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第七話 新しい家

翌日の朝、

スマホのアラームが鳴り、朔弥が目覚める。

欠伸をしながら洗面所に向かい、顔を洗う。


部屋に戻ると、

昨日父から受け取った鍵を、財布と一緒に持ち出し用のバッグに入れる。

通帳の入った袋は引き出しにしまった。


イヤホンを耳につけると朔弥がクロを呼び出す。


「クロ、おはよう。」


『おはようございます、主。』


「今日何するかわかってるな?」


『本日の予定を確認します……。家と学校の下見ですね。』


クロから予定を聞くと、バッグを肩にかけ部屋を出る。

「朝食を食べたらすぐ行くぞ。」


『かしこまりました、主。』


「若、おはようございます。」

使用人が朝食の準備をしていた。

そこに父の姿はなかった。


「おはよう、父は?」


「まだお休み中なのかと。」


「そうか。」

朔弥が席に着くと、使用人がご飯と味噌汁を持って近づいてきた。

「そういえば、若。」


「どうした?」


「若の家のことですが、私が付き添うことになりましたのでご挨拶をと思いまして。」


「うわぁ、助かるよ。いろいろ教えてくれ。」


お辞儀をしながら使用人が話す。

「お任せを。主様からキツく言われてますので。」


「ははっ、そっか。」


朝食を終えると、朔弥は立ち上がる。


「今日はどちらに?」

朔弥が振り返る。

「家を見るのと、あとは学校。」


「左様ですか。お気をつけて。」


「ああ。」

朔弥はそう言い残すと、ダイニングを離れた。


「クロ、行くぞ。」

昨日、父から受け取った紙に書かれた住所をスマホに打ち込み、案内開始のボタンを押す。


『はい。案内を開始します。』


朔弥は案内通りに向かう。

人通りは少ない方だが、時折、通行人とすれ違う。

しばらく歩くと、家の前に到着した。


「ここが俺の家かー。」


表札を見ると『桐谷』と書いてある。

鍵を差し込み回すと、カチャリと錠の開く音がした。

洋風の扉を開けて中に入ると、小さめの玄関が現れた。

靴を脱いで、家にあがる。


「思ったより狭いな。」


一階を見回ると、家具や家電は一通り揃っていた。

二階には部屋が三つあり、一つは広く、二つは狭かった。

朔弥は腕を広げ、部屋の入り口を囲うような仕草をする。


「この広い部屋は俺の部屋な。」


『大丈夫です。主しかおりません。』


朔弥は苦笑いをする。


「それもそうか。」


一階に降りてきてリビングのソファーに腰を落とす。

「ふうー。それにしても俺がこの家で一人暮らしか。父は酷くないか?俺まだ中学生にもなってないぞ。」


『主が言い出したことですから。』

朔弥はソファーに座ったまま自分の両膝に両肘をつき下を向く。

「そうなんだけど……」


『なるほど、主は寂しいのですね。』


「まあ、多少はな。実家は常に誰かいて、賑やかだからさ。」


『主の言いたい事は分かります。ここには私がいますのでご安心を。』


朔弥は、自分の膝を軽く叩き立ち上がる。

「クロだけが頼りだな。よし、次は学校見に行くか。」


『了解です、主。』


朔弥が玄関から外に出たところで、近所の人が声を掛けてきた。


「おはようございます。」


多少驚いたが、朔弥も挨拶を返す。

「おはよう…ございます。」


近所の人は続けて話す。

「引っ越してきた方ですか?」


「はい、桐谷と言います。」


近所の人は周囲を見渡す。

「そう。ご両親は?」


「仕事してます。」


「あら、そう。」


隣の家を指差しながら話し出す。

「私はそこの家に住んでるから、困ったことがあったら聞いてちょうだいね。」


「わかりました。両親にも伝えておきます。」


近所の人が朔弥の返事を聞くと、その場を去って行った。

朔弥は鍵を掛けるとドアノブを引っ張る。


「よし、閉まった。」

朔弥は新しい家を後にした。

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