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瀬田

本作はカクヨムにて総PV30万回、★2,000超えを記録した戦記のマルチ投稿作品です。

※カクヨム側の公開スケジュール(月水金更新)と歩調を合わせ、本作も【全45話・11月中旬の完全完結】に向けて、予約投稿にて一歩ずつ大切に配信してまいります。どうぞ安心してお楽しみください。

(本文のブラッシュアップにAIを一部利用して格調高く仕上げております)






だが、そこから先は地獄だった………。



固まって動かない関節を無理に動かし前へと進む。



山道ではなかったので草履は脱いだが、上様拝領の草履を捨てる訳にもいかずに両手に持って、這うように進んだ。



途中何度も座ろうと思ったが、ここで信長から離れたら待っているのは落ち武者狩りか………まぁそれでなくても戦国時代唯一の理解者を失えば餓死による野垂れ死だろう。



それが分かるだけに、前へ進むしか無かった。



歩きだしてから1時間半くらい経った頃か突然前方から馬の蹄の音が響き、みな一斉に身構えた。



信長の指示で東海道を外れ、周囲の藪に身を隠す。



俺は敵に見つかるかも知れない事より、素直に休めた事が嬉しかった。



向かってくる蹄の音は、地響きからして数十…或いは百に近いか………。



しばらくして、向かってくる騎馬集団が見て取れた。



その数はやはり百騎近く。



掲げられている指物は木瓜?



いやただの木瓜ではない。



黒い円の地の中に白い木瓜が描かれた国持ち地抜き木瓜だ。



古くからある伝統的な家紋だが………この周辺にこの家紋を持つ武家がいただろうか………。



俺の思案をよそに、近習たちは次々と藪や草叢から飛び出すと騎馬集団を手招きした。



すると、あれは味方かな?



騎馬集団は信長のかなり手前で止まると、全員一斉に下馬して平伏した。




「美作!よくぞ参った!相まみえられた事、この上なく嬉しき限りじゃ!」




信長が力強くよく通る甲高い声で呼びかける。




「上様、此度はかかる危難に遭われながらもご無事にお引き退き遊ばされ、なによりで御座りまする。この源左衛門、御使者よりの口上にて安堵の胸を撫で下ろした次第に御座りまする。されば上様の苦衷を案じ、騎馬数十を召し連れご案内に罷り来した次第。上様、この山岡源左衛門が参った以上、御心を安んじ下されませ!」




そうか、あの国持ち地抜き木瓜は瀬田城主、山岡景隆の旗印だったのか………。




「美作、折角の申し出はありがたいが、勘九郎は未だ逢坂山のはず。その方は急ぎ騎馬を連れ、勘九郎を迎えに参るがよい。されど馬数頭はありがたく受け取ろうぞ」




信長の言葉に従い、山岡景隆の騎馬集団の中から数名が下馬し、その中の1頭に信長が跨る。




「乱、忠二郎、七郎右衛門、太郎左衛門、それに新一郎、付いて参れ!」




………お、俺?




「あ、あのー。実は某、未だ馬には乗った事が相これ無く………」




しどろもどろになりながら呟くと、




「苦しからず!左馬助、そちが相乗りし、前乗り致せ!」




そう告げると信長は軽やかに走り出す。



そして再び騎乗した山岡景隆が騎馬集団と共に北に向かう。




他の近習たちも続々と信長の後に続いて馬で、あるいは徒歩で南に向かった。



あっと言う間に残されたのは1頭の馬と二人。



東海道を湿った風が吹き抜け、土埃が舞う。




「ほな、行こうがや」




左馬助は馬の首の後ろに跨ると手招きした。



馬は骨太だがせいぜいポニー程度の大きさしかない。



俺は草履を血塗れの足の指で履くと、左馬助の後ろに跨った。



それだけで親指の又がズキズキと痛む。




「しっかりしがみついとってよー!」




左馬助の言葉に密着で答えると、左馬助は馬を走らせた。



馬は東海道を土埃を立てながら南に進む。



先に行った信長や近習一行はまだ見えてこない。



しかし湖岸の風は汗に濡れた髪や肌に気持ちいい。



疲れもあっていつの間にか瞼が閉じてくる。



それに懸命に抗いながら、左馬助を掴む。



途中から、徒歩の近習の集団をどんどんと追い抜いていく。




「後どれくらいで瀬田ですか?!」




俺は左馬助に聞いた。



だが、土埃と馬の蹄の音と風で聞こえなかったらしい。




「あん?なんかーゆうたがや?!」




左馬助が聞き返す。




「瀬田までどのくらい!!」




俺は今度は声を限りに叫んだ。




「あー瀬田かー、もうそろそろ川が見えるでよぉー!あっちじゃーほれ!」




左馬助の言葉で前方を注視する。



すると中洲の様な砂の砂丘が見えてきた。



その中洲を埋めながら濁った川が轟々と勢いよく流れているのが見える。



もちろん堤防のようのものはない。




「ほれ、みちょれ!あれが瀬田の唐橋でよぉー」




中洲と中洲の間に板敷きの橋が架かっている。



あれが瀬田唐橋。



木造の橋脚が今にも、泥の濁流により流されそうだ。




「渡るでよーしっかりとつかまっておくがや!」




左馬助の言葉に俺は力をいれてしがみついた。



馬はドスドスと不気味な音を立てて板の橋を渡り、ようやく渡りきった時には生きた心地がしなかった。




「見えて来たでよーあれが瀬田のお城だがやぁー」




左馬助の言葉に頭を上げると、かき揚げ土塁に水堀の平城が見えてきた。



門前に翻る黄地に永楽銭の幟旗と国持ち地抜き木瓜の幟旗。



やっとここまで………ここまで来たのだ。



信長の居城安土まではもう一息だ!





いつもありがとうございます!!!




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