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五合目

 なんとか自力で立ち上がることができるほどに回復したアリサ。シューズと飲みかけのペットボトルを手に、ゆっくりと扉の前へ歩いた。

 中から聞こえてくるのはざわめき、声援、ドリブル音、バッシュのスキール音。特に気になってのは、自身がコートに立っていた頃より大きく響いている観客の声援だった。


「どっちのだと思うよ」


 俺はアリサの思考を理解したうえで、雑に質問をしてみた。だって中からの音を聞いているだけで、全然扉を開けようとしないんだから。


「....................................」


 答えようとしないのは無理もない。自分が抜けたせいで相手に勢いがつき、追い上げムードに入るハズだった滝蓮側がアウェイになってしまった。そんな状況がいとも容易く想像できてしまうほどの盛り上がりなのだから。扉を開けたその先では、既に勝負は決してしまっているかもしれない。


「大丈夫だ。お前、あいつらと一緒に全国制覇を目指すって決めたんだろう?ならあいつらだって必死に食らいつきながら戦っているだろうさ」

「............そうですね!」


 キャプテンのアリサ(お前)がこんなけ頑張ってたんだ。そのお前が認めたチームメイトだって、この練習試合にかける思いは同じのハズだ。アリサが戻ってくることを信じて戦っている。絶対だ。


「開けるぞ」


 体育館の扉は少々重い。チカラの入らないアリサに代わって俺が開けてやることにした。

 ガラガラガラ............


 滝蓮のベンチ側の扉が開き、まず真っ先にアリサは得点板に目が動いた。


「27:36..................」


 見た瞬間はこの数字を記していたが、ひとつ。そしてふたつ。()()()の得点が捲られる。


「29:36ーーー!!」


 同時に鳴るタイマーの音が第2クォーターの終了を知らせる。


「なァ、言ったとおりだろう」

「はい!」


 ベンチに戻ろうとしたメンバー5人がこちらに気づき、試合の疲れをものともせず駆け寄ってきた。


「アリサ!」


 いち早くアリサの元へ着いたのは、副キャプテン心。


「どう............もう大丈夫なの!?」


 顔色は確かに倒れた時とは比べ物にならないほど良くなったが、問題は右足だ。あれほどの腫れが一瞬で引くわけがない。シートを貼って冷やしているとは言え、強く動かそうとすれば激痛が走るだろう。


「うん、なんとかね。それよりみんな、凄いじゃない!海清相手に7点差で前半を折り返すなんて!!」

「絵馬が頑張ってくれたからね。今はなんとかついて行ってるよ」


 三春が絵馬の方を見つつ、アリサとベンチに腰を掛ける。絵馬はわざとらしくそっぽを向き、アリサではなく三春の隣へ座った。


「アリサがいなくても点は取れるから。治るまで休んでなよ」

「わかったわかった。ありがとね、絵馬」


 絵馬の悪態じみたセリフに、アリサは笑って返す。普通なら険悪な空気になりそうなものだが、心や三春が止めないと言うことは慣れた光景なのだろう。


「小春も、ありがとね。どうだった?初めての試合は」


 出場時間としては誰よりも短いが、やけに息を切らしている小春。


「私............何もできなくて............すみません」

「だから気にすんなって言ってるだろぉ?そんなに悪くなかったって、小春。ゲホッ!ヤバッ、むせた!」


 腰に手を当ててスポーツドリンクを飲んでいた刹那がフォローを入れる。

 アリサは2人の様子から彼女のプレイの出来を予測した。


「小春。あんまり考え過ぎなくてもいいんだよ。とにかく走ればみんながカバーしてくれるから」

「............でも」

「私だって初めて試合に出た時は上手く動けなかったんだよ。大丈夫!小春なら1つ、この試合で良いプレイができるから!とにかく走ること!わかった?」

「......はい!」

 




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