旅立ち
こなさねばならないタスクは山積みだ。
普通は、普通にギルドが創られて、その後の実績で認定ギルドになるものだから、大体は事前に準備が始まって、今のようにてんてこ舞いになることはない。だが、今回はギルド創設と認定が一緒になって、しかも事前に知ることもできず、長い時間をかけてこなすタスクをわずかな時間でこなしていかなければならない。
俺は朝からフィリア地区と領主館と家とを行ったり来たり。クロハもあっちへこっちへ忙しく動いている。
フィリア地区にあった前のギルドホームは解体して、新しく小さな家屋を建築する予定でいる。
既に手付金として支給された金は底をついており、今はアデウス討伐の報奨金を私費として投入している。前のギルドによって疲弊したフィリアの街からさらに税を取ることは避けたかった。
その日の夜に開かれたギルド評議会ではギルド『シュルツ』の正式な創設と認定が認められ、マスターは俺、会計士としてクロハの名前を入れた。
その後、直ちにチスタ、リュザ、シュエのギルド加入手続きを行い、彼らはこれから堂々と街を闊歩できるようになった。
次の日には街の主だった人々を集めて顔合わせを行う。そこで俺が彼らから頼まれたのは、街の復活、ただ一つである。前のギルドの下では相当な腐敗が進んでいたらしく、彼らの顔は皆青かった。
俺は30人ほどいた彼らの中から6人を選び、簡易の議会を結成した。6人は名声、人柄、信頼どれも厚く、この議会によってフィリア地区を運営していくことでフィリアの復活を約束した。
ただし、俺はこの6人だけではこの大きなフィリア地区を動かせないのはよくわかっている。が、大規模な統治機関を組織し、運営する力も金も俺にはない。そこで、ファティオとシルフ族議会と協議し、フィリア地区は族長及び議会の間接統治を受ける形になった。族長の決定や議会の可決をフィリア地区議会の6人と俺たちが判断し、フィリア地区も批准するかどうか決定する。よってレイヤー管理も一元化され、チスタら3人はシルフ族直属のレイヤーとして登録された。
俺は取り敢えず議会に権限の大部分を与え、彼らを実質的なトップとした。俺のような若輩には荷が重すぎる。それに、まずは彼らの信頼を得ねばならない。
そんな騒ぎが一息ついた頃、家の居間で本を読んでいた俺を、外からクロハが呼んだ。
俺が玄関の扉を開けると、そこにはクロハ、チスタ、リュザ、シュエの4人が立っていた。
「どうした?」
俺は疑問形で聞いたのに、
「セイトは行かないの?」
疑問形で返された。
「行くって、何処へ?」
するとクロハは、はっと息を飲むような底の無い眼をして、
「輝石を集める旅に」
俺は4人を順に見回す。
彼らの眼は、期待と興奮に彩られている。そして、お前も来いよ、と告げる。
「…行くに決まってんだろ!」
空は雲ひとつない快晴。風は穏やかで蝉の声が降り注ぐ。白熱した太陽が俺たちを照らし出し、その先の道を示す。
「行くか」
まだまだ長く続く途の半ばに俺たちはいる。
「頼むぜ、ギルドマスター」
リュザは笑う。
「任せとけ」
一歩を踏み出す。この一歩がいつか俺たちを世界の中心に運んでくれる。
信じろ。自分を。
俺たち5人ならどんな苦難も乗り越えられる。
復活の兆しを見せるフィリア地区を後にして、目指すは東の地、ウンディーネ領。
「よっしゃー!楽しんで行こう!」
俺たちは笑顔で領都を後にした。
執筆後記までお付き合いください。




