫んだ。その声は向こう側にいる本人にしっかり届き、マークマンより先に走ってボールを捕らえた。


「よし!!やった!!」


 小春がボールを取ったことを見るや否や、アリサがガッツポーズ。


「小春!前出せ!」


 こぼれ球を手にした後に聞いた声の元を辿ると、既に敵陣へ走っていた刹那がいた。小春は向かってきている5番に捕まる前に、チカラいっぱい前へぶん投げた。


「刹那ちゃ......んっ!!」


 まだまだ肩が弱くて飛距離が足りずワンバウンドしてしまったが、コースは一直線に刹那へパスが繋がった。


「ナイスパス!」


 そのまま1人速攻(ファーストブレイク)が成立。33:36となった。


(3点差!追いつける!!)


 滝蓮全員の意思が一致し、ムードもかなり盛り返しただろう。滝蓮と海清、いつの間にか立場が逆転してしまっていた。いくら強豪校といえども、アウェイな立場に立たされれば小さなミスがちょくちょくと出てくるハズだ。その小さなミスが狙い目。逆に言うならば、相手のミスをここで拾えなければ逆転することは叶わずに立て直されてしまう。


「!?」

「とったっ!!」


 海清のガードである8番のドリブルを、刹那がスティールした。先ほどから敵8番は刹那の動きについていくことが困難であったようだが、ここで大きく隙を作り出してしまった。

 トップからのスティール、もう一度ファーストブレイクを狙って刹那はドリブルで駆け上がる。が、


「うわっ!またか......!!」


 ハーフラインを越えたところで、千夏が驚異的なスピードで刹那をチェックしてくる。ファーストブレイクは打ち止められてしまった。


「おっ?」


 一瞬、刹那の視界に青色が映った。滝蓮の色。すぐ後ろに走ってきている味方がいるということだ。すなわちセカンドブレイクをかける時。

 己の感覚に任せ、刹那はボールを走ってくるだろう味方の方向へリードパスを出した。

 

「ナイパス刹那!」

「三春先輩!」


 走っていたのは三春だった。スリーポイントラインでボールを受け取り、無人の敵陣へシュート。外すリスクをいとわず、中へ入って決める選択肢を切り捨てて放った3Pシュートは、綺麗な弧を描いて飛んでいった。


シュパッ


 三春の柔らかなシュートフォームから放たれたシュートが奏でる、ゴールネットの音。

 36:36。ついに振り出しに戻った。




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