20.《閑話》女王様のお茶会2
季節はめぐり、忙しい新年の儀式その他もつつがなく執り行われた一月末。エルトゥーリア女王は、心待ちにしていたお茶会を開いた。
「こうして一度に皆の顔を見るのも久しぶりだわ~。」
と、ご機嫌である。
「それぞれ忙しかったからな。」
ヴァナート王は片肘をつきながら、お茶を口にした。
「ちょっと、ヴァン!お行儀悪い。」
エルトゥーリアが夫をぴしゃっとたたく。
「エルトゥーリア様もですよ。」
アカネの言葉にエルトゥーリアは決まり悪そうに座りなおした。子供の頃家庭教師だったアカネにエルトゥーリアは頭が上がらないのだ。
アカネは、お茶をおくと、すっとヴァナートとエルトゥーリアを正面にするように向きを変えた。
「お話のありました、お子様たちの家庭教師の件、受けさせていただきます。」
「よかったぁ!アカネ先生なら任せられるわ!」
「子供たちをよろしく頼む。」
王と女王は満足そうだ。
「アカネ先生の後任は決まっているのですか?」
ミオが興味深げに聞いてくる。
「ええ、ライトを呼び寄せます。」
「まぁ、陰陽の一対がそろうのね!?」
エルトゥーリアは興奮気味にカルラを見る。
「陰陽の一対って、あの新年に舞う鏡の舞の…?」
ミオはおぼろげな記憶を引っ張り出す。《鏡の舞》は神官学校の上級生から選ばれた男女一組が1年がかりで修得し、新年の儀に奉納するのだ。毎年、その舞い手に二つ名がつけられるのだが、陰陽の一対のすばらしさは日の隠れ里にまで噂が伝わってきた。
ミオの言葉に、カイがぽんと手を打つ。
「たしか10年位前に千年に一度の舞い手と賞されたな。」
「そうよ、カルラとライト!すばらしかったんだから~!」
力説するエルトゥーリアに、ヴァナートが微笑む。
「話には聞いていたが、見てみたいものだな。」
「あら、ヴァン、見てなかった?え、カイとミオも?じゃぁ、最初はカイとミオの結婚式で…。」
「エルトゥーリア様。」
「すみません…。」
エルトゥーリアの暴走は、アカネの一言で止められた。
「それはそうと、ちゃんと伺っていなかったのですが、今年の舞はいかがでしたか?」
当事者であるはずのカルラは、何事も無かったかのようにスルーして、教師として聞いてくる。
「うん、ちゃんと舞えてたわね。そこそこってところかしら。」
「まぁ、及第点だろう。」
王と女王の答えにカルラは表情を変えずにうなずいた。
「で、来年の舞い手は決まったの?」
エルトゥーリアは、美しい幼馴染に問う。急に話題を変えたのは、ちょっと動揺してるからだと、長い付き合いの女王は知っている。
カルラはアカネがうなずくのを見て、答えた。
「はい、カサネとスオウでいこうと思っています。」
「まぁ、やっぱり!」
「実力的に抜きん出ていますし、ほぼ決まりです。」
「そうね、将来のことを考えても、それがいいわ。舞い手の名誉はいい箔付けになるし。」
「将来…ですか?」
カルラがその白銀の髪を揺らしながら、小首をかしげる。
「あの二人にはいずれ大神殿に戻ってきてもらうわ。」
「…そうだな、それがいいな。」
女王の言葉に王も同意する。王家の秘密を知りすぎている二人。目の届くところにおくことは、彼らにとっても王家にとっても安全だ。
「お二人とも、カサネとスオウをかなり気に入っておられますね。」
アカネがちょっと驚いている。
「カサネを見ているとね、旅してた頃のミオを思い出すのよね~。なんか、かまいたくなるの。」
「それは言えるな。」
と、二人はミオを見た。
「ミオさん…ですか?私は、幼い頃のトゥーリア様だと思うのですが。」
「え、私?」
「ああ、そういえば、そうですねぇ。」
女王の幼い頃を知るカルラとアカネはうなずきあっている。えー、という女王に二人はあんなことがあった、こんなことがあったと証拠をあげてゆく。必死に反論する女王の隣で王が面白そうにそれを聞いていた。
「スオウのタイプはアレか。あいつ初恋から逃れられないらしいな。」
カイのつぶやきに、ミオは苦笑しながらも同意してしまうのだった。




