第3クォーターの作戦
前半戦を終え、ハーフタイムを過ごす選手たち。ひとり黙々とシュートを打ち続けている絵馬や、3Pシュートを打つ三春、それをリバウンドしてパスを出す心と小春。ベンチ方面では、刹那とアリサが休憩している。
「キャプテン、足は大丈夫なんですか?」
問いかけたのは刹那。タオルで顔をぬぐいつつ、右隣でボールハンドリングをしているアリサの方を向いた。
「うん、もうだいぶ痛みは引いてきたかな」
「でもギリギリまで出させねぇからな」
「あ、ヒゲせんせー」
ここで今まで救急道具の片付けをしていた俺の登場だ。
「わかってますよ!」
アリサはスネたように返事をする。仕方ねぇだろう。お前ならケガのことをチームメイトに押し隠してでも、試合に出ようとするだろうからな。
「とにかくお前は4クォーターまでベンチで我慢しとけ。またケガされちゃたまったもんじゃねえからな」
「そうですよキャプテン!今のところうまく相手にも食らいついてってるんです!絵馬先輩が凄いんですよ!」
「ふぅん、絵馬がねえ..................」
座ったまま膝に両肘をつき、コートでシューティング中の絵馬を見つめるアリサと俺はたぶん、同じことを考えていただろう。
(今度は絵馬の調子が良すぎてダウンしちまう............なんてことはないよな............)
そんなこんなでハーフタイムも残り1分。コート内でシューティングしていた選手たちが各チームのベンチへ戻っていく。海清はコーチが後半の作戦を指示しているんだろうが、俺にはそんなことできやしない。しばらく場を離れていたアリサも具体的な指示が出しづらいため、副キャプテンの心がチームを指揮することになる。
「............よし、みんな準備はいい?」
「「おおっ!」」
「私たちがすることは、とにかく走って点を決めること。絵馬と三春を軸に行くよ。相手は4番と5番を中心に攻めてくるから、ヘルプでカバーする。ヘルプの後の穴埋めも忘れずにね。シュートチェックの後は、私が絶対にリバウンド取って速攻に繋ぐから。じゃあ、行こう!!」
タイマーが鳴り、両チームがコートへ入る。
「青ボールで再開します!」
サーブ権が滝蓮側へ移ったことにより、こちら側からのスタートだ。Gの刹那が審判からボールを貰いに行く。
「小春............」
「!」
開始される前、ほんの一瞬、心は小春に小さく耳打ちをした。それを聞き終えた小春は、
「わ、わかりました!やります!頑張りますっ!」
そして始まった第3クォーター。刹那が三春にボールを入れ、リターンして刹那がトップでボールを持った。
開幕、刹那が選んだ攻めのルートは絵馬の方だ。絶好調で前半の勢いがある絵馬で攻めない手は無い。右サイドへスライドし、パスを出そうとしたが............
「くっ............!」
絵馬のマークマンである千夏がパスコースをディナイしている。スキマなくピッタリと距離を詰め、腕を伸ばして完全にルートを塞がれ、これではパスを出すことができない。カットしようと動いても、そのフットワークが逃げることを許さない。滝蓮No.1の運動神経を持つ絵馬ですら、振り切ることができなかった。
「潰しなさい。相手の攻撃の手口を全て消していくのよ」
海清中コーチ、波原の眼鏡が静かに輝いた。




