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2/13

森乱

本作はカクヨムにて総PV30万回、★2,000超えを記録した戦記のマルチ投稿作品です。

※カクヨム側の公開スケジュール(月水金更新)と歩調を合わせ、本作も【全45話・11月中旬の完全完結】に向けて、予約投稿にて一歩ずつ大切に配信してまいります。どうぞ安心してお楽しみください。

(本文のブラッシュアップにAIを一部利用して格調高く仕上げております)



 


「惟当日向守様がご謀反?!」



 4人の門番は胡散臭そうな目で俺を見ると一斉に笑い出した。



「上様の信任厚い明智殿が謀叛などなさる訳がないわ」



「この大たわけが」



「毛利か上杉の間者であろうよ」



「虚報虚説の類よのぉ」



 口々に罵りを浴びせてくる。



 陣笠に胴丸、袴に草鞋のこの服装は織田家の恐らくは足軽。



 こいつらでは埒が開かない。



 もっと身分が上の侍に話を通さねば。



 当日信長の近習で同宿していたのは………堀久太郎は備中、長谷川秀一は家康と同行、菅谷久右衛門は確か付近の町家には居るだろうが………。



 仕方ない。




「重ねてお頼み申す、これはまことの事にて御座りますれば、何卒森乱殿にお取次ぎ下されたくお頼み申しまする。もし、虚説でござれば某の首差し上げまする、なれどもしこの言まことならば、上様のあのご気性………あなたがたの首は無きものとお心得おかれよ!」




 俺の言葉に気圧されたのか4人の門番は互いに話し合いを始めた。



 時間が惜しい!




「明智が軍勢はや、老ノ坂を越えて来るやも知れず!早々にご決断なされよ!」




 鳩首会議をする門番たちを重ねて急かす。



 門番たちは自分で判断するには重すぎると判断したのか、




「………そこで待て」




 と俺に告げると一人が門の中に消えて行った。



 他の三人は俺に槍を突きつける。



 後は野となれ山となれ………だ。



 俺は足を胡座に組むと、成り行きを見守った。




 ◆◇◆



 しばらくして………




「何?」




 甲高い声と共に、門番に連れられて浅葱色の小袖に差料を差した侍が姿を現した。



 綺麗に整えられた月代と若衆らしい名残を留めた黒髪の、凛とした少年。



 森乱だ………俺は直感した。




「その方か?惟当日向守様が謀叛を起こしたとの虚説の主は?」




 俺は平伏して肯定の意を表した。




「まことか?」




 ここだ!ここしかない。



 俺は顔を上げるとまくし立てた。




「まことにて御座りまする。昨夕丹波亀山城を出立した軍勢1万数千は山陰路には向かわずそのまま南下、後半刻ほどで老ノ坂を越え京に入りまする。上様、とりわけ秋田城介様がご宿泊なさる妙覚寺には早ご使者をお立て下されたくお頼み申し上げます!」




 二条衣棚にある妙覚寺はここ本能寺よりも北にある。



 その分逃げるのに時間がかかるかも知れない。



 それに後継者の信忠を明智に討たせる訳には行かなかった。




「その方、明智から寝返り致せしものか?」




 そう、これだ。



 信長は寝返りを嫌う。



 例え自分に寝返ったとしてもだ。 




「さにあらず、某はいずれ明智十兵衛めは背かんものと存じおりし由。それ故に目を光らせておりました所、かかる動きが御座りましたゆえ、急ぎ注進に及んだ次第にてござります」




 森乱は少し考え込んでいたが、




「相わかった。その方われと共に参れ!」




「ははっ!」




 俺は立ち上がると森乱について本能寺の正門をくぐった。



 正門をくぐるとそこは開けた空間で、あちこちに伽藍が垣間見えた。



 周囲には彼方此方に炬火が灯され塔頭や方丈を薄ぼんやりと照らし出している。



 地面は踏み固められた土で、そこかしこに足跡が見えた。




「こちらだ」




 本能寺の本殿が見え、そこを左に折れた所に客殿があり、客殿の庭の真ん中に金の唐傘の馬印が存在感を示すように置かれていた。



 やはり、信長はここにいる!!



 そこを通り過ぎ、奥に入った辺り………コの字型になった客殿の内庭で平伏して待つように促すと、森乱は去って行った。



 しばらくして………



 縁側の障子がガラッと開けられると、行灯と思しき明かりが視界を揺らした。




「この者か!」




 甲高い、澄んだ声が響く。




「はっ」




 これは森乱の声だ。




「そこの者、面をあげよ」




 俺は平伏していた顔を上げた。




 目の前にいたのは………



 白髪交じりの頭を茶筅髪に結い、黒に近い紫の湯帷子と同色の小袴を穿き足元は白の足袋。



 顔までは分かりづらいが、スッとした輪郭にすっきりと通った高い鼻骨。



 無駄な肉が一切削ぎ落とされた知的でシャープな顔立ち。



 これが覇王、織田信長………。




「そこなもの、明智十兵衛が謀叛、虚言ではあるまいな?」




「まことにて御座りまする。もしお疑いあらば、物見を老ノ坂までお差し向け下さいますよう。はや明智が軍勢の先手が京に入るを垣間見る事が出来ましょうぞ」




 俺が自信たっぷりに答えると、信長の決断は早かった。




「乱、急ぎ老ノ坂に物見を立てよ!そして妙覚寺に使者を送るのじゃ、さらに京に投宿しおる近習共を呼び集めよ!春長軒へも忘るるでないぞ!」




「はっ!」




 森乱が行灯を置いて縁側を出ていく。



 信長は再び俺へと向き直ると、




「さて、お主は一体何者ぞ、乱の話では明智十兵衛に遺恨ある浪人との話であったが………その様な面妖な風体見たこともないわ」




 信長が怪訝な顔で俺を睨む。




 ………そう、これが一番の問題だった。







 ―――――――――――――――――――――――




 もりらんまるといえば森蘭丸が有名ですが、乱・乱法師・乱丸の別名もあるので乱にしてみました。




 ご了承下さい。




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