組織と猫と、私の目的
街を救った。
その後、詳しい組織のことについて、呂都丸に教えてもらった。
組織名、W.E.L.L.。「World Enhancement by Living Link」の略らしい。意味はよくわからなかった。
W.E.L.L.は、この世界をより良くするために数百年前から活動してるらしい。
「目的を聞くと、良いイメージだけど?」
「W.E.L.L.の考えでは、弱肉強食の仕組みが、この世界を良くする道だと考えてる。だから、弱い者はこの世界に必要ない。」
「えっと、じゃあ…」
「そう。戦えない一般人は、全員殺される。」
…マジ?
「やばいじゃん!」
今になって、本当にやばい奴らだったことを実感した。
「さらに研究をしていて、たくさんの動物や人間が、研究対象になっている。最近、動物は成功確率が上がってきている。…でも、人はほとんどが失敗して…」
そこで、呂都丸は口をつぐんだ。
「じゃあ、さっき私達が戦った怪物は、その実験体?」
呂都丸は、頷きながら口を開いた。
「あれはたぶん、いろいろな動物を混ぜすぎた、ほとんど失敗作の実験体。」
呂都丸は、一度口を閉じ、少し迷うように目を泳がせた後、また話しだした。
「…僕は、一番成功に近づいた、人間なんだ。」
…ん?ちょっと待って。
「…人間?」
思わず、聞き返してしまった。
「そう。僕は、もともと人間だったんだ。W.E.L.L.は、動物の能力を人間に組み込んで、最強の人を作ろうとしてる。…いずれ、世界に放って殺し合いをさせる気だ。」
耳も尻尾も垂れ、すごく辛そうだ。
「でも僕は、猫になった。人間の姿を保てなかったんだ。力も、誰かと一緒じゃないと使えない。」
もともと、人間。今まで、どれだけ苦しかっただろう。私には、それを推し量ることもできない。
「3歳のころに気付いたら組織の施設にいて、それから何年経ったのかも知らない。もともとの自分の名前も覚えてない。でも、最近その目的を知って、なんとか逃げてきたんだ。」
呂都丸は、真っすぐ私を見つめて、言った。
「今も実験をされている他のみんなを助けて、組織を潰すために。」
決意のこもった、強い声だった。
「…そっか。」
私には想像もできない、途方もない世界だ。でも、今知ったんだ。それなら、私も答えないと。
「助けよう。全員。」
私はしっかり呂都丸を見つめ返し、答えた。
「ごめん。姉ちゃんを巻き込んで」
呂都丸は、少し後ろめたそうに俯いた。
「…会ったときから思ってたんだけど」
そう言いながら、私は両手で呂都丸の頬を挟み、グイッと上を向かせた。
「…すごく、思い詰めた顔してる。…考え過ぎないで」
私は、バカで、ちょっと運動ができるだけの普通の高校生だ。でも、
「私、人助け大好きだから!!」
思いっきり笑ってみせる。
「大丈夫!お姉さんに任せなさい!!」
年下を守るのも、年上の役目!
呂都丸は、しばらく目をみはっていたが、
「…ありがとう。」
ふにゃりと、柔らかく笑った。
少年らしい、かわいい笑顔だった。




