第十一話 新しいクラス
入学式当日の朝、
朔弥の家では、使用人が朔弥のカバンを持ち、玄関で見送りをしていた。
「若、忘れ物はないですか?」
シューズを履いた朔弥は、使用人からカバンを受け取って立ち上がった。
「大丈夫だって、昨日も確認したし。」
「私は少し遅れて出発しますので。」
「わかってる。じゃ先に行く。」
朔弥は玄関を開けた。
春の心地良い風を浴びながら学校へと向かう。通学も朔弥にとっては初めての経験で、道中、同じ中学の知らない生徒と一緒になることもあった。朔弥は予定の登校時間より早く校門に着いた。
校門前には入学式の大きな看板が立っている。
「桐谷くーん。」
後ろから声が聞こえた。
朔弥が振り向くと、早乙女美羽が駆け足で朔弥に寄ってくる。
「早乙女さん、おはよ。」
「おはよう、桐谷くん。」
2人が並んで敷地に足を踏み入れる。
「ちゃんと寝れた?」
朔弥はカバンを背負い直す。
「寝るよそりゃ。」
「私寝れなかったんだー。楽しみすぎて。」
眠そうな美羽を見て、朔弥が笑う。
「子供みたいだな。」
美羽は、朔弥の肩を軽く叩く。
「もう、桐谷くんも子供だよ?まだ。」
「はいはい。」
2人とも真新しい上履きに履き替え、校舎に入る。
『新入生はこちら』と看板が置いてあり、ガイドに沿って進むと新入生の名簿が張り出されている。名前を確認すると朔弥も美羽も同じクラスだ。
「やった。一緒だね。」
「そうだな。知り合いが1人いて良かったよ。」
美羽は頬を膨らまし、朔弥の胸を指で突く。
「桐谷くん、と、も、だ、ち、だよ?」
「悪い、初めての友達な。」
朔弥が頭を掻きながら謝ると、美羽の表情も柔らかくなる。
「うん、友達。」
教室に入るとすでに複数人の生徒が待っていた。
「みうー。久しぶりー。」
美羽の友達が寄ってきて二人で話し出した。朔弥は自分の名前が書いてある机に座った。
美羽も自分の机を見つけ荷物を置く。
朔弥が話している二人の姿を見ていると、美羽と友達が自分の方にやってくる。
「早乙女さん、どしたの?」
「この子が紹介してって言うから連れてきたの。」
朔弥が友達を見上げると、友達の反応が返ってくる。
「桐谷くんかわいいー、美羽だけのものにするのはダメね。」
「ちょっ…ダメよ。私は桐谷くんの一番の友達なんだから。」
「おいおい、いきなり人をモノ扱いするなよ。」
朔弥の周りだけが賑やかになり、徐々に生徒が集まってくる。
その頃、昇降口前には一台の高級車が止まる。
「坊ちゃま、いってらっしゃいませ。」
「ああ。」
生意気そうな小太りの生徒が降りてくる。とある富豪の息子の宮園貴文だ。
「さーて、僕の美羽がいる教室はどこかなー。」
名簿を見る貴文。すると貴文の名前も美羽と同じクラスに記してあった。
「おっしゃー!同じクラスだ!」
貴文が、駆け足で教室に入ると友人2人が近づいてくる。
「あ、貴文くん。」
「なんだお前らも一緒かよ。それより美羽は?」
友人二人は、生徒が集まっている方を指差し、その先を貴文が睨む。
「見た事ない奴がいるな、僕も声かけてみるか。」
輪が散ったところで三人組が朔弥の前に立つ。
「宮園貴文だ、よろしくな。えっとー……。」
朔弥は手を差し出す。
「桐谷朔弥、よろしく宮園くん。」
貴文は朔弥の手を取り握手をする。
「桐谷くんね、よろしく。また後でな。」
三人は一旦、朔弥から離れて話しだす。
ハンカチで手を拭く貴文。
「桐谷朔弥か、いいやつっぽいな。」
「そうですね、今のとこは。」
「僕の美羽に馴れ馴れしくしやがって、桐谷……覚えとくぞ。」




