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2.謁見

城に行くと今日の挨拶は予定に組まれていたらしく、さほど待つこともなく謁見の間に通された。

玉座には貫禄の増した王と変わらず美しい女王が鎮座している。そばに控える宰相以下、大勢の高官たちが見守る中、カサネとスオウは着任の挨拶をした。

「本日、神官学校の教師として着任いたしました。スオウでございます。」

「おなじくカサネでございます。」

「頭を上げなさい。見習いたちがよき神官になれるよう指導を頼みます。」

「はい。」

型どおりの挨拶が済むと、王が口を開いた。


「久しぶりだな。スオウ、カサネ。陽光ひかりの神官と琥珀の舞姫を教師に迎えられて、トゥーリアは大喜びだ。」

「そうなの!ごめんなさいね、もっと早く呼び寄せたかったんだけど、なかなか難しくて…。」

「女、女王様。もったいないお言葉で…。」

「トゥーリアと。」

「え?」

戸惑うカサネにエルトゥーリアはにっこり笑った。

「トゥーリアと呼ぶように。」

「は、はい。トゥーリア様。」

辺りがざわめいた。

エルトゥーリアは通常エリーと呼ばれる。トゥーリアと呼ぶのは、極々限られた者だけだった。亡き両親、夫のヴァナート王、アカネ、カイとミオ、カルラとライト、そしてスオウ。

カサネは今その一員に加わったのだ。

スオウとカサネは、わざわざ女王が呼び寄せたお気に入り。しかもトゥーリアと呼ぶことを許された特別な重要人物として、貴族たちに認識された瞬間であった。


謁見後、二人は王と女王の私的な居間へと通された。今ではアカネに代わって王子たちの家庭教師となったカルラが迎えてくれた。

カサネがはしゃぐ側でスオウはちょっと難しい顔をしている。

「どうかした?」

「う~ん。周りが煩くなりそうだ。カサネ、決して一人にならないで。」

首を傾げるカサネに、カルラが説明する。

「カサネは、トゥーリア様がわざわざ呼び寄せたの。しかも、トゥーリアと呼ぶことを許されたのでしょう?あなたを利用して王と女王に近づこうとする人達が出てくるわ。」

「もちろん僕も守るけど、一人になるところを狙われるかもしれないから…。」

カルラとスオウの言葉に、カサネは頭をかかえた。大神殿に戻ってきたとたん、これだ。ラウでの平凡な神官生活が懐かしい。


「あら、なに話してたの?」

エルトゥーリアが、楽しそうに入ってきた。その後から、王と宰相が続く。最後にお茶の道具をカートに乗せた女官長が扉を閉めた。カサネとスオウがいない間に、宰相と女官長は代替わりしていた。二人ともまだ20代と若い。

「ええ、周りが煩くなりそうなので、カサネにその注意を…。」

スオウの答えに、エルトゥーリアは眉をひそめた。

「む~、それがあったわね。スオウはいいとして、問題はカサネよね。」

「一人になるなとは言われたんですけど…。」

「それが一番確実だろうな。気を付けるんだよ、カサネ。」

王にまで心配され、カサネは恐悦至極だった。


ヴァナート王がふとスオウを見た。

「後任の神官の様子はどうだ?」

「はい、すっかり独り立ちしました。おばば様もまだまだ元気ですし、問題ありません。」

カサネが目を丸くして、スオウを振り返る。

「後任いたの?」

「いなかったら、ここに来れないよ。年下の幼馴染でね、この前妹のヒイロと結婚した。」

「ええっ、ヒイロちゃん結婚したの!?」

うわぁあ、先こされた~と騒ぐカサネとなだめるスオウをエルトゥーリアが楽しそうに見ていた。


神殿へと戻り、神官たちや見習いたちにも挨拶をする。神官の多くは、在学当時からいた人達だったので、気が楽だった。

見習いたちは、琥珀の舞姫と陽光ひかりの神官に指導を受けられることに感動している。カサネは気恥ずかしくなってしまった。

夕食も終え、与えられた神官用の部屋で一息ついた。明日から今いる上級生の授業が始まる。支度を終えたら、そのまま休みたいところだが、もう一名挨拶する必要があった。

消灯時間が過ぎ、見回りをすませた。神殿中が寝静まる中、カサネはそっと部屋を出た。


「おじいちゃ~ん!」

6年ぶりの再会に、クロスは起き上がり、カサネとスオウに目をやる。

「…老けたか?」

「!大人になったっていうの!!」

「髪型のせいじゃない?カサネ。」

スオウに言われたカサネは自分の髪を見た。神官になってからおさげを止めて、一本の三つ編みをぐるっと頭に巻いている。年配の女性に多い髪形ではある。

「そうかな~?」

まだ納得のいかないカサネはおいておいて、スオウはクロスと話し始めた。


「6年経ちました。僕もカサネも24です。」

「意外とかかったのう。」

「もう少し早いと思ったんですが、諸事情がありまして。」

スオウが苦笑した。

「まぁ、そんなことはいいじゃろ。それよりもな、嬢ちゃん、ぼん。」

クロスがおいでおいでと二人を呼ぶ。

「なあに?」

クロスの目の前に立つと、ふわりと頭をなでられた。


「おかえり。」


クロスの目は、これ以上は無いほど優しく細められていた。

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