主将居ぬ間に
「......!また............!」
戦力を欠いた滝蓮の穴を正確に狙ってくる。千夏のドライブでゴール下をかき乱し、その攻撃に合わせにくる5番がパスを受けてシュートを決めてしまう。だからと言って3線の心がヘルプに行こうとすれば、そのまま千夏にシュートを許してしまう。
対してこちらのオフェンスは、絵馬の個人プレイを周りがフォローしつつ得点を重ねていっている。点差10点と8点を行き来しながら、2クォーターも残り3分を切っていた。
「ごめん、私が先に千夏止めてたら良かったんだけど」
「気にしない気にしない!さ、絵馬ももう1本頼むよ」
「了解......!」
心がチームのメンタルケアをしつつ、滝蓮の攻撃へ。
(アリサと比べると、絵馬のディフェンスはザルね............ただ、オフェンスに関して言えば)
「絵馬先輩!」
トップの刹那から右ウィング絵馬へのパス。
絵馬は大きくボールミートを踏み、マークマンの千夏から攻撃の助走に必要な距離をとる。
(絵馬のほうが上!あなたのドライブ、2度も決めさせはしないわ!)
千夏側からして、ここは絵馬がドライブを仕掛けることが予想しやすいものだ。あれだけ派手なプレイで失点しているのなら、海清選手の脳裏には絵馬がバリバリのドリブラーであることが焼き付いているハズだからだ。ドリブルをついて攻めてくるのがわかっているなら、ミートで開けられた距離を詰めようと前に出てしまうなんてヘマはしない。
「かかった!」
「!?」
その思考を逆手に取り、絵馬は3Pエリアからシュートを放った。千夏がドリブルで抜かれることを警戒して距離を詰めなかったために、ほぼフリーの状態での3Pシュートだ。
「まさか............」
反射的に伸ばした千夏の腕はボールを捕らえることができない。そして頭上を通り越えたボールは––––––––
ガシャッ、と三春のシュートと比べて大きな音を立ててリングを通り抜けた。
「決まったっ!!」
得点は27:34。
10、8点差の壁を越えたことにより、流れはこちら滝蓮に傾きつつあった。が、ここですんなり追いつかせてくれるようなチームなら県の上位に登れるわけがない。アウェイの状況でこそ自分たちのプレイを成立させる芯の強さが備わっているのだ。
「..................!」
またしても絵馬が抜かれる。滝蓮のアリサ・絵馬と違い、試合開始からここまでずっと千夏をメインに据えたオフェンスをしていると言うのに、まるで彼女にスタミナ切れを感じさせない。ここに来て一段とキレのある動きだ。
「小春っ!」
パターンも同じ。逆サイから5番が攻め込んでくる。
(アリサ先輩や絵馬先輩、刹那ちゃんもみんな頑張ってるのに、私だけ足手まといなんて............そんなの嫌だ!)
緊張で動かぬ体にムチを打ち、小春は懸命に5番を追った。
ディフェンスのチェックが付くより数秒早く、5番はハイポストでボールを受ける。小春よりひとまわり身長が高い5番でも、ディフェンスが迫ってくる中でのシュートの成功率は低くならざるを得ない。先程の絵馬と千夏の一戦と同様、距離を詰めてくるディフェンスにはドライブを仕掛けるのが定石だ。
つまりこのシュート体勢は..................
「あっ......!!」
5番に追いついたはいいものの、見事にシュートフェイクに引っかかってしまった小春。一度跳んでしまえばマークマンを追うことは不可能、ドライブを許すことになる。
シュートモーションを打ち止め、ドリブルをついた瞬間に–––
「よっと!」
「なっ!?」
後ろから刹那がボールを外へ弾き出した。今までのパターンから5番がフィニッシュを決めにくることを察知し、千夏がドライブした時から動き始めていたようだ。
「へへへ、バレバレだぜっ!」
不意打ちに驚愕する5番をよそに、ルーズボールをに飛びついていく刹那。思いのほか強く弾き過ぎ、ボールは元気良くコートの外を目指してハネていく。それを追いかける刹那だが............
「白ボール!」
取ることはできなかった。
「くそうっ!」
「いや、ナイスカットだったよ刹那。ドンマイドンマイ!」
頭を抱えて悔しがる刹那。と、交代した時よりさらに固まってしまう小春。
またしても自身のミスがチームのピンチを招いてしまったことが、彼女の気に触った。そんな小春の頭にわしっ、と心の手のひらが覆い被さった。
「小春もそんなに暗い顔しない!今のは小春が5番のシュートをちゃんとチェックできたから、ドリブルに行こうとしたところを刹那がカットできたんだよ。最初から全部上手くできる人なんていないんだから、そう落ち込まないこと!」
「そうだぞっ、小春!」
2クォーター、残り1分。




