21.上級生になったらば
またしても王家の秘密を知ってしまった、カサネであったが、王と女王に報告した後は自分の中で無かったことにして、日常へと戻っていった。
4人で遊んで、勉強して、ミサキに絡まれる。時々スオウと女王様のお茶会に呼ばれ、夜中にこっそりクロスに会いに行く。まずまず平和(?)な見習い生活を半年過ごし、無事に上級生に進級した。
上級生2日目、カサネは大きなため息をついた。
「そんなにため息つくと幸せが逃げちゃうよ?」
隣を歩くスオウがからかう。
「だってさ~、舞い手に選ばれたのはうれしいけど、何で取材受けなきゃいけないの~?」
昨日《鏡の舞》の舞い手の発表があり、めでたく二人が選ばれたのである。二人の実力は他に並ぶもの無く、意義を唱える者はいなかった。あのミサキですらも、認めたくないけどあなたしかいないわと言ったくらいだ。
そして今日、早速公式取材を受けることになったのだ。
「じゃぁ、噂や憶測で記事書かれてもいい?」
「う、それはいや。」
ミサキあたりが何言うかわからない、でも~とまだブチブチ言っているカサネにスオウは苦笑する。
「まぁ、カルラ先生とライト先生が同席するし、陰陽の一対に指導を受けることができて光栄です、とでも言えばいいんじゃない?」
「そうか!その手があったわ!先生たちに話題を持っていこう!」
「いや、それは…」
ちょっと違うんじゃと言おうとしたが、とりあえずカサネの機嫌が戻ったので、まぁ、いいかとそのままにした。
「先生たちと言えば、昨日の再会シーン、ステキだったねぇ。ライト先生がカルラ先生抱きしめるなんて、物語みたい~。」
「うん、黒髪のライト先生に白銀の髪のカルラ先生、陰陽の一対とはよく言ったものだよね。」
「は~、あの二人は恋人同士なのかな~?」
「…好きだよね、そういう話。」
「いいじゃない、恋バナは女の子の楽しみなの。」
などと、話していたが、神殿に入ったので、口を閉じる。今回の取材は、大神殿としての公式なものなので、神殿内の個室で行われる。
と、その部屋の前で、カサネがよく知る人物が腕を組んで待っていた。
「来たか。」
「げ、お兄ちゃん。」
「なにが、げ、だ。なにが。」
カサネは兄にぽんと頭をたたかれた。
「こんにちは、セナさん。この間はどうも。」
「ああ、スオウ。いつも妹の子守ですまないな。」
「いえ、楽しいですから。カサネといると退屈しません。」
カサネがスオウの腕をひっぱる。
「ちょっと!それよりなんでお兄ちゃんがここにいるの?」
「それは私が神殿の窓口だからだ。」
「…女王様の影を感じるのは私だけ?」
「いい勘してるな。さ、入るぞ。」
カサネとスオウは顔を見合わせため息をつくと、セナの開けた扉をくぐった。
「まぁぁ!チョコレートのような髪に琥珀の瞳。濃い金髪に碧の瞳!いいわぁ!二つ名は何にしようかしら!!」
オネエ言葉の記者は、テンションが高かった。
「あの…できれば普通で…。」
カサネの希望はあっさり無視される。
「何言ってるの。陰陽の一対の最初の弟子って言うだけでもすごいのに、日輪王のいとことアカネ副神官長がみとめた逸材よ!普通じゃダメよ、普通じゃ!」
「…二つ名は後ほど考えていただくとして、取材をお願いします。」
セナ神官が、この場を仕切るようだ。
落ち着きを取り戻した記者が、二人のプロフィールや抱負を聞いていく。興奮していない時は男言葉なんだと、考えていたら、質問されていたらしく、隣のスオウにつつかれた。
「では、お二人は、カイ団長たちと一緒に2月も旅をされていたんですね。じゃあ、息もぴったりでしょう!」
記者はカルラとライトに同意を求めた。
「ええ、この先が楽しみです。」
ライトの答えに記者は何か書きながら、うんうんとうなずいていた。
「さて、最後になりますが、お互いに最初の印象はどうでしたか?」
う~んとカサネとスオウは顔を見合わせた。
「え~っと、ぼくは濃い色の髪に琥珀の瞳が珍しいなぁと…。」
「え、そこ?…わたしは、太陽の光みたいな髪の毛が王様とお」
「それよ!!」
記者がカサネの答えをさえぎって叫んだ。
「琥珀の瞳は絶対よね。太陽の光…長すぎるわ。陽光…語呂が悪い…。」
急に頭をかかえて、ブツブツ言い始めた記者に、一同は唖然とした。
我に返ったセナが声をかけようとした瞬間。
「決まったわ!琥珀の舞姫に陽光の神官よぅ~!!」
記者は立ち上がり、こぶしを突き上げた。
かくして、カサネとスオウは「琥珀の舞姫と陽光の神官」という二つ名を持つこととなった―。




