↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
12/13

秘計

本作はカクヨムにて総PV30万回、★2,000超えを記録した戦記のマルチ投稿作品です。

※カクヨム側の公開スケジュール(月水金更新)と歩調を合わせ、本作も【全45話・11月中旬の完全完結】に向けて、予約投稿にて一歩ずつ大切に配信してまいります。どうぞ安心してお楽しみください。

(本文のブラッシュアップにAIを一部利用して格調高く仕上げております)





通されたのは天守一階にある上段の間。



しかし、そこにはまだ信長はおらず、部屋を眺める時間があった。



部屋の広さは12畳ほど、その部屋を囲む全ての襖には障壁画が描かれていた。



描かれているのは恐らくは近江八景。



何故なら画のあちこちに湖面と思われるものが描かれているからだ。



天井は見事な木目の格天井。



部屋の向こうの四畳ほどの床の間には山の趣を醸し出す石が入れられた大きな鉢が1つ置かれていて存在感を誇示している。




「上様の御成りにございます」




まだあどけなさが残る前髪を揺らしながら、小姓と思しき少年が告げた。



俺は平伏した。



すると………襖の開く音と共に、人の入って来る気配を感じた。



と、同時に場がピリリ…と張り詰める。



間違いない………信長だ。




「面を上げよ」




信長の声が部屋の空気を切り裂く………ように感じる。



俺はゆっくりと平伏していた顔を上げた。




「小田切………新一郎であったな。明智が謀叛、よくぞ知らせてくれた。そちの注進なくば儂も勘九郎も今頃は露と消えておるところよ」




「も、もったいなき御言葉に御座りまする………!」




俺はその言葉に只々平伏し、恐れ入るばかりだった。




「それでじゃ、ついてはそちを正式に我が近習と致し、知行として禄高五百石を与える」




「ははっーー………!」




「さらにそちは、帯びる刀もないか………。よし、この脇差を遣わす。今日よりこれにて身を守れ!」




信長は自ら差した脇差を腰帯から取り出すと、俺の目の前に置いた。



腰刀拵のその脇差の鞘は黒漆塗りで鮫肌の柄を高麗組糸と思しき高価な糸を菱巻にした柄巻に鍔は無骨な甲冑鍔。




反りは内反りで実用的な脇差だ。




「備前長船兼光の作とか。あいにく儂は兼光よりも父長光、祖父光忠の業物を好んで集めおるゆえ、くれてやるだわ」




「ははーっ!」




「………用は済んだゆえもうよい、下がれ」




信長の言葉に、しかし俺はおずおずと声を上げた。




「お、恐れながら某、ご注進致しき儀がいくつか御座りまして………その………」




「遅い!早う申せ!」




「ははっ!まずその一。某、実は足袋や草履は不自由にて、故に何卒足を痛めぬ履物と足袋を安土の町で作るお許しと幾ばくかの金子を頂きたく……!」




「許す!………次を申せ!」




「某は後の世から刻を遡さかのぼった身なれば、後の世の大筒小筒に人一倍通じて御座りまする。故に国友村に赴き、彼の地の職人共に新たな筒の改良法を授けたく思い、そのお許しとその為の金子を頂きたく………!」




信長は瞬時悩んだ顔を見せたがこれも直ちに許すと許可をくれた。




「いま一つお尋ねしたき儀が御座りまする。天正元年に槙島にて公方様が挙兵したみぎり、琵琶湖を大安宅船でお渡りになられたと聞き及びましたが………その大安宅船、今は何処に………?」




俺の言葉に信長は少し怪訝に首を傾げたが答えてくれた。




「ふむ、大安宅船か。あれなら手入れを怠らぬ用に申し付け、堅田の者どもに預けてあるが……」




「それを是非、お任せ頂きたく………!」




信長は怪訝の度合いを深めて呟いた。




「あれを何に使う?」




「………実は内密に御座れば、もう少し近づいても?」




信長が頷くと、俺は信長の目と鼻の先まで近づいて、とある計画を囁いた。




「………面白いわ!金柑頭の慌てる様が目に浮かぶようだで!必要な金子や資材があれば全てそちの存分にするがよい!」




「ははっ!」




良かった………。



俺は自分の提案が信長に認められた事に心の底から安堵した。



それともう一つ、あることを耳元で囁くと、俺は元の位置まで下がって告げた。



「最後にもう一つ、お願いが御座りまする。某の補佐役として………是非、各務左馬助をお付け頂きたく………!」




「相分かった、各務左馬助はおるか!」




信長の甲高い声が響く。



すぐに部屋の襖が開けられ、隣に左馬助が並んで平伏した。




「左馬助、我が命ずるでもなくよくぞ新一郎を助けたこと大儀であった、褒めて遣わす!よってそちに三百石を加増し、この先別命あるまで、新一郎の補佐を命じる!」




「ははーっ!」




「両名下がってよい。励めよ!」




俺と左馬助はもう一度ははーっと平伏した後、上段の間を退出した。



怖さと嬉しさが入り混じり、胸が激しく鼓動していた。



………だが、これからする事は山積みだ。



俺は決意を新たにしたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。