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暗闇

本作はカクヨムにて総PV30万回、★2,000超えを記録した戦記のマルチ投稿作品です。

※カクヨム側の公開スケジュール(月水金更新)と歩調を合わせ、本作も【全45話・11月中旬の完全完結】に向けて、予約投稿にて一歩ずつ大切に配信してまいります。どうぞ安心してお楽しみください。

(本文のブラッシュアップにAIを一部利用して格調高く仕上げております)





「クソっ!」



俺はゲームオーバーの画面に向かってコントローラーを投げつけた。



だが、無意識に手加減したのかコントローラーはテレビに届かず畳を転がりゲーム機にぶち当たり、そこで止まる。



俺は腰かけていたベッドに倒れこむと自分の部屋を見回した。



どうしてこんな事になったのか………。



部屋の壁という壁にはところ狭しとモデルガンが吊られており、机の脇には模造刀が幾振りも立てかけられている。



もうすぐこの部屋からも出ていかなければならない。



いや、それは別にいい、新しい部屋を借りればいいだけだから………その金があればだが。



◆◇◆



俺の名前は小田切新一。



京都の京洛大学の文学部歴史学科の4年生。



今までに受けた企業の数は100社を越えるが内定は未だ0。



もう6月だというのに………。



卒業まで後半年、後半年で就職先を探してこの部屋を引き払い新しい部屋を借りる。



そんな事は土台無理な気がしていた。



かと言って青息吐息の田舎の果物屋の実家になんて帰れない。



俺は髪の毛をかきむしった。



最近全く散髪に行っていない髪は伸び放題。



風呂にももう1週間は入ってないから臭いも相当きつそうだ………。



俺は腕時計を見た。



亡くなった祖父が大学入学の祝いにと買ってくれたソーラー時計だ。



祖父は元々郷土史家で、昔の事を凄くよく教えてくれた。


俺がこの道に進んだのは間違いなく祖父の影響だろう。 




時間はそろそろ夜の10時過ぎ………もうすぐ日が変わって6/2かー………。 

  


明日はまた履歴書をたくさん書いて、応募して………いや、もう心なんて折れてるだろう俺。



とにかく今は寝よう。




寝てる間だけは幸せな時間だ。



少なくとも現実を見なくてすむ。



俺はまたベッドから起き上がると腰を上げた。



先に小用を済ませておこう。



部屋の扉のノブに手をかける。



部屋の扉には元禄時代の全国大名一覧。



これも剥がさないとな………そう思って扉を開けた。



この寮は三階建で俺の部屋は2階。トイレは共用で1階にしかない。



だから扉を開ければ向かいの部屋と廊下が見えるはずだった。



だけど………ない。



見えるのはただ真っ暗な空間。



それが部屋の畳の先から不自然に広がっている。



なんだこれは?



ブラックアウト?脳卒中かなにかか?



俺は部屋の扉のノブを左手で掴んだまま、恐る恐る元は廊下のあったその暗い場所に右足を置いてみた。



右足はそのまま漆黒の空間を踏み抜いてその下に………俺は左手一本でノブにぶら下がっていた。



な、なんだこれは?!




「助けてくれーー!」





俺は怖くなって叫んだ。



左手は80キロの体重を片手で支えきれず掴んだノブから外れようとしている。




「助けてくれーーー!!」




俺は声を限りに叫んだ。



生まれて22年、初めての死の恐怖に慄いた。



しかしそこまでだった。



俺の左手はノブから外れ、俺の身体は漆黒の闇の中に溶けていった。




◆◇◆




「あいたたたた………」




俺は土の上に尻もちをついていた。



どうやら外のようだ。



外は真っ暗で明かりはほとんど見えない。



空を見れば月はほとんど新月で雲が時々月明かりを隠していた。



俺は立ち上がると周囲を見渡した。



ここはどこだ?



大学の寮にいたはずなのに、寮は全く見えない。



にしても店のネオンや電気の明かりも全くないのはどういうわけだ?



俺はとにかく歩き出した。



少しでも明るい方へと。



そう言えばさっきから気になっていたが、俺の寮があった辺りに、堀で囲まれた塀のある大きな建物が切れ目なく通りを塞ぐように続いている。



こんな大きな建物はなかったはずだが………。



俺は気になって建物を回り込んでみることにした。



下は泥濘の土。



すでに白かった靴下は真っ黒だ………まぁ元々少し汚れてはいたのだが。



そして角を曲がった時にようやくまとまった明かりが見えた。



しかしそれは電気の明かりではなく、どうやら篝火のようだ。



俺は足を速めた。




普通なら落ちているはずのプラスチックやペットボトルが全くない。



あれば月光の反射ですぐわかる。



その篝火はどうやら建物の正門で燃やされているようで、近くには複数の人の姿も見える。



そしてその近くには幟のような旗がいくつも立てられている。



ここに至るまでにある仮説を抱いていた俺は、いつしか走り出していた。



そして正門で立ち止まり、掲げられた扁額を眺める。




本能寺………。




匕、火が重なるのを嫌ったという特徴のある能の字。



そして黄地に永楽銭の幟。



間違いない、ここは京の本能寺。



それに恐らく戦国時代。



俺の寮は元の本能寺の近くにあった。



場所はそのままで時間だけ遡ったなら頷ける。



たしか信長が本能寺に宿泊した回数は変当日を含めて四回。



金の唐傘の馬印があれば確認出来るのだが………。



俺は腕時計を見た。



時間は夜の11時近くになろうとしている。



もうすく6月2日がやってくる。



確か光秀が老ノ坂を通ったのが午前0時前後………。



腹をくくるか。 



今、織田信長を凶事から助けられるのは俺だけだ。



それに………現代に未練はない。



例えば俺の行動で歴史が変わったとしても………俺はこの歴史の中で生きていく!



さっきから俺を怪訝な顔で見つめる門番の元に俺は近寄って平伏した。



そして叫んだ!




「惟任日向守ご謀反!」



俺の世界が回りだした瞬間だった。








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