表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/25

あくまで俺は

 さてさて、2クォーターが敵キャプテンのシュートで始まったわけだが。


「んにゃろ、こんなディフェンスぶち抜いてやるっ!!」

「刹那、無理しないで!」


 こちらはコートの半分も進めずにいた。当然シュート本数もゼロ。PGポイントガードである刹那が果敢にドリブルで敵を抜きにかかるも、コートの4分の1を過ぎた辺りで捕まってしまう。

 1年生でありながら平面の速さがズバ抜けている刹那。その足の速さを存分に発揮し、ディフェンスを1人抜く。しかし、1人を抜いてもまた次のディフェンスが現れるのだ。2人目が助け(ヘルプ)に向かうことでできた穴は、抜かれた1人目の選手が埋める。

 まただ。最後にはダブルチームを組まれてボールをスティールされる。


「くそっ............!」

「みんな戻って!」


 勝ち越すつもりで始めた2クォーター。1分を過ぎる頃には、逆に点差は開いていた。

 選手のプレイの出来を大きく左右する、試合の流れ。試合開始直後こそ、アリサの特攻によってできた流れのおかげで滝蓮は格上のチームに食らいつくことができていた。だが、クォーターの区切りによってそれはリセットされてしまった。そこから海清のムードを引き寄せたのが、あのセットプレイというわけだ。あとはチームの実力がものを言うのみ。


「12対22。先生!」

「ああ。10点差だな」


 ベンチにいる小春もこの危機(ピンチ)を肌で感じているらしく、なにか訴えるようにこちらへ顔を向けてくる。


「タイムアウトをとったほうが..........」

「タイムアウト?作戦会議みてーなもんか?」

「は、はい。先生、お願いします........!このままじゃ..........」

「俺が申請すんのか?」

「はい!」

「はぁ............」


 たぶん。今のこの俺は凄くひねくれていた。


「なあ、お前ら、全国制覇を目指してんだろ?」

「................?」


 急な話題の転換に、小春はまたしても驚いた表情をする。


「相手は県レベルのチームなんだぜ?全国行く奴らなら、これくらい自分たちでなんとかできるもんだろう」

「.................」

「それに言ったハズだぞ。あくまで俺は観客。穴埋めでここに座ってやってるだけだ」


 大人げねえ。まだまだ中学生で、俺の半分以下も生きてないガキたちに現実を知らしめるために。気弱な小春が反論できないことも知ってる。

 でも、合ってるだろう。自身らの実力以上の目標は、絶対に達成することはできない。あいつらにはいかに自分たちが無謀な目標を掲げてんのかを、この練習試合をもって思い知ってもらおうじゃねえか。


『ナイッシューー!!!』


 こうしている間に12対28。もう決まったようなものだろう。

 滝蓮メンバーには、もう試合開始時のような闘志は感じられない。海清の雰囲気に押し潰されてしまうのも時間の問題だろう。動きも控えめになってきている。彼女たちももうわかっているだろう。身の丈に合わない目標なんて目指すだけ無意味なのだと。

 ボールは千夏から、カッティングしてきた7番へ。

 そのままジャンプシュート––––––––––


「はああっ!!!」

「!?」


 海清一色の応援がこだます体育館に、バチン。バレーボールのスパイクのような音が鳴った。

 ボールは外へ。


「みんなどうしたの!?まだ試合は終わってないんだよ!!?」


 ブロックから降り立ったのは、滝蓮中学キャプテンのアリサだった。


「アリサ...........」


 心、絵馬、三春。刹那、小春。皆諦めの方向へ気持ちが傾いてしまっている。叫ぶアリサへ集まる視線は弱々しいものだった。


「私たち、全国制覇するって言ったハズだよ!まだスタートにすら立ててないのに!こんなところで諦めちゃっていいの!!?」

「..............でも」


 『無理だよ』

 アリサを除いた5人、心の中ではそう思ってるだろう。けれど、言葉として吐き出せなかった。強豪校相手に16点差をつけられ、無慈悲な現実を見せられたとしても。口にしてしまえばそれで終わるのに。


「私は絶対に諦めないよ!頑張るって決めたから!全国制覇するって決めたから!」


 (ベンチ)から聞いていると、これは自分に言い聞かせているようにも聞こえる。それもそうか。諦めの感情に襲われているのは、キャプテンであり1人の滝蓮メンバーでもあるアリサも同じだろう。

 脆くなる闘志をムリヤリ奮い立たせているのは、キャプテンという地位。チームを率先して引っ張っていかねばならないという役目からだろう。

 しかし、現実は現実。ここから復帰するなどとドラマチックな展開なんて、そう簡単に起こるわけでもない。

 わけでもないが。わずかに、滝蓮のメンバーの眼に光が戻った。


「さあ、まず点差を一桁に戻そう!」

「「おおっ!!」」


 試合展開としては、まだシュートを1本ブロックしただけだ。だが、諦めムードのやられるがままだった時とは一転。

 海清の応援に割って入るほどの大声が上がった。


「............................」


 俺はベンチでただ見ているだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ