私の名前は
「行こう!呂都丸!」
『うん!』
怪物を倒す。みんなを、助ける。
「よし!」
私は、自分の胸をドン!と叩き、気合いを入れた。
怪物をしっかり見据え、走り出した。
「おわ?!」
体が軽い。一歩踏み込んだだけで、近くにあった団地を飛び越えてしまった。
そして、綺麗にコンクリートの上に着地した。
「そっか!猫だから、高いところからも着地できる!」
『感覚慣れないかもだけど、頑張って!いろんな能力が強化されてる!』
「了解!」
私はその場でピシッと敬礼した後、また走り出した。というより、ジャンプを繰り返した。ビルを飛び越え、すぐに怪物の元まで辿り着いた。
『鍵爪を使って、あいつの目を引っ掻いて!目を壊したら消えるはずだから!』
「わかった!」
私は、ビルから飛び降り、目を狙って思いっきり腕を振った。
「え!」
目が、移動した?
金色の目は、怪物の表面を、縦横無尽に動き回っている。
『コイツ、動くのか!』
「問題ない!」
『え?』
動くなら、
「次の場所に動く前に、やればいい!」
思いっきりビルの壁を蹴る。怪物に飛びつき、目に追いつく。
「追いかけっこみたいなもんでしょ!」
思いっきり腕を後ろに引き、唸らせながら振り落とした。目の動くスピードに、負けない速さで。
「どぉりゃー!」
ザシュ!
怪物の目を、キレイに割いた。でも、物体を傷つけたようではなく、ゼリーのようなグニャリとした感覚しかなかった。
その後、怪物は、きれいに消えてしまった。
これで、一件落着。
「意外にあっけなかったね。」
『いや。まさか、姉ちゃんがあそこまで身体能力高いとは思わなかったよ。』
「私、体育館の壁をボールで壊したことあるんだよ!」
『そうなんだ…』
すごいと言う言葉が返ってくると思ったのに、頭に響いたのは、どこか引いた声だった。
「あの!」
誰かが、声をかけてきた。
「息子を助けていただき、ありがとうございました!」
大人が2人と、さっき公園に置いてきた子だ。よかった。ちゃんと親と会えたんだ。
「よくわかったね。私、さっきと格好違うのに。」
さっきよく見たら、髪色も、オレンジに近い茶色に変わっていた。これなら、いつも一緒にいる真子にもバレないだろう。
子どもが少し戸惑ったように言った。
「だって、僕の目の前で変身したから…」
「あ、そういえばそうだった」
「あの!名前を教えてもらってもいいですか?ぜひ、お礼がしたいのですが…」
子どもの両親が、キラキラした目で聞いてきた。
少し困った。さすがに、本名を言うわけにはいかない。
「えっと…ロト…です!」
「本当に、ありがとうございました!ロトさん!」
とっさに、猫の名前から作ってしまった。…まぁ、いっか。
人助けは、気持ちいい。
私の名前は、ロト。これから、ヒーローだ。
***
コッコッ…
歩く靴の音だけが廊下に響く。
「日本に、実験体が放たれました。それを倒したのは、猫の姿をした女だと…」
「…そうか。」
スーツを着た女性は、目の前の若者に、今回の件を報告した。赤黒い血のような髪、黄金色の目をした若者は、前だけを見据え、女性に言った。
「そのまま泳がせろ。」
「かしこまりました。…フェリス様」




