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脳なき猫、翼を広げて世界を包む!〜ヒーロー生活始めます〜  作者: 桜庭木陰
第2章 赤い翼編

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ヘビと猫

「来た!ロトだー!」

窓から飛び出し、近くのビルへ飛び移る。

そこから校舎の横を落ちながら、暴れる実験体の元へと向かう。

「頑張れロトーー!」

窓から転げ落ちそうになりながら、みんながこちらに手を振っている。

『姉ちゃん、あっちにフェリスがいるよ!』

「お!じゃあ先にそっち行きますか!」

壁を蹴って移動する。

「フェリスさん!」

「…大声で呼ぶな。誰かに聞かれていたらどうするんだ」

黒い霧で顔は見えないが、すごく迷惑そうな声を出された。

「あ、ごめん…。でも、なんて呼べばいい?」

「呼ばなくていい」

「え〜?」

『姉ちゃん、フェリスの名前大声で叫んじゃおうよ。なんでこいつこんなに感じ悪いの?』

…呂都丸が口悪くなってる…!

まずい、会ったばかりの頃は優しい口調だったのに…。

「口が悪い人が身近にいすぎなのかな…?」

「…?なんの話をしてるんだ?」

金色の目が、訝しげに細められる。

私はしばらく顎に手を当てて考え込んだ。

優もフェリスも凍りついた顔と口調してるからな…。

「は!このままだとグレちゃう…!」

私はフェリスの肩をガシッと掴み、この一大事を顔で伝える。

「わけの分からないことばかり言うなら帰れ。仕事の邪魔だ。」

フェリスはまた迷惑そうに、私の手を肩からはらい落とした。

『天音羽、聞こえるか?』

「うん!聞こえるよ!」

急に、耳に付けたイヤホンから声がした。

『そんな鳥頭は放っておいて、実験体を早く止めるぞ』

…口が悪い。

でも怖いからツッこまないでおこう。

私は、ヘビの光る金色の目を刺すため、顔に近づいていった。

ヘビの長い体が、近づかせまいと縦横無尽に動き回る。

大きな尻尾に危うく体を持って行かれそうになるが、上からたくさんの赤い矢が降ってきて、尻尾を地面に縫いつけた。

「ありがとう!」

私は、空いっぱいに翼を広げて飛ぶフェリスにお礼を叫んだ。

「よそ見をするな。早く行け」

「うん!」

なんだかんだと言いながらも援護をしてくれるフェリスにひとつ頷いたあと、さらにスピードをあげてヘビを追いかけた。

「もうちょっと!」

あと少しで、ヘビの金色の目が見える。

あと…ちょっとで…。

「…あれ?」

あとちょっとなのに…

「なん、で…?」

『どうした?天音羽』

イヤホンから、心配そうな優の声が聞こえる。

『何かあったのか?』

『ね、姉ちゃん…』

呂都丸が声をあげる。

「…動けない」

『…天音羽?』

これ以上先に進めない…。

あともう少しなのに。

あともう少しで、ヘビの顔にたどり着くのに。

ヘビがこちらを振り向く。

ギラギラと光る金色の目と目が合う。

「…あれ?」

私、震えてる…?

足がすくみ、歯はカチカチと鳴る。

体中に鳥肌が立ち、私はピクリとも動けない。

『姉ちゃん…』

呂都丸が震えた声を上げる。

『…怖い』


✽✽✽

「あれ〜?こんなところにも効果が…」

「全く何してるんですか。もしバレたら…」

「バレないよ。倒されても一緒に消えるようにしてあるし」

桃李は、ククッと笑いながらモニターを眺めた。パソコンの光が、不気味な笑顔を明るく照らす。

「そんなに見たかったんですか?戦闘中継をあとから見返せばいいじゃないですか」

亜胡忌は呆れてため息をついた。

「だって〜。実験体目線が一番戦闘の様子がわかるでしょ?上空から撮った映像なんてつまんない。客観的な視点は今の僕にはいらないよ。」

そう言いながら、桃李は目を輝かせる。

「ほら見てこの臨場感!いや〜最高だね。試験管にも見せとこう」

そう言いながら桃李は、身に付けている白衣を広げ、内側に縫い付けられた試験管をパソコンの光に照らし出した。

「絶対に必要ないと思いますけどね…」

亜胡忌は、本日2度目のため息をつく。

「試験管のことは置いといて、何の効果があったんですか?」

亜胡忌は、このくだらない会話の中でずっと気になっていたことを聞く。

「ん?あぁ…」

桃李は、少しつまらなそうに鼻を鳴らしたあと、モニターに映るロトを指差した。

「ロトは猫だったよね?」

「はい、そうですが…」

「今回の実験体はね、僕がたくさんのヘビを混ぜて作ったんだ。その中に、アミメニシキヘビも入っている」

「アミメニシキヘビ…」

「そう。そのヘビは、猫を食べたこともあるらしいよ。」

「つまり、ロトの天敵…」

「うん。まぁ僕はヘビの毒を使いたくてこの実験体にしただけなんだけど……あ、そういえば前回のときもロトに少し妨害されたっけ?なら、ちょうどいいか」

桃李は今思い出したと言うように、ニヤリと笑った。

前回の戦い、フェリスだけなら、倒せていたかもしれない。

亜胡忌達は、そんな風に軽く考えていた。

「これで、クルオル様のお願いは果たせるね」

桃李は、あくびをして試験管の棚へ歩いていった。

先程まで楽しそうに観ていたモニターには、もう興味をなくしたようだ。

「ハァ…」

亜胡忌は3度目のため息をつき、モニターを見つめた。

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