第十二話 入学式
チャイムが鳴り、先生が教室にやってきた。
「新入生の皆さん、ご入学おめでとう。私がこのクラスの担任だ、よろしくな。」
生徒も先生に向けて、大きな声で挨拶をする。
入学式の資料と花のブローチの入った箱が、前の席から回ってくる。生徒それぞれが胸元につけた。
まもなく入学式が始まる。生徒は廊下に二列に並び体育館を目指した。
体育館に入ると一番後ろに保護者の列、使用人や美羽の母もいる。その前に上級生、最前列が新入生の席となる。
校長先生の話から始まり、式は厳かに終わった。
「ふぁーあ……。」
朔弥は教室に戻る手前で、あくびをする。
「なんか眠そう。」
美羽が横から話しかけてきた。
「だって話、聞いてるだけだぜ?眠くなるだろ?」
「ぜんっぜん、ならない。」
美羽はニコニコしながら、朔弥に返事をした。
「あっ…そ。」
朔弥は再び、あくびをしながら教室に入ると、美羽と別れ、それぞれ自分の席に座った。
朔弥はスマホを取り出し、クロにメッセージを打つ。
『悪いクロ、学校だからイヤホン禁止なんだよ。』
『かまいません、主。それよりなんでしょうか?』
朔弥は、ため息をつきながら文章を打つ。
『入学式出てきたんだけど、つまんなくてさぁ。』
『主、式とはそういうものです。』
『そうなのか?俺嫌いだな、式は。』
一方美羽の席では、
「あ、あの、早乙女、さん……。」
美羽の後ろから貴文の声が聞こえると、美羽は首を傾けながら答えた。
「宮園…くん?一緒のクラスだったの?」
「え?う、うん、よろしくね。」
「うん、よろしく。」
美羽が席を立つと、貴文も友人二人を連れて教室を出た。
そして、大きな声で叫んだ。
「初めて喋れたー!めっちゃかわいいー!」
友人は指を口に当て注意する。
「声大きいよ、宮園くん。」
「ばーか、美羽と喋れたんだぞ。当たり前だろ。」
三人が教室に戻ると、美羽はまた朔弥のところで何かを話している。
「ちっ……桐谷、まあいい。僕は今、機嫌がいいからな。」
先生が教室に戻ってきた。保護者も後ろのドアから入ってくる。
先生は別の資料を配り、オリエンテーションは始まった。一通り説明を受けた生徒たちは、保護者と共に帰路に着く。
「朔弥、行きますよ。」
使用人が朔弥に声をかける。
朔弥も使用人と校門まで歩くと、美羽と美羽の母が写真を撮っていた。
「撮りましょうか?」
使用人が美羽の母からカメラを預かると、二人の写真を二枚撮る。その後、カメラを返した。
「ありがとうございます。」
お礼を伝える母を止め、美羽が割って入ってくる。
「桐谷くんも一緒に撮ろ?ね?」
朔弥は自分を指差す。
「え?俺?」
「二枚お願いします。」
「わかりました。」
再度使用人が美羽の母からカメラを受け取り、看板を間に入れ二人が左右に分かれた写真を撮る。
「今度は、並んで撮りましょうか?」
「ちょっ……。」
朔弥は止めようとしたが、美羽が先に答えた。
「撮ります!」
「では並んでー、はいチーズ。」
写真を撮り終えると、美羽が使用人にお辞儀をした。
使用人は改めてカメラを返すと、美羽の母が申し訳なさそうに声を掛けてきた。
「すみません、うちの美羽が……。」
「いいですよ。朔弥もその気あったみたいなので。」
「何言ってんだよ、全く……。」
お互い挨拶をして別れた後、朔弥と使用人は話しながら帰った。
「もう、余計なことして。」
「ははは、すみません。でも良さそうな子じゃないですか?」
朔弥も笑顔で返す。
「うん、話しやすいよ。よく気にかけてくれるし。」
「さっきの話もまんざらではなかったってことですね。」
朔弥は口を尖らせながら答えた。
「父には黙っとけよな。」
「はいはい、進展あった時は教えてくださいね。」
「ねぇよ、そんなのー。」




