28.ざわめくココロ
新年まであと二月あまりとなった頃、衣装合わせが行われた。新調するのではなく、毎年その年の舞い手に合わせて調整するのだ。装飾品もこの時納品され、衣装と合わせられる。
いつもより枚数も重量も多い衣装に身をつつんだカサネは動きがぎこちない。
「う~、緊張する。」
「まだ、終ってませんよ。」
冠をカサネの頭にのせながら、カルラがたしなめる。カサネはいつもはおさげの髪の毛を今日はおろしていた。冠と髪飾りにあわせた髪型を、今日決めるのだ。顎の下で冠の紐が結ばれた。
「…紐より前を髪飾りでとめましょうか?」
「そうですね、とめる位置は…。」
カルラと手伝いのササラが、あれこれ試している。カサネはされるがままだ。
「これでいいでしょう。」
カルラが満足げにうなずいた。結局ネックレスがあるので、髪飾りは低い位置にすることになったのだ。
「終った~。」
カサネが情けない声をだすと、ササラが笑った。
「カサネ、本番ではお化粧もするのよ?わすれないでね。」
「さ、カサネ。これから、寸法を合わせます。まっすぐ立って、動かないで。」
「ひえ~!」
カサネの苦行はしばらく続くのだった。
隣の部屋で採寸していたスオウは、カサネの騒ぎ声にくすりと笑った。採寸しているライトも苦笑している。
「女性は男性より身につけるものが多いですからねぇ。髪型やお化粧も大変でしょうし。」
ブレスレットを届けに来た店主がにこやかに言う。
「男でよかった。」
スオウのこぼしたつぶやきは、そこにいた全員を笑わせた。
スオウの採寸は、あっさりと終わり、衣装を脱ぐ前に、カサネを見に行こうという話になった。店長もネックレスを身に着けたところを見ていないので、同行する。
扉をたたくと、ササラが出てきて、一行を招き入れた。
「スオウ、よく似合ってるわよ。カサネもすごく似合ってるの!」
ササラの言葉はうそではなかった。
白い長衣には銀糸で刺繍が施され、飾り帯は銀糸の刺繍に所々輝石が散りばめられている。その下の長衣は一見白の無地だが地模様の入った贅沢なものだ。袖もズボンも舞いやすいようにゆったりとしている。
艶やかなチョコレート色の髪に縁取られた顔はいつもより大人びて見え、琥珀の瞳が輝いていた。
スオウは一瞬言葉を失った。
彼女こそ、まごう事なき我が半身。
「きれいだ。よく似合っているよ。」
スオウは心からそう言った。
カサネも衣装を身に着けたスオウがまるで昔絵本で見た始祖王のようで、思わず見とれてしまった。濃い金髪に碧の瞳。銀の衣装に冠をかぶり、目の前に立っている。自分と同じ衣装とは思えないほど美しい。
「スオウも似合ってるよ。始祖王みたい…。」
思わず口からこぼれてしまった。いつも以上にかっこいいスオウと先程の言葉にどぎまぎする。
「光栄だな。」
スオウの笑い声で、人々が動き出した。
「並んでみて。バランスをみるわ。」
「カルラ、袖は同じように手が出るように…。」
細かい採寸が続けられる。
ササラとハーンが助手として動いていた。
「陰陽の一対も美しかったが。今年の二人も負けてないねぇ。」
店主がそんな感想を述べていると、セナが入ってきた。
「おお、やってるな。悪いが、取材だ。」
「カルラちゃん、スオウ君!衣装合わせの取材よ~!」
例のごとく、テンションの高い記者が飛び込んできた。
カサネとスオウはまたかとげんなりしつつも、ひきつった笑顔で迎えるのだった。




