↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/77

30.別れの時

《鏡の舞》の奉納は終わったが、舞い手の役目はまだ終わらない。大神殿入口に掛けられる肖像画の作成である。いままで、練習に当てていた午後の時間、今度はモデルとなるのであった。

衣装を着けてずっと動けないのかと思ったら、それは衣装のスケッチをする時だけだと言われて、ほっとしたカサネとスオウであった。

40歳くらいの女性の画家は話好きで、どちらかというと楽しい時間だった。

「皆が仕事中なのに、私たちだけこんなに楽していいのかなぁ?」

カサネがぽろっともらすと、画家は笑う。

「《鏡の舞》の練習は大変だったでしょう?ならせば一緒よ。」

「それもそっか。」

「じゃぁ、心置きなく楽しもうか。」

カサネとスオウが笑いあう姿を、画家は目を輝かせながらスケッチしていった。



卒業まで二ヶ月を切ったこの頃、見習いたちの進路が次々決まっていった。多くは実家の神殿にもどるが、研究の道に進むものや、実家と関係ない神殿に勤めるものもいる。

ササラは研究者として大神殿に残ることになった。

「ササラ、ここに残るんだぁ。」

「ええ、希望が通ったの。」

「そっかぁ、そう言ってたもんね。あ、うちの兄、なんか会ったら使ってね?あんなんでもいないよりましだと思うから。」

「カ、カサネ…。」

「そういえば、ミサキもここに決まったんだってね。わたしもここに残りたかったなぁ。」

「…カサネはご実家を継ぐという大事なお仕事があるわ。私はここにいるから、いつでも来てね。研修とかで来ることあるでしょ?」

「うん…。」

「さ、早く食堂に行かないと食べそびれちゃうわよ。」

「そうだね、行こう!」

カサネは前を向いて歩き出した。



「そうか、もう卒業か。早いのぉ。」

竜の姿のまま寝転んでいたクロスが目を細め、ゆっくり頭を上げた。最初はびくついていたカサネだったが、すぐに竜の姿のクロスに慣れた。

「うん、多分これるの今夜が最後だと思う。」

そう言って、クロスの首に抱きついた。

「研修とかで来ることもあるから、その時にはまた来るよ。」

スオウがクロスの足をポンとたたく。

「ほう、じゃぁ大人になった嬢と坊(ぼん)に会えるのを楽しみにしていようかの。なに、寝ておればあっという間じゃ。」

ふぉふぉふぉとクロスは楽しそうに笑った。

名残を惜しみながらクロスに別れを告げる。

「琥珀の嬢ちゃん、光の坊(ぼん)、楽しかったよ。またの~。」

クロスは、いつも通り二人を送り出してくれた。


女王は、二人の舞にとても感動したの!と、肖像画を陰陽の一対の隣に掛けることを決めた。

更に、神官の認定式の後行われるカルラとライトの結婚式で、祝いの舞を舞ってほしいと依頼した。

「神官としての初仕事よ!」

毎週のようによばれるようになったお茶会で、嬉々とした女王が告げる。皆が諦めろという目でカサネとスオウを見ていた。

神官長にはオッケーとってあるから、と言われれば、二人が否と言えるわけもなく。

顔を見合わせ「お受けします」と、頭を下げるしかなかった。


認定式の朝、カサネとスオウの肖像画が、大神殿の入口、陰陽の一対の隣に掛けられた。うわぁっと声があがる。

化粧をしたカサネを守るようにスオウが斜め後ろに立っていた。二人とも微笑んでいる。大きな袖で見えないが、ポーズをとった時にカサネの腰を抱いていたことは、絶対口外しないと二人で誓ったのは内緒だ。

「は、恥ずかしい…。」

自分の肖像画を皆に褒められるのは、非常に居心地が悪い。きょろきょろしていると、カサネはミサキと目が合った。

「ふ~ん、さすが専門家ね。まあまあ見られるじゃない。」

「あ、ありがとう?」

「陰陽の一対には負けるけど、あなたたちの舞、よかったわよ。じゃ。」

それだけ言うと、ミサキはぷいと行ってしまった。あっけにとられたカサネだったが、やがて笑顔を浮かべたのだった。


エルトゥーリア女王から、一人ひとり神官の認定証を授けられ、認定式は無事終了。そのままカルラとライトの結婚式へと移る。

神官服のままでもカルラは美しく、うれし涙も幸せそうな微笑も皆を感動させた。多くの女性がもらい泣きしたほどだった。

祝いの舞は、カサネもスオウも笑顔だった。神に捧げる《鏡の舞》と違い、新婚夫婦に心からの「おめでとう」をこめて舞うものだ。

神殿にいる皆が笑顔になって、結婚式はお開きとなった。


翌日、新たに神官となった者たちは、それぞれの場所へと発っていく。大陸中に散らばっていくのだ。

ハーンはすでに出発していた。手紙かくよ~と、いつものようにあっさりと。

カサネとスオウは途中まで一緒なので、同じ馬車に乗る。荷物を積み終わり、最後の挨拶をするべく、見送りの神官たちに向かう。

「お世話になりました。」

二人で頭をさげる。

「元気でね。」

「いい神官になってね。」

「がんばって。」

次々とはなむけの言葉がかけられる。

「神官になったからといって手を抜かない。一生勉強ですよ。」

アカネは最後まで厳しい。

「あなたたちに出会えた事は、とてもうれしいことでした。」

「君たちの《鏡の舞》は、忘れられないよ。すばらしかった。」

カルラとライトは感慨深げだ。

「二人とも、元気でね。」

「ササラもね。手紙かくね。」

「セナさん、お世話になりました。」

「ああ、道中よろしくな。」

最後にササラと兄に挨拶をして、馬車に乗り込んだ。


がたん、と馬車が動き出した。

カサネとスオウは身を乗り出して手をふった。皆が振り返してくれる。

「またね~。」

ひときわ大きく手をふった後、二人は大神殿に別れを告げた。


これで、見習い編終了です。

スオウ視点をいくつか入れた後、第2章に入ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。