有名人、コワイ…
「嘘でしょ〜?!」
思いっきり叫んでしまった。
「ちょっと!うるさい!」
真子に怒られてしまった。
「あ、ごめん。」
「別にいいけど…何にそんなびっくりしてるの?」
「へ?あ〜えっと、こんなに高く飛ぶの初めて…見たから?」
「いや、なんで疑問形?」
やばい。私はものすごくはぐらかすのが下手なのだ。
「あ!ちょっと今日は街一周してから帰る!じゃあバイバイ!」
「は?!ちょっと!」
はぐらかすのが下手なら、逃げるのみ!私は、全速力でその場を立ち去った。
「やばい!呂都丸〜!」
玄関を開けた途端、私は叫んだ。
「おかえり姉ちゃん!どうしたの?」
スリスリと足にくっつくかわいい呂都丸を抱き上げ、さっき聞いたことを話した。
「えっと…SNSって何?」
呂都丸は、きょとんとした顔で聞いてきた。
そうか。ずっと施設に閉じ込められていたから、ほとんどそういうこと知らないんだ。
でも、私も改めて聞かれると説明できない。
「えっと、つまり…めっちゃ有名人になっちゃった!」
「え!すごい!」
「まぁ、すごいけど…」
「有名になったほうが、たくさんの人が助けを求めてくれるんじゃない?」
…あ。
「確かに!」
特に深く考えなくていいか!
「じゃあ、今日も行きますか!」
「うん!」
人助けのために、家を出た。
「あ!ロトだ!」「ロト!こっち向いてー!」「サインください!」
…なんか、めちゃくちゃ話しかけられる!
『有名人って、こんなに話しかけられるんだ…!』
頭の中で、驚く呂都丸の声が響く。私も、まさかここまでだとは思わなかった。どこにいても人に話しかけられる。
そして、写真を撮られる。変な顔してないかな?
人助けも一苦労だ。助けよりも、写真やサインを求める声の方が大きい。
『ねえ、姉ちゃん。人が多すぎるよ…。』
呂都丸の疲れた声が聞こえた。
「じゃあ、みんなバイバ〜イ!」
今日は一旦帰ろう。
でも、どこまで行っても人がついて来る。
「……。」
歩くのをあきらめ、私は思いっきりジャンプした。
「おお〜!」
大勢の歓声と熱いまなざしを背に感じながら、ビルを飛び越えていった。
「あ〜疲れた。」
グデンとうつ伏せに倒れた呂都丸を眺めながら、私も大きく伸びをした。
「これからどうする?」
これだと、ろくに人助けもできない。
「う〜ん…」
呂都丸も途方に暮れた様子だ。
だめだ。1回思考停止しよう…
『ピンポーン』
インターホンが鳴った。
「誰だろ?」
ものすごく疲れているが、出ないわけにもいかない。重い足を引きずりながら玄関を開けた。
「あ。」
玄関前に立っていたのは、なぜかブチギレた顔をした、優だった。
長年この幼なじみと一緒にいた体が、警報を鳴らしていた。…イヤな予感がする。
「おい。お前、なんか隠してるよな?」
予感が的中した。
私は後ろを振り向き、居間から覗いている呂都丸に言った。
「ごめん呂都丸。…バレた。」




